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クロガネモチ/くろがねもち/黒鉄黐
Kurogane-mochi tree (Round leaf holly)
【クロガネモチとは】
・関東地方以西の本州、四国、九州及び沖縄に分布するモチノキ科の常緑樹。日本以外でも台湾、中国、インドネシアなど東南アジアの各地に見られる。
・太平洋側の丘陵地や平地の常緑樹林内で普通に見られる木だが、冬季にできる赤い実などを観賞するため、庭園、公園などにも植栽される。
・関東を中心に庭木として親しまれるモチノキの仲間だが、若い枝や葉柄が黒紫色であること、葉が乾くと鉄色になることから鉄の呼称である「黒鉄」を冠してクロガネモチと名付けられた。なお、それぞれの金属の色から、金は黄金、銀は白金、銅は赤金、そして鉄は黒金と称する。
・東日本ではモチノキほど普及していないが、その名が「苦労がなく金持ち」に通じると洒落こみ、縁起木として知られる。九州では自治体の木として指定されていることが多く、街路樹に使われる例もある。
・クロガネモチの葉は長さ5~8センチ、幅3~4センチほどの長楕円形。両端は尖り、縁にギザギザはなく、乾燥状態では縁がやや波打つ。
・厚い革質で表面は艶のある濃緑色となり、裏面は淡い緑色。枝から互い違いに生じて密生する。モチノキに似るがより硬質で、長さ2~3センチになる葉柄は暗い紅紫色。
・クロガネモチの開花は5~6月。その年に伸びた葉の脇に小さな花が複数集まって咲く。雌雄異株で雄株には雄花が、雌株には雌花が咲くが、いずれも直径4ミリほどで目立たない。
・花は淡い紫~クリーム色で、花弁と萼は浅く4~6つに裂け、花弁は反り返る。雄花は4~6本ある雄しべが目立つが、雌花の雄しべは退化しており、代わって中央にある柱頭が隆起する。
・雌花の後には球形の果実ができ、11~12月になると赤く熟す。直径5~8ミリほどだが多数が集まって実り、冬期に赤い実を付ける庭木としては最大級の樹高となるため、よく目立つ。
・クロガネモチの果実はヒヨドリ、ツグミ、ムクドリ、ヒレンジャクなどの野鳥が好んで食べ、運が良ければ鳥の糞から庭に勝手に生えることもある。種子は長さ6ミリほどで、一つの果実に5~6粒入る。
・樹皮は白っぽい灰色で目立った剥離等はなく平滑だが、樹齢を重ねると細かな点状の皮目が見られるようになる。
・モチノキやヤマグルマと同様、樹皮から鳥もちや染料を採取できが、鳥もちの質は他に比べて低いとされる。幹の直径は最大1mほどで、材は床材や農具の柄などの器具に使われる。
【クロガネモチの育て方のポイント】
・基本的には日向を好むが、半日陰でも育てることができる。病害虫、大気汚染に強く、耐煙性、防火性にも優れる。
・土質を選ば丈夫に育つが、腐植質に富んでやや湿った肥沃地に植えるのが理想。移植には相当強く、大きな木でも動かせるが、寒さにやや弱いため、暖かい時季に移植した方がよい。
・雌雄異株で、実がなるのはメスの木のみ。オスを植えなくても実はなるが、強い剪定を行うと実の数は減る。また、オスの木であってもメスの木を接ぎ木すれば実がなる。
・実の観賞を第一とするならば、やや放任気味で育てるのがよい。ただし、枝葉はよく茂るため放任すると鬱蒼としやすい。
・常緑樹だが、冬期に寒さと乾燥ですべての葉を落とし丸坊主になることがある(暖かくなると復活する。)。寒さに弱いため庭木として使うなら関東地方北部が北限。冬の乾いた風を特に嫌う。
・風通しの悪い場所ではアブラムシやカイガラムシ、すす病の被害に遭うこともあるが、モチノキに比べればその被害は少ない。
【クロガネモチの品種】
・斑入りクロガネモチ
葉に黄色の模様が入る品種で、稀に流通する。
【クロガネモチに似ている木】
・ソヨゴ
同じモチノキの仲間で赤い実がなるが、葉の縁が波打つ。
こちらも近縁種だが、葉の縁にギザギザがある。
・モチノキ
モチノキとクロガネモチの違い
クロガネモチは葉柄が黒紫色で、モチノキは黄緑色。また、モチノキは最大樹高が10m程度であるのに対して、クロガネモチは20mと、より高くなる。
秋にできる実はクロガネモチの方が鮮やかであり、モチノキは、くすんだ朱色で実の数もより少ない。
かつてモチノキは日本庭園に不可欠であったが、近年はクロガネモチの需要がより高い。
クロガネモチの基本データ
【分類】モチノキ科/モチノキ属
常緑広葉/高木
【漢字】黒鉄黐/鉄黐
(くろがねもち)
【別名】フクラシバ/フクラモチ
イモグス
【学名】Ilex rotunda
【英名】Kurogane-mochi tree
(Round leaf holly)
【成長】やや遅い
【移植】簡単
【高さ】10~20m
【用途】シンボルツリー/公園
垣根/盆栽
【値段】3000円~