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ラクウショウ/らくうしょう/落羽松
Bald cypress
【ラクウショウとは】
・北アメリカ東南部~メキシコ湾岸の湿地を原産とするヒノキ科ヌマスギ属の落葉高木。日本に来たのは明治時代で、よく似たメタセコイアと共に公園などに植栽される。
・ラクウショウという名前は、秋になると鳥の羽根のような葉が枝ごと落下することにちなむ。漢字では「落羽松」だが、マツの仲間ではなくヒノキやスギの仲間。湿地に育つためヌマスギという別名もある。
・鳥の羽根のような葉は、扁平した線形の小葉が二列に多数並んでできている。出方は枝の部位によって異なり、秋に落下する短い枝では、葉が枝から互い違いに生じ、樹形を形成するような長い枝の葉はらせん状になっている。枝はほぼ水平に生じるかやや下垂し、木が若いうちは樹形が円錐状になるが、樹齢を重ねるごとに丸みを帯びる。
・ラクウショウの開花は3~5月。雌雄同株で、垂れ下がる枝に雌雄それぞれの花を咲かせる。雄花は画像のような紐状(雄花序)で、その長さは10~20センチほど。雌花はその基部でわずかに咲くが、両者ともあまり目立たず話題になりにくい。
・花の後には球果ができ、翌年10~12月になると暗褐色に熟す。メタセコイアよりも明らかに大きく、普通は直径2~3センチほどだが、画像のように5センチ以上になるものもある。しかし中には全く結実しない木も多く個体差が激しい。中に含まれる種子は光沢のある褐色で、不揃いなクサビ形になる。
・原生地での樹齢は長く、中には1000年を超えるものもあるという。巨木になると樹高は50m、幹の直径は5mに達する。東京の狛江市には「黒船」で知られるペリーが持参したというラクウショウが残る。
・ラクウショウには画像のように根が地面に突き出る「気根」(あるいは「膝根」「呼吸根」)と呼ばれるものが生じる。これは酸素不足を補うもので、水辺など湿気の多い場所の個体に見られる。また、幹の基部は不規則に肥大し、時には張り出して「板根」となる。
・樹皮は赤褐色あるいは灰褐色。成木では縦に薄く裂け、ヒノキやサワラに近い。幹の直径は最大2~5mに及び、材は建築、土木、造船、器具材に使われる。
【ラクウショウの育て方のポイント】
・日陰に強く、病害虫の被害もほとんどない。
・ヌマスギの名のとおり湿地に強く、あえて池や沼の中に植えて景色を作る手法もあるほど湿気を好むが、乾燥地にも耐える。
・剪定に強く、樹形を整えやすいが、成長が早く管理が追いつかないことも。種を播いた年に高さ1mにも達する例がある。
・原産地の樹高(50m)には及ばないものの、日本でも放任すれば20m以上の巨木になる。落葉期に大量の葉を落とすことから一般家庭にはあまり向かない。公園や遊園地の水辺に植えるのが望ましい。
【ラクウショウの品種】
・枝が垂れるものを「シダレラクウショウ(=タチラクウショウ=ポンドサイプレス)」と呼んで区別することがあるほか、低木型のもの、枝が密生するもの、樹形が通常と異なるものなど十種類ほどあるとされる。
【メタセコイアとの見分け方】
・ラクウショウは、別名を「ヌマスギモドキ」というメタセコイアに似る。実際のところ近付いて葉をじっくりと観察しなければ区別が難しい。上記のとおり、ラクウショウの小枝では葉が枝から互い違いに生える「互生」だが、メタセコイアは一箇所から対になって生える「対生」であるため見分けられる。また、ラクウショウの方が葉が短い。両者は冬芽の形がまったく異なるため、葉がない状態のほうがむしろ見分けやすいかもしれない。
【ラクウショウに似た木】
・メキシコラクウショウ
メキシコの国の木に指定され、同国南部の温帯地方(海抜1,400~2,300m)を中心に分布する。ラクウショウとの違いは、落葉しないこと、秋に開花すること、気根(膝)ができにくいこと、そして樹高がより高くなることなど。
アメリカ南東部の沼地や湖畔に見られる木で、その樹形や枝ぶりから、「タチラクウショウ(立落羽松)」あるいは「シダレラクウショウ(枝垂れ落羽松)」とも呼ばれる。樹皮が浅く裂け、葉の様子がまったく異なるため、見分けるのはたやすい。
・カラマツ
冬季に落葉するマツ科の針葉樹で、本種とは直接の関連がないものの、漢字表記が「落葉松」であるため混同されやすい。
中国産の落葉樹でラクウショウと同じように水辺に生えるが、葉はより細長く、球果は小さい。
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ラクウショウの基本データ
【分類】ヒノキ科 ヌマスギ属
落葉針葉 高木
【漢字】落羽松(らくうしょう)
【別名】沼杉(ヌマスギ)
【学名】Taxodium distichum
【英名】Bald cypress
【成長】かなり早い
【移植】簡単
【高さ】25m~50m
【用途】街路樹/公園/湿地の造林
【値段】1200円~