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ツユクサ/つゆくさ/露草・蛍草
Day flower
【ツユクサとは】
・日本全国の低地に見られるツユクサ科の一年草。やや湿った道端や空き地、海岸などに生じ、夏の間じゅう咲いている小さな藍色の花が人目を惹く。花期が長いことや葉や茎に実用性があることで、万葉の古くから日本人に親しまれる。
・花は直径2センチほど。花弁は2枚のように見えるが、藍色の2枚のほか、下側に小さな無色のものがあり、合計3枚となる。花は朝に咲いて夕方には散る一日花だが、梅雨の始めから初秋に至るまで、時期をずらしながら次々に開花していく。
・ツユクサは日本最古の染料の一つで、花弁は触れるとすぐに破れて色素が飛び出してインスタントな染料となる。これにちなんでツキクサ(着き草)、エノグバナ(絵具花)、ウツシバナ(移し花)、カラアイ(唐藍)、アイクサ(藍草)、アオバナ(青花)、ソメコバナといった別名がある。また、ツユクサで染めた淡い藍色を「縹色(はなだいろ)」という。
・縹色の色素は水に溶けやすく、すぐに脱色するが、この性質を逆手にとって、友禅の下絵に使う。色落ちしやすい性質や一日花であることから、古典文学ではツユクサを人の心の移ろいやすさの象徴として用いる。
・花には6本の雄しべがあるが、そのうちの短い4本は機能しておらず、「仮雄ずい」と呼ばれる。長い2本の雄しべだけが花粉を放出するが、いわゆる自家受粉であり、虫や風は仲介しない。繁殖力は旺盛であり、日本のツユクサがアフリカでも見られるという。
・花は緑色をした貝殻のような「苞」に包まれる。この「苞」を帽子や鴨に見立て、ボウシバナ(帽子花)、カモノカシラグサ(鴨の頭)という別名がある。ツユクサという名は、夜が明けると朝露に濡れながら咲くことに由来するという説、別名のツキクサ(着き草)が転訛したとする説などがある。
・花の後には白い多肉質の果実ができ、熟すと3つに裂けて中から3~4粒の種子がこぼれ落ちる。
・ツユクサの茎は円柱状でジグザグに這うように伸び、膨らんだ節からヒゲ根を出して繁茂する。枝分かれが多く、茎の上部は高さ20~50センチほどに立ち上がるように育つ。
・葉は細長い卵形で先端が尖るが、触れると柔らかい。平行に走る葉脈が目立つことや葉の付け根が鞘状になることからササのようにも見え、ササクサ(笹草)という別名がある。また、茎と葉を合わせた形状が農具の鎌に見えるため清少納言は本種をカマツカ(鎌柄)と呼んだ。葉の表面はピカピカしており、裏面は表面よりもやや淡い色をしている。
・若い茎や葉は山菜となり、飢饉の際には救荒植物として重用された。和え物、油炒め、天婦羅などにして食べることができる。また、漢名をオウセキソウ(鴨跖草)といい、民間療法では茎や葉を干して煎じたものが解熱、解毒、下痢、利尿、止め等として使われる。
【ツユクサの品種】
世界中に多数の品種があり、花色は白、青、白青のミックス、紫など変化に富むが、日本では以下の二種が特に知られる。
・ムラサキツユクサ
アメリカ原産の園芸品種で、文字どおり花弁が紫色を帯びる。観賞用として多くの品種が流通している。
・オオボウシバナ
花弁がより大きな変種で商用目的に栽培される。友禅染や絞り染め、青花紙はもっぱらこの花弁を染料に用い、アオバナ(青花)とも呼ばれる。
ツユクサの基本データ
【分 類】ツユクサ科/ツユクサ属
一年草
【漢 字】露草/蛍草(つゆくさ)
【別 名】ツキクサ(着き草)/カラアイ(唐藍)
エノグバナ(絵具花)/アイクサ(藍草)
ウツシバナ(移し花)/アオバナ(青花)
ソメコバナ/ボウシバナ(帽子花)
ウツシグサ/カマクサ
カモノカシラグサ(鴨の頭)
【学 名】Commelina communis
【英 名】Dayflower
【開花期】6~10月
【花の色】藍色、白色
【草 丈】~50cm