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マテバシイ/まてばしい/馬手葉椎
Japanese stone oak
【マテバシイとは】
・ブナ科マテバシイ属に属する日本固有の常緑広葉樹。本来の自生地は九州南部~南西諸島と考えられており、別名に「薩摩椎(サツマジイ)」があるが、かつて薪や炭を作るために植栽されたものが野生化した結果、現在では房総半島から沖縄まで広い範囲の沿海地に見られる。
・名前の由来には、しばらく待てばシイの実のように美味しいドングリになるという説が魅力的だが真偽は不明。
・語源としては他に、葉がマテガイのように長くて大きいことに由来するいう説、葉が中国騎兵隊のサーベル「馬刀(マーダオ)」に似ることによるとする説がある。
・マテバシイの葉は長さ6~20センチほどの細長い卵形で先端が鋭く尖り、縁にギザギザはない。表面には光沢があり裏面は黄褐色に近い薄緑色。枝から互い違いに生じる。丈夫な革質で葉の寿命は3年ほど。
・防風、防火など実用的な理由から工場や寺社、学校などに植栽されていたが、虫がほとんどつかない点を見込まれ、次第に公園や庭園などでも用いられるようになった。防音効果を期待し、複数のマテバシイで緑の壁を作ることもある。
・マテバシイの開花は初夏(6月頃)。雌雄同株で1本の同じ木に雌雄それぞれの花を咲かせる。雄花は穂状でクリと同じような精臭があるものの、上に向かって咲く点がクリとは異なる。
・雌花は黄緑色かつ地味な形であり、雄花に包まれるようにまばらに咲くため、見付けるのはやや難しい。
・ドングリは直径2~3センチで細長く、ヤジロベイやコマなどの玩具作りに適する。多少の渋さはあるがクリに似たアクのない味わいで、生で食べることもできるが、普通は炒めたり焼いたりして食べる。
・スダジイほど美味しくはないというのが通説だが、人によっては最も美味しいドングリと感じる。ドングリが熟すのは開花翌年の9~10月頃。
・1本の幹が直立するのが基本だが、根元から複数が生じて株立ちになり、ブロッコリーのように見えるものもある。樹皮はネズミ色で大きな特徴はないが、大木では白い縦筋が目立ち、皺が寄ったようになる。材は薪炭のほかシイタケの榾木に使われる。
【マテバシイの育て方のポイント】
・本来は暖かい気候を好むが、関東地方以西の日向に植えれば問題なく育つ。
・都市部の街路樹にも使われるほど丈夫な木で、広い場所であればまったく手がかからない。潮風、病気、乾燥にも強い。ただし、成長が早く、放任すると日陰になった下枝がなくなりやすい。
・葉の色が明るいため、シイほどには鬱蒼としないが、枝の出方が荒いこと、葉の面積が大きいこと、幹が直径1mほどにもなることから、個人宅にはあまり向かない。剪定には強いが、それでも3m程度の高さを確保しなければ、見栄えがしない。
【マテバシイの品種】
・斑入りマテバシイ
葉にクリーム色の模様が入る品種。より明るい雰囲気になるため、洋風庭園等で好まれる。
【マテバシイに似ている木】
・関西以西で見かけるシリブカガシはマテバシイより葉も実も小さく、若い枝は黄褐色。葉の裏面はマテバシイと違って銀白色(青白)をしている。日本にあるマテバシイ属の樹木はこの二種のみ。
・シイの仲間以外では、タイサンボク、タブノキ、ユズリハが同じような雰囲気の葉を持ち、マテバシイと混同されることがある。
マテバシイの基本データ
【分類】ブナ科/マテバシイ属
常緑広葉/高木
【漢字】馬手葉椎/馬刀葉椎
(まてばしい)
【別名】マテジイ/マテガシ/マタジイ
マテバガシ/サツマジイ(薩摩椎)
【学名】Lithocarpus edulis
【英名】Japanese stone oak
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】10m~20m
【用途】公園/街路樹/垣根
【値段】500円~