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ヤマナシ/やまなし/山梨
Sand pear
【ヤマナシとは】
・本州、四国及び九州を原産地とするバラ科の落葉広葉樹。民家の近くに多く、山間に群生が見られないことから、古い時代に中国から渡ったものが野生化したとする説もある。日本のほか中国の中南部や韓国にも見られる。
・日本書紀にも登場するほど日本人との関係は深く、我々が口にする「二十世紀」、「香水」、「長十郎」といった和ナシの原種かつ台木となる。なお、円錐状の実がなる洋ナシは小アジア及び南東ヨーロッパを原産とするナシが原種となっており、系統が異なる。
・ヤマナシの葉は卵型あるいは楕円状の卵型で先端が尖る。長さは6~18センチほどで、縁に鋭いギザギザがあり若葉では特に目立つ。枝先に密生するように見えるが、枝らか互い違いに生じる互生。枝は画像のような感じだが、小枝は棘状になることがある。
・4~5月になると葉の展開と共に白い花が開花する。花は直径5センチほどで花弁は5枚、花柱(雌しべ)5本の周りを20本ほどある雄しべが取り囲む。短い枝の先に5~10輪が集まって咲く姿は美しい。
・9~10月頃に熟す果実は直径3~9センチほど。一般的なナシは直径10センチ以上あるため、ナシのイメージからすれば相当に小さく、パッと見はキウイのように見える。果肉は堅くて酸味や渋味が強く、食用にならない。
・幹の直径は最大で60センチほど。染料に使われる樹皮は黒っぽい色合いで、古木になると縦や鱗状に裂け目が入る。ヤマナシの材は緻密で耐久性が高いため、書道で使う墨の木型に重用する。
・ヤマナシと聞けば山梨県を連想するが、山梨県の県木はヤマナシではなくカエデ(モミジ)。また、ナシの語源については、果肉の白さを表す「中白(なかしろ)」あるいは、芯の酸っぱさを表す「中酸なかす)」が転訛したとする説などがある。
・地方によってはアズキナシをヤマナシという。
【ヤマナシの育て方のポイント】
・典型的な「陽樹」であり、植栽は日向に限る。日当たりや通風が悪い場所では、病害虫が発生しやすい。
・土質は選ばないが、粘土質の土壌に植えると生育が良い。
・大気汚染や煙害に弱く、都市部にはあまり向かない。
・樹形は整いにくく、木の姿を観賞するような木ではない。
【ヤマナシの品種】
・イワテヤマナシ
岩手県の限られた地域に分布する品種で、宮沢賢治の童話「ヤマナシ」に登場するのは本種とされている。その他、本種の近縁にはアオナシ、ミチノクナシ、マメナシなどが、果樹としての品種にはナシがある。
ヤマナシの基本データ
【分類】バラ科/ナシ属
落葉広葉/高木
【漢字】山梨(やまなし)
【別名】ニホンヤマナシ
【学名】Pyrus pyrifolia
(Burm.I.)Nakai
【英名】Sand pear
【成長】早い
【移植】難しい
【高さ】10~20m
【用途】花木/公園
【値段】3000円~