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サルトリイバラ/さるとりいばら/猿捕茨

Sarutori-ibara(China root)

山帰来,サルトリ,サンキラ
秋にできる果実は食べられる
さるとりいばら,植物
この巻きヒゲを他物に絡めて育つ
さるとりいばらの花
開花は八重桜が咲く頃(画像は雄花)
山帰来の花
雌花
サルトリイバラ,葉っぱ,さるとりいばら
俗名は「山帰来」 葉は「サンキラ」として餅や饅頭を包むのに使う
サルトリイバラ,植物
裏面の様子
さるとりいばら,植物
ツルはカクカクした感じに伸び
さんきら
他の木などにトゲを引っかけて育つ
猿捕茨,つる
トゲはまばら バラほどではないが触れると痛い
カカラ,山帰来,実,さるとりいばら
未熟な果実の様子
さるとりいばら,実
果実は晩夏から色づき始め・・・
山帰来,赤い実
徐々に赤くなり・・・
さるとりいばら,紅葉,実
黄葉のころに熟すが野鳥には人気がない
さんきらい,実
冬季の様子
山帰来,さるとりいばら
草のようにも見えるが、木の仲間
さるとりいばら
野生状態では自立することもあるが・・・
サルトリイバラ,育て方
庭ではネットやトレリスに巻き付けて育てる

 

【サルトリイバラとは】

・日本各地に分布するサルトリイバラ科の落葉樹で、山野のみならず平地の林縁でも普通に見られる。蔓に生じる棘の様子をバラに見立てて名付けられたが、イバラ(ノイバラ)の仲間ではない。日本以外の東アジアにも分布。 

 

・これが繁茂したところへ追いやられると猿さえも脱出できず、人間に捕らえられてしまうという意味合いでサルトリイバラ(猿捕茨)となった。つるに生じる棘は鈎状で鋭く、葉元から生じる巻きヒゲと相まって自らの蔓や他物に絡まって育つ。

 

・俗言に「山で恐いはサルトリイバラ、里で恐いは人の口」というものがある。サルトリイバラのトゲはまばらであるが、棘と巻きヒゲは厄介であり、サルの進化型である人間にとっても扱いづらい。ちなみに「人の口」とは噂話のこと。

 

・サルトリイバラの葉は直径3~12センチの円形あるいは楕円形で、枝から互い違いに生じる。葉の縁にギザギザはなく、表面には黄緑色で光沢がある。若菜は茹でると食用になるが、成葉は分厚くてゴワゴワしており、食べる気にさえならない。

 

・茎は緑色で硬く、節ごとに曲がりくねって育つ。茎には托葉が変化した一対の細い巻きヒゲがあり、これを触手のように伸ばして他物に絡まる。

 

・葉には独特の香りがあり、西日本では「サンキラ」と称し、カシワホオノキと同じように若葉を塩漬けして饅頭や餅を包むのに用いる。これに由来する地方名、マンジュッパ、ボタモチバラ、カシワなどが知られるが、現代では輸入物も多い。

 

・雌雄異株で開花期(4~5月)になると雌株には雌花を、雄株には雄花を咲かせる。花弁は長さ4ミリほどで反り返り、雄花では黄色い葯(雄しべの先端)が、雌花では先端が三つに裂けた柱頭(雌しべ)が見られるが、いづれも淡い黄緑色の小さな花であり、バラのように目立つことはない。 

 

・雌株には画像のような果実ができ、9~12月に赤く熟す。直径1センチほどの大型で、光沢があるためよく目立つ。有毒成分は含まれておらず、生食、果実酒として利用できる。果実の中にはクリーム色の堅い種子が二粒入っており、これを蒔けば増やすことができる。

 

・サルトリイバラの根茎は地上のツルと同様によく育って木質化し、節の多い独特の形状になる。根茎にはサポニンやタンニンが含まれ、秋に採取したものを乾燥させれば「和山帰来」という漢方薬になる。ニキビ、腫物、むくみ、利尿、下痢止めなどに効果が期待されるが、実際にはさほどの効き目がないという。

 

・別名のサンキライは、サルトリイバラから作られた漢方薬を中国の華南地方に分布するサンキライ(土茯苓=どぶくりょう)の代用としたことによる。ちなみにサンキライは「山帰来」であるがその語源には、梅毒を患って村を追われた男が、この薬草で治り、村に帰ってきたという故事に由来するという説と、山の珍しい食糧を包む葉を意味する「山奇粮(さんきろう)」が転訛したとする説がある。

 

・生け花の世界においても本種をサンキライ(山帰来)と呼び、水持ちの良い果実や葉、あるいは節ごとにジグザグに曲がる特徴的な枝を花材として珍重され、近年ではクリスマスや正月飾りにも使われる。 

 

【サルトリイバラの育て方のポイント】

・そこらじゅうの道端に生じるような丈夫な性質を持つが、乾燥した日向を好み、日陰では開花や結実が望めない。

 

・樹勢は強く、放置すれば縦横無尽に広がる。茎は堅く、ノイバラやキイチゴよりも鋭い刺があるため扱いにくい。定期的に剪定して繁茂するのを防ぐ必要がある。

 

・主だった幹はないが、枝分かれしながら5~6mの高さまで登りつめ、他の樹木を覆って枯らす可能性もあるため、フェンスやトレリスを用いて誘引したい。

 

・葉はルリタテハ(蝶)の食草であり、多少の食害がある。特に日陰に植えられたサルトリイバラでは葉の両面に卵が産み付けられ、若い幼虫は葉に穴を空けるように食べ、成長した幼虫は葉の縁を食べる。

 

【サルトリイバラの品種】

・ハマサルトリイバラ

 暖帯南部から亜熱帯に見られる仲間。似たような性質を持つが、刺がほとんどない。このほかトゲナシサルトリイバラ、オキナワサルトリイバラなど全7種類のサルトリイバラがある。

トゲがない,さるとりいばら
関東にも見られるトゲナシサルトリイバラ

 

【サルトリイバラに似た植物】

・ヤマガシュウ(山何首烏)

 葉はよく似るが先端が尖り、ハート形に近い。刺はサルトリイバラのように曲がらず、黒い実がなる。

ヤマカシュウ,植物
ヤマガシュウの葉

 

 

・ヒメカカラ

 屋久島の固有種でジグザグの枝に小さな葉が密生する。

ひめかから,植物
ヒメカカラ

 

シオデ

サルトリイバラの基本データ

 

【分類】サルトリイバラ科

    サルトリイバラ属

    落葉つる性/半低木

【別名】サルトリ/サンキライ/サルカキ

    サンゲラ/ガンタチイバラ

    カカラ/イビツ/ノゲイハ

    カラタチ/カカラン

【学名】Smilax china

【成長】やや早い

【移植】移植可能だが掘り起こすのは難しい

【高さ】0.5~3m

【用途】生垣/花材/棚

【値段】1200円~

 

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