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キヅタ/きづた/木蔦
Japanese ivy
【キヅタとは】
・北海道南部~沖縄の各地に分布するウコギ科のツル性植物。平地の藪などでも普通に見られる代表的なツル性植物で、林縁や明るい林内に生じ、他の樹木や岩に付着しながら成長する。日本以外では朝鮮半島南部、中国南部、台湾に分布。
・葉は直径2~7センチの肉厚な革質。表面は光沢のある濃緑色で裏面は淡い黄緑色。縁は波打つ。若いキヅタの葉はトウカエデのように浅く裂けて3~5角形になるが、古い株の葉は菱形に近い卵形で裂け目はなく、先端が鈍く尖る。葉には長さ3センチほどの柄があり、ツルから互い違いに生じるのが普通だが、対になることもある。
・キヅタは年間を通じて葉を落とさない常緑性。冬にも葉があることを強調したフユヅタという別名があり、落葉性のツタ(=ナツヅタ(夏蔦))と区別する。本種は鬱蒼としやすいため、紅葉の綺麗なナツヅタのように庭に用いられることは稀であるが、石垣やフェンス、建物の壁面などに使う例もある。
・キヅタの開花は10月~12月。枝先にヤツデに似たボール状の花序(花の集り)を複数生じ、直径4~5ミリの小さな五弁花を咲かせる。雌雄同株で花には5本の雄しべと雌しべがあり、雄しべは花弁から長く突き出す。雌しべは花盤と呼ばれる花の中央部でわずかに膨らむ。
・開花が進むと花弁は反り返って脱落し、花盤は褐色を帯びる。花後にできる果実は直径6~8ミリほどの球形で水分を含む。果実が黒紫色に熟すのは翌春4~5月で、ヒレンジャク、ツグミ、ヒヨドリなどの野鳥が採食する。果実の中には数個の種子がある。
・キヅタのツルは気根を出しながら育ち、最長で10m、太さ10センチにもなる。また、若いツルには淡い黄色の微毛があるが、樹齢を重ねると黒褐色になる。ツタよりも太く、かつ木質となるためキヅタ(木蔦)と呼ばれるようになった。
・ツルや葉を含む全草の汁液にファルカリノールやヘデリンというアレルギー性物質を含む。これに触れると皮膚のかぶれを起こし、誤飲すれば嘔吐、下痢、腹痛などの症状を引き起こす可能性がある。
【キヅタの育て方のポイント】
・土の質や湿度を問わず丈夫に育ち、枝葉が密生しやすい。そうした特性を生かしてビルの壁面緑化やインターチェンジの雑草除けとして使うことがあるものの、一般家庭での植栽はあまりお勧めできない。あえて庭に植える際は、強めの剪定を繰り返すことで、他の樹木への悪影響を抑える必要がある。
・若木のうちは開花しにくいが、樹齢を重ねると花や実の数が多くなる。
【キヅタの品種】
・フクリンキヅタ
緑白色のまだら模様が入る品種。明るめの雰囲気を持ち、原種よりは園芸に向く。
・ナガボキヅタ
沖縄や九州に見られる品種で、原種よりも花序が長い。この他、中国には黄色い実がなるキヅタがある。
【キヅタに似た植物】
・ツタ
キヅタに似るが落葉性で、秋の紅葉が美しい。
・ヘデラへリックスなど多様な品種が出回る「アイビー」はヨーロッパや西アジアを原産とし、「セイヨウキヅタ」と呼ばれる。セイヨウキヅタの多くはキヅタよりも葉が大きく、園芸用には斑入りの品種を使うことも多い。
キヅタの基本データ
【分類】ウコギ科 キヅタ属
常緑つる性広葉
【別名】フユヅタ/オカメヅタ/キズタ
ツノモジキ/コマノキ/コマカズラ
【学名】Hedera rhombea
【成長】やや遅い
【移植】実生や挿し木で増やすのが一般的
【高さ】5m~10m
【用途】土留め/壁面緑化
【値段】200円~