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シラカシ/しらかし/白樫
Bamboo-leafed oak
【シラカシとは】
・福島県~新潟県以西の本州、四国及び九州に分布するブナ科の常緑高木。太平洋側の内陸部に育ち、関東地方や中部地方では低山や平野部に、西日本では川沿いに多い。日本以外では中国や朝鮮半島に自生が見られる。
・東日本で単に「カシの木」という場合は本種を示すことが多いが、全国的に見れば少数派のカシであり、関西での「カシの木」はアラカシを、四国や九州ではアカガシを示すことが多い。
・ドングリがなる木の一つであり、ドングリがカケスやネズミなどの野生動物に運ばれることで自然に増える。寺社近辺のいわゆる鎮守の森はもとより、ちょっとした林地でも普通に見掛け、思わぬところに生える「野良カシ」もある。
・ドングリ以外に大きな特徴はなく、平凡な木という印象だが、カシ類の中では耐寒性が高く、大木でも移植できるため庭造りには何かと重宝される。価格も安くて入手しやすい。
・今のようなガラス戸がない時代、シラカシは防風林として農家の垣根などに使われることが多かった。高さのわりに幹が太くならず、狭いスペースでも圧迫感がないことや、火に比較的強いのも利点だが、樹齢を重ねれば画像のような大木になる。
・シラカシは雌雄同株で、4~5月になると画像のように雌雄それぞれの花を咲かせる。雄花は葉の脇から生じた長さ5~15センチの花穂に集まり、クリの花のように垂れ下がる。
・雌花はその年に伸びた葉の脇にできるが小さなツブツブであり見付けにく。また、都市部では頻繁かつ極端に剪定されることが多く、花や果実(どんぐり)を見るのが難しい。
・風によって受粉が図られ、開花した年の秋に直径1.5~2センチほどのドングリができる。縄文時代はこれを食用にしたが、タンニンの濃度が高くて渋味があり、そのままでは食べられない。
・シラカシの葉は枝から互い違いに生じるが、形状は個体差が大きい。別名ホソバガシのとおり普通は幅が狭くて先端の尖った楕円形で、長さ4~15センチ、幅3センチ前後になるのが普通。
・やや厚くて表面には光沢があり、縁にはあまり目立たないものの緩やかなギザギザがある。裏面はウラジロガシほど白くはないが、白みを帯びた緑色になる。
・伐採直後の材がアカガシと比べて白いこと、葉の裏面が白っぽいことなどから「白樫」と呼ばれる。別名のクロガシは樹皮が黒っぽいことに由来。「カシ」の語源には諸説あるが、材が硬い「堅し木」が転訛したとする説が有力。
・シラカシの学名Quercus myrsinaefoliaは「良質な材木」を意味し、イスノキやアカガシと並んで国内有数の硬さと重さを誇る。弾力と耐湿性もあり、建築材、船舶材、船の櫓(ろ)、農具や槍の柄、カンナの台、木刀や楽器等に利用される。
【シラカシの育て方のポイント】
・風通しが悪く湿気の多い場所では稀にウドン粉病に罹患するが、基本的には病害虫に強く、育てやすい。
・稚樹の段階では日陰を好み、相当の日陰にも耐えるが、成長すると日向を好む。概して日陰に耐える。
・成長が早く、放任すると枝葉が繁茂し、長楕円形の樹形になる。刈り込みに強く、比較的自由に高さを調整できる。
・放任すると上部ばかりが成長し、下枝がなくなる。美観を維持するにはマメに剪定する必要がある。根元から伐採しても再生するほど芽を出す力は強く、真冬や真夏でなければ剪定で失敗する可能性は低い。ただし、剪定を繰り返すと花やドングリはならない。
・寒さに強いとはいえ、宮城県以北では冬の寒風で葉が白化するなどして見苦しくなることがある。福島以外の東北地方、北海道には不向き。
【シラカシに似ている木】
・アラカシ
・アカガシ
【アラカシとシラカシの見分け方】
・関西地方に多いアラカシと比べるとシラカシの葉は細長くて薄く、色も薄い。また、アラカシは葉の先端付近のみにギザギザ(鋸歯)があるのに対して、シラカシは葉の半分近くまで縁ギザギザしている。(下部の写真参照)
・シラカシの実はアラカシに比べると細長くて小ぶりな物が多い。
シラカシの基本データ
【分類】ブナ科/コナラ属
常緑広葉/高木
【漢字】白樫(しらかし)
【別名】クロガシ/ホソバガシ
カシ/ナラバガシ
【学名】Quercus myrsinifolia
【英名】Bamboo-leafed oak
【成長】早い
【移植】簡単(大木はやや困難)
【高さ】10m~20m
【用途】垣根/街路樹/公園樹
【値段】500円~