フジ/ふじ/藤

Japanese wisteria

藤の花,特徴
サクラと共に訪日外国人観光客の人気が高い
フジの冬芽,ふじ,画像
冬芽の様子
フジの葉っぱ 画像
新葉の様子
フジの蕾,藤の花,画像
蕾の様子
Japanese wisteria
蕾の様子
Japanese wisteria,Japanese wiistaria
フジの開花は4~6月
野田藤,山藤
自然界ではこんな感じだが・・・
wisteria tunnel
庭園では「藤棚」を作って観賞する
藤の花,画像
花はこんな感じ。花弁は上に1枚と下に4枚
おしべ,めしべ
雄しべと雌しべは下の花弁に見え隠れする
藤の木,花の構造 
花の裏側にある萼はお椀型で毛を生じる 
Wisteria floribunda
若葉は両面が毛で覆われるが、成葉は無毛に
フジ,ふじ,葉っぱ,leaf,japanese  wisteria
小さな葉が集まって、ひとまとまりの葉になる(裏面の様子)
フジの葉っぱ,ふじ
フジは庭に限らずそこらじゅうの藪に 
wild style,Wisteria floribunda
杉の木などに絡みつきながら藪を作る
藤蔓,ふじのつる
蔓の様子
豆のような実
花の後はかなりの確率でこんな実ができる
bean,Wisteria floribunda
豆果はビロードのように輝く
藤,紅葉,黄葉
秋に「黄葉」する
Japanese wisteria
黄葉期の様子
ノダフジ 樹皮
ノダフジは樹齢を重ねれば直径3mにも
藤の蔓
中には大蛇のような大物もある
天然記念物
天然記念物に指定される宮崎神宮のオオシラフジ
Japanese wisteria
フジの周りには、こんな「子フジ」がたくさん

 

【フジとは】

・本州、四国及び九州の山野で普通に見られるマメ科フジ属のつる性植物。自生のフジは林縁や林内で他の木や岩に絡みついて育つが、庭に用いる場合は「藤棚」を作り、花を密集させて鑑賞することが多い。

 

・フジの開花期は4~6月で、30~90センチほどの花房が垂れ下がる。「古事記」や「万葉集」にもその名が登場するほど日本文化との関わりは深く、多くの芸術品や詩歌のモチーフ、紋所のデザインなどに使わる。開花期の幻想的な風景は多くの外国人観光客をも魅了するが、近年は放置された山林でスギを覆うように繁茂するフジも目立つ。

 

・日本に自生するフジは、ノダフジ(野田藤)とヤマフジ(山藤)に大別され、ノダフジは蔓が上から見て右巻き、ヤマフジは左巻きになる。古くはノダフジをフジと呼んでいたが、植物学者の牧野富太郎氏が両者を区別するため、フジをノダフジとした。単にフジという場合は両方を含む。

 

・ヤマフジは主に近畿地方以西の低山に見られる種で、花房は10~20センチ程度と短かく、幹はノダフジほど太くならない。また、花が大きいことや全ての小花が同時に開くことでノダフジと見分けることができる。ノダフジは、大阪市福島区の藤の宮(野田地方)が名所であったことにちなむ。

 

・フジという名の由来には、①長く垂れ下がる花の様子を「フキチリ(吹き散り)」または「フサタリハナ(房垂花)」と呼び、それらが転訛してフジになったとする説、②ツルが鞭(ムチ/ブチ)の材料になることから「ムチ/ブチ」がフジに転訛したとする説、③糸状に加工されたツルの皮を糸掛け(=綜)を用いて布にしたことから「綜打ち(ふうち)」が転じたとする説、④「節」を語源とする説など諸説ある。また、学名にあるWisteriaはアメリカ人医師Casper Wistar氏にちなむが、資料によってWistariaあるいはwisteriaと表記される。

 

・フジは樹齢が長く、家紋とする藤原氏に縁の深い春日大社には、樹齢700年とされる「砂ずりの藤」があるが、樹齢1000年といわれるフジもある。長寿や繁栄の象徴として保護されてきたこともあって、各地に名所や天然記念物がある。

 

・代表的な天然記念物のフジは、「牛島のフジ」(埼玉県)、「釣姫神社のフジ」(福井県)、「山の神のフジ」(山梨県)、「熊野(ゆや)の長フジ」(静岡県)、「黒木のフジ」(福岡県)、「宮崎神宮のオオシラフジ」(宮崎県)など。日本三大名藤とされるのは、「野田のフジ」(大阪)、「牛島のフジ」(埼玉)、「春日野のフジ」(奈良)である。

 

・花房を構成する小花は、マメ科に普通の蝶形で長さは1~2センチ。花弁と萼は5枚ずつあるが、1枚だけ上部に立ち上がる大きな花弁(=旗弁)が目立つ。旗弁にある黄色い模様は、花粉を運ぶ昆虫を誘導するもので、その下部に蜜腺がある。

 

・下方にある4枚の花弁をめくると、雌しべ1本と雄しべ10本があるが、10本ある雄しべのうち9本は雌しべを包むように生じ、残り1本は独立する。

 

