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ハンノキ/はんのき/榛の木
Japanese alder
【ハンノキとは】
・北海道から九州北部までの広い範囲に分布するカバノキ科の落葉高木。湿地や川原に強く、自生地では数株が林立して林を形成することが多い。日本以外ではアジア大陸東北部や朝鮮半島に自生が見られる。
・名前の由来には、①水に埋もれても育つため、水田の脇に並木状に植えて稲掛け(はざ架け)の梁に使ったことから「ハリノキ(梁の木)」と呼ばれ、それが転化してハンノキとなったとする説、②開墾を意味する古語「墾(はり)」に由来するとする説がある。漢字は「榛」を使うが本来これはオオハシバミのこと。
・ハンノキの根にはエンジュなどマメ科の樹木同様に「放線菌(根粒菌)」と呼ばれる菌が共生しており、栄養の乏しい場所でも丈夫に育つ。荒地に真っ先に植えて土地を回復するのに使われるほどであり、川原や公園の池の護岸及び砂防を目的に植えられる。
・葉は細長い楕円形で先端が尖り、縁にはあまり目立たないが不規則なギザギザがある。葉の長さは5~12センチほどだが個体差が大きい。葉に毛があるものとないものがある。葉は緑色のまま落葉することで、土壌に養分を還元する。
・落葉後の11月ごろに花を咲かせる。遠くからは花とは思えないものの、じっくりと観察すると花らしく見えてくる。雌雄同株だが、雄花と雌花が明確に分かれた雌雄異花で、雄花の花序は枝先から垂れ下がり、雌花は雄花の基部に1~5個できる。寒冷地では3~4月に葉が出る前に開花する。
・10月ころに熟す実は長さ1.5~2センチの小さな松ぼっくり状であり、翌春に新たな芽が吹くまでの長い間、枝に残る。一部地方ではこの実や樹皮を赤褐色の染料として用いる。
・幹は直立し、樹高は最大で15mほど。樹齢を重ねた樹皮は不規則に剥離する。材は適度に柔軟であるため鉛筆の材料に使われるが、材木としての流通は稀。建材として名高いアルダーは北米を原産とするハンノキの仲間。
・ハンノキの仲間は北半球の温帯を中心に30種以上が分布し、日本にはそのうちの10数種が分布する。
【ハンノキの育て方のポイント】
・上記のとおり根に根粒菌を共生させており、まったく手をかけずに育てられる。
・大木であり樹形も揃いにくいため、庭園用に使われることは少ないが、大規模な水辺の公園には植栽例が多い。
・自然界では水分の豊富な場所に育ち、高さは20m程度まで育つ。成長も早いが枯死するのも早く、寿命は30年ほどと考えられている。
・ハンノキはミドリシジミという蝶の食樹であり、幹や枝に産み付けられた卵が孵化し、幼虫に葉を食害されることがある。また、昼間、幹に静止しているマイマイガという蛾の幼虫はトゲが鋭く、刺さると痛いため気を付けた方がよい。
・オトシブミという甲虫は本種やクリ、コナラの新葉で粽(ちまき)のような巣(揺籃)を作り、「落とし文」のように丸めた葉を切り落とす。オトシブミを観察できるのは5月下旬~6月上旬。
【ハンノキの品種、似ている木】
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ハンノキの基本データ
【分類】カバノキ科/ハンノキ属
落葉広葉/高木
【漢字】榛の木(はんのき)
【別名】ヤチハンノキ
ハリキリ/ハリノキ
【学名】Alnus japonica
【英名】Japanese alder
【成長】早い
【移植】普通
【高さ】10m~15m
【用途】公園
【値段】1500円~