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カルミア/かるみあ/亜米利加石楠花
Calico bush
【カルミアとは】
・北アメリカ東部を原産とするツツジ科の常緑樹。春から初夏にかけて咲く花を観賞するため、庭園や公園に植栽される。また、枝に柔軟性があって扱いやすいため、生け花の世界ではローレルと呼んで親しまれる。
・本来「カルミア」はツツジ科カルミア属の花木全般を表す属名だが、一般的にはその一品種であるラティフォリアを示すことが多い。なお、カルミアの和名はアメリカシャクナゲだがシャクナゲの仲間ではない。
・カルミアという学名はスウェーデンの植物学者であるペーテルカルム氏に由来する。同氏はリンネの弟子であり、カルミアの原産地である北アメリカの植物調査を実施した。
・原産地のアメリカでは、コネチカット州とペンシルバニア州で州花に指定されている。カルミアが日本に渡来したのは大正4年。しかし一般的に育てられるようになったのは昭和30年代の終わり頃からであり、栽培の歴史は比較的浅い。
・カルミアの葉は長さ5~10センチ、幅3~4センチほどの長楕円形で、枝から互い違いに生じる。先端は尖り、縁にギザギザはない。枝先では不揃いな螺旋状につくのが特徴。表面は濃緑色で光沢があり、裏面はまばらに毛を生じて黄緑色を帯びる。
・カルミアの開花は4~6月。枝の上部に20~30輪が半球状に集まって咲く。花の直径は2センチほどで花冠が浅く五つに裂けるため、正面から見ると五角形のように見える。
・花色は品種によるが、ラティフォリアの花弁は淡い紅色を帯びた白色。内側に紫の斑点が輪状に並ぶのが特徴で、江戸時代中期から女性が使う絵日傘に例えらえる。また、金平糖に似た蕾も本種に特徴的であり、その色の濃さから花より美しいとされることも。
・雌雄同株で花の内部には雌しべ1本と10本の長い雄しべがある。雌しべの先端(柱頭)はピンク色で、雄しべの先端は花弁の斑点に埋もれるように密着しているが、花粉を媒介するハチが寄ってくると反転し、その背中に花粉を付着させる。
・花の後には軟毛に覆われた乾いた果実ができ、10月頃になると褐色に熟す。果実は小さな球形だが、熟しても花柱と萼が残っておりお果実らしさは乏しい。
・果実の内部には淡い褐色の種子を多数含んでおり、果皮が自然に裂けることで拡散される。
・カルミアの枝は車輪状に分岐し、全体としては球形の樹形となる。幹は通常1本立ちで樹皮は灰褐色。若い枝には細かな毛がある。
【カルミアの育て方のポイント】
・耐寒性はあるものの、根は細くて浅いため乾燥に弱い。シャクナゲほど土質を選ばないが 腐植質に富む砂質土壌を好む。基本的には日向に植える木だが乾燥に弱いため、夏場に高温となる土地では半日陰に植えた方がよい。
・樹形は自然に整いやすく、剪定を嫌うためため、強度の剪定は避けた方がよい。花は前年に伸びた枝先に咲くため、剪定の適期は花の直後となる。毎年花を咲かせるには、花が終わったらすぐに花柄を摘むと良い。
・枝が折れやすく、花も落ちやすいため、人通りの多い場所に植えると痛みやすい。また革質の葉には麻酔性の有毒成分(グラヤノトキシン)を含み、誤食すると嘔吐、下痢、腹痛、神経麻痺を引き起こすため、ペットや家畜が踏み入る場所で育てる際には留意する必要がある。
【カルミアの品種】
多くの園芸品種があるが、白花で清廉な印象のあるラティフォリアが最も多く植栽されている。花が赤い品種にはオスボレッド、白とピンクの咲き分けが美しい品種にはピンクサプライズやスプレンデンスが、紅紫に近い花にはアングスティフォリア、白花で内側に赤紫の模様が入る品種にはファスケーターなどがある。
このほか花先が星形になるシューティングスターや、葉の幅が狭いホソバカルミアがある。
カルミアの基本データ
【分類】ツツジ科/カルミア属
常緑広葉/小高木
【成長】やや早い
【別名】アメリカシャクナゲ
ローレル
ハナガサシャクナゲ
(花笠石楠花)
【学名】Kalmia latifolia
【英名】Calico bush
【移植】やや難しい
【高さ】1~5m(原産地では10m)
【用途】花木/鉢/公園
【値段】800円~