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テイカカズラ/ていかかずら/定家葛
Climbing bagbane/Yellow star jasmine
【テイカカズラとは】
・本州、四国及び九州に分布するキョウチクトウ科テイカカズラ属の常緑つる性植物。朝鮮半島に自生するチョウセンテイカカヅラが基本種と考えられている。中国名は「白花藤」。
・江戸時代以前から栽培されており、古今和歌集では古名のマサキノカズラとしてその歌が詠まれ、「方丈記」で知られる鴨長明(平安末期~鎌倉初期)は、晩年に住んだ庵の周りの道が本種で埋め尽くされている旨を記している。
・自生は雑木林や杉林の縁、湿った岩場など。生涯の多くは薄暗い場所で地上を這うように育つが、適当な木や岩があれば蔓に生じる「付着根(気根)」を使って一気に上方へ這い上がり、高木の頂上に達するほど育つ。
・テイカカズラの開花は5~6月。枝先や葉の脇から伸びた花序(花の集り)に、直径2~3センチの花が5~7輪ずつ咲く。花冠は深く五つに裂け、扇風機の羽根のように少し捻じれて咲くのが特徴。花の基部は筒状で緑色の萼片がある。
・花色は白だが、花が終わる頃には淡い黄色になる。別名を「つるクチナシ」というほどの強い香りは日本のものとは思えないような南国風で、かつてはこの香りを楽しむために植えられることが多かった。5本ある雄しべの葯は黄色く、花冠から少しはみ出す。
・花の後には弓なりの細長い果実ができ、10月頃に成熟する。長さ15~20センチほどの果実には、タンポポのような種子が多数入っており、熟すと縦に裂け、風に舞って種子が飛び立つ。普通は二つの果実が二股に吊り下がるが、虫が入って一つの球状(虫こぶ)になることがある。
・テイカカズラの葉は長さ3~7センチの楕円形。幼木では縁に波状のギザギザがあるが、成葉の縁にギザギザはない。葉は革質で表面は光沢のある暗緑色。蔓から対になって生じ、葉脈上に白い斑点がある。葉の色形は環境による変異があり、盆栽界では葉が小さな個体を千歳蔓、雪駄蔓と呼んで珍重する。常緑だが遅霜に遭うと一部の葉が紅葉する。
・蔓は針金状で分岐が多く、太さは人の指ほどだが、時に直径8センチを超える。若い蔓には褐色の毛があるが、古くなると無毛で灰白色になる。蔓は他の木に絡みつかず、その表面に付着するように育つ。
・テイカカズラの蔓や葉柄をちぎると白い液を生じるが、全草にトラチェロシドという有毒成分を含んでおり、皮膚が敏感な人は触れるとかぶれる可能性がある。かつてはテイカカズラを解熱、鎮痛、強壮に用いる民間療法もあったが、誤用によって嘔吐、下痢、腹痛を引き起こすため現在は全く推奨されない。
・テイカカズラという名前は、金春禅竹の作とされる能の謡曲「定家」に由来する。話の内容は共に新古今を時代を代表する歌人であった藤原定家と式子内親王の悲恋にまつわるもので、死後、葛に姿を変えて式子内親王の墓に絡まっている藤原定家の亡霊を、旅の僧侶が祈禱によって解放するが、結果的には再び絡みつくというもの。
・名の由来については、テイカは「定家」ではなく「庭下」で、庭の下の方に咲く葛の花を意味するという説、本種が藤原定家の古墳石から出土したという説もある。
【テイカカズラの育て方のポイント】
・寒さに強く、北海道でも南部であれば植栽できる。
・土質を問わず旺盛に育つため、他のつる性植物と同様にフェンスや棚に絡ませて楽しむのが基本だが、あえて地面を這わせ、グランドカバーとして使うこともある。なお、付着根の吸着力はそれほど強くないため、壁面緑化には向かない。
・剪定によく耐えるため、強めの剪定を繰り返して木のように自立させ、盆栽などの鉢物に使うこともできる。
【テイカカズラの品種】
・ケテイカカズラ
西日本に分布する変種で、全体に毛が多い。他にオキナワテイカカズラ、シマテイカカズラ、トウテイカカズラ、ニシキテイカカズラ、オウゴンニシキなどがある。
・ハツユキカズラ
葉に白い模様が入った品種で、寒気に触れると白い部分が鮮やかな紅色になる。テイカカズラよりもはるかに普及している。
初雪カズラ ハツユキカズラ 白ピンクに染まる新芽が美しいリーフ植物 初雪カヅラ ハツユキカズラ苗 ハツユキカヅラ 植物 グリーン
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テイカカズラの基本データ
【分類】キョウチクトウ科/テイカカズラ属
常緑つる性広葉/中木
【別名】マサキノカズラ/マサキカズラ
チョウジカズラ/ツルクチナシ
ラクセキ(絡石)
【漢字】定家葛/定家蔓
【学名】Trachelospermum asiaticum
【成長】やや遅い
【移植】簡単だが掘り起こすのは困難
【高さ】5m~10m
【用途】フェンス/グランドカバー/盆栽
【値段】1200円~