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サネカズラ/さねかずら/実葛
Scarlet Kazura(Sanekazura)
【サネカズラとは】
・関東以西の本州、四国、九州及び沖縄に分布する常緑性のつる性植物。秋にできる赤い果実を観賞あるいは実用するため古くから庭木として親しまれ、万葉集や小倉百人一首にもその名が登場する。日本のほか、朝鮮半島や中国にも見られる。
・暖地の低山や雑木林の林縁などに自生し、郊外の藪でも普通に見られるが、数少ない常緑性のツルであるため、フェンスや庭園に用いる。別名はビナンカズラなど。
・ビナンカズラのビナンは「美男」で、かつて武士たちが樹皮や枝葉の粘液を鬢付け油(整髪料)としたことによる。粘液にはキシログロクロニドという物質が含まれ、適当に切った枝葉を水に浸けておくだけでも生じる。「ビナン」ではあるが女性もこれを使用し、「美人草」という別名がある。粘液は紙幣を作るための糊などにも使われ、別名をフノリカズラ、トロロカズラという。
・サネカズラの開花は8~9月。花は直径1.5センチほどで、花弁あるいは花弁と同じような色形の萼が計9~17枚が集まり、葉の脇から伸びた長さ2~5センチの花柄に垂れ下がる。
・雌雄異株(稀に同株)で、雄株に咲く雄花には球状の赤い雄しべが多数ある。雌株に咲く雌花は黄緑色の雌しべが球状に集まり、子房も球状になる。
・果実は水分を含んだ直径3ミリほどの小さな果実が集まって、ちょうど和菓子の「鹿の子」のようになる。10~12月に赤黒く熟すが野鳥の人気はなく、メジロ、ムクドリ、ヒヨドリが稀に啄む程度。苦味があって生では食べられないが、果実酒として使うことはできる。
・「サネ」は果実を意味する古語。「カズラ」は蔓性植物を表し、赤い果実がよく目立つツルということで、「実葛(さねかずら)」と名付けられた。クリーム色の果実がなるスイショウカズラという品種もある。
・漢方では乾燥させたサネカズラの果実(あるいは樹皮)を「南五味子(なんごみし)」と呼び、強壮、咳止め用の妙薬として商品化している。ちなみに五味子とは、近縁の蔓性植物であるチョウセンゴミシの果実を材料としたもので、五つの味があることを意味し、催眠にも効果があるとされた。
・葉は長さ5~15センチの楕円形で先端が尖り、縁にはまばらにギザギザがある。革質で表面に光沢があり、裏面は淡い緑色だが、時折紫色を帯びることも。
・新枝は赤褐色で柔らかい。分岐を繰り返しながら地面を這い、他の草木に絡まって繁茂する。直径は最大2センチほどで、年を追うごとにコルク層が発達し、触れると弾力性がある。
【サネカズラの育て方のポイント】
・自生はあまり日の当たらない場所。半日陰地を好むが、日向でも育つ。ただし、日差しが強いと葉が変色して見苦しくなることも。
・樹勢が強く生育は旺盛。放任すれば蔓は10m以上になる。自ら他物に付着する性質はないため、トレリスや棚などに誘引して育てるのが普通。
・定期的に強めの剪定を行った方が、花や果実のなりがよい。それでも花や果実がならない場合は、鶏糞や骨粉などリン酸やカリ成分の多い肥料を施すとよい。
・病害虫の被害はほとんどないが、寒さに弱く、植栽は暖地に限られる。霜が降りる地域では冬季に落葉することもある。
【サネカズラの品種】
・ニシキカズラ(錦葛)
葉にクリームや薄紅色の模様が入る園芸品種で原種よりも明るい雰囲気を持つ。単に「斑入りビナンカズラ」と呼ぶことも多い。
【サネカズラに似た植物】
・マツブサ
・チョウセンゴミシ
サネカズラの基本データ
【分類】マツブサ科 サネカズラ属
常緑つる性木本
【漢字】実葛/真葛
【別名】ビナンカズラ/ビンツケカズラ
トロロカズラ/トロリカズラ
サナカズラ
フノリカズラ/ナメリカズラ
【学名】Kadsura japonica Dunal
【成長】早い
【移植】移植可能だが掘り起こすのは難しい
【高さ】10m以上
【用途】生垣/盆栽/棚
【値段】1200円~