・花は房の上部(基部)から下に向かって咲き、開花は自然の暦として農作業の目安にされた。優雅な花の様子を藤原氏などは「藤丸」、「下り藤丸」、「藤巴」といわれる家紋にデザインしたが、胡麻炒め、辛し炒め、酢味噌和え、佃煮などにして新芽と共に食べることができる。

 

・花の後には果実(豆果)ができやすく、これにも観賞価値がある。でき始めはビロード状の短毛があって光り輝くが、晩夏~初秋には堅い果皮が乾燥するにつれて黒褐色となる。豆果は長さ10~30センチの大型で平たい。

 

・豆果の中には黒い種子が数個あり、熟すと自然に裂開して遠くまで飛散する。種子は直径1センチほどの扁平した円形。これも煎れば食用あるいは薬用(緩下剤)になる。  

 

・葉は羽根状で葉全体(葉序)の長さは20~30cm。蔓から互い違いに生じる。先端1枚と4~9対の小葉からなり、春先の若い芽は銀白の産毛をまとったような雰囲気だが、赤みを帯びた若葉の時季を経て花が終わる頃には、長さ4~10センチの細長い卵形になる。ノダフジに比べるとヤマフジの方が質厚だが、葉の数は少ない。

 

・小葉の先端は尖って縁にギザギザはなく、若い葉では両面(特に葉脈上)に毛を生じ、ヤマフジは特に裏面に毛が多い。秋にはやや透明感のある黄色に変わるが観賞すべき期間は短い。なお、フジの若葉は鮮やかな黄色を染める染料として使われる。

 

・フジの蔓は丈夫で簡単に切れないことで知られており、フジとクズ(葛)が絡み合ってどうにもならない様を葛藤という。昔から漁網、籠、山登りのための吊り橋や臨時のロープ、籠に使われ、派手なお祭りで知られる諏訪神社の御柱にもこの蔓が用いられる。古墳時代には巨大な石棺を運ぶのにこれを使ったという。

 

・樹皮は明るい灰色で、その内皮の繊維から作った藤布(ふじふ)は日本最古の織物の一つとされ、衣や畳の縁を編むのに使われた。ワタを栽培できない地では手間を掛けてこれを作り、京都府宮津市にはその製法を伝承する集落、上世屋がある。日本人の苗字に「藤」が多いのは、繊維としてのフジに価値があることにも起因する。

 

・樹齢を重ねたフジの蔓は樹木の幹のようになるが、その直径は最大で3mにも達するという。古木となったフジの蔓にはしばし、フジコブと呼ばれるコブができ、これを煎じて飲むと癌を抑えるという民間療法がある。

 

【フジの育て方のポイント】

・寒さにやや強く、北海道まで植栽できる。

 

・成長が早く樹形は乱れやすい。一般家庭では棚を設け、定期的に剪定するのが必須。芽を出す力は強く、剪定には十分耐える

 

・湿気があり、かつ、水はけの良い場所が望ましい。

 

・花つきをよくするためには、豆果を早期に除去する。

 

・フジはコミスジやウラギンシジミという蝶の食草。コミスジの幼虫は葉脈と葉身の一部を残してカーテン状のものを作って潜む。ウラギンシジミの幼虫は主に蕾と花を食べ、食べる部位に合わせて体色を変えるという特技を持つため、やや見付けにくい。

 

【フジの園芸品種】

・「長崎一才」

 盆栽など鉢物に多く使われるノダフジの園芸品種。花つきが良い。

 

・「紫花美短」、「白花美短」

 いずれもヤマフジの園芸品種で、花房が短い。ほかにも「昭和白藤」、「野田長藤(九尺藤)」、「口紅藤」、「八重黒龍」などいろいろな品種のフジがある。

white flower,Wisteria floribunda
白い花を咲かせる「シロバナフジ」
フジの花 種類
一重黒龍
藤 品種
カピタン紅

麝香フジ 画像
ジャコウ藤
variety Japanese wisteria
本紅藤

 

【フジに似た植物】

クズ

 

アケビ

 

キングサリ(金鎖)

 同じマメ科の落葉小高木で黄色い花を咲かせるため、キバナフジとも呼ばれる。フジと共に植栽されることも多いが、ヨーロッパ原産であり、日本での自生はない。

黄色い花が咲く藤の木
キングサリの花

 

・サッコウフジ(タイワンサッコウフジ)

 鹿児島、沖縄、台湾、中国南部及びベトナムに自生するマメ科ナツフジ属の常緑樹。ムラサキナツフジとも呼ばれ、紫の花を観賞するため江戸時代から栽培される。サッコウフジという名は、漢名「醋甲藤」の音読みによる。

紫色の藤の花
サッコウフジ(ムラサキナツフジ)

フジの基本データ

 

【分類】マメ科/フジ属

    落葉つる性木本

【別名】ノダフジ/ヤマフジ

【学名】Wisteria floribunda

【英名】Japanese wisteria

    Japanese Wistaria

【成長】早い

【移植】難しい(根をすべて掘り出す)

【高さ】(蔓の長さは10m以上)

【用途】公園/棚/鉢植え/盆栽

【値段】1200円~

 

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