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ボタン/ぼたん/牡丹
Peony
【ボタンとは】
・中国北西部の原野を原産とするボタン科の落葉樹。中国を代表する花木であり、同国では「花王」と称されて1400年以上前から栽培される。シャクヤクに似るが「草」の仲間であり、冬季にも枯れた枝葉が地上に残り、年を経ると茎が硬くなるボタンは「木」の仲間に分類される。
・ボタンが日本へ渡来した時期は不詳だが、奈良~平安時代末期とされる。当初は薬用植物として育てられたが、6~7世紀頃から観賞用の園芸品種が作られ、現代では多くの品種が庭木に使われる。
・ボタンの品種改良が盛んだった江戸時代には160以上の品種が知られるようになった。美人を称える諺「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」に使われるほど人気を博した時期もあったが、現在は江戸時代ほどの隆盛は見られず、30種類程度が栽培されている。
・ボタンの開花は4~6月。「花王」という別名のとおり、直径10~25センチにもなる花の存在感は圧倒的。その年に伸びた新たな枝の先に一輪ずつ咲き、花色は赤、白、ピンク、紫、黄色、黒紫など。開花期間は20日ほどであり、別名に「二十日草(ハツカグサ)」がある。
・シベは多数あって分かりづらいが、2~5本ある雌しべの基部(子房)は袋状になった「花盤」が取り囲み、多数ある紅色の雄しべの先端には線形で黄色い葯がある。花の裏側にある萼は緑色で5枚。肉厚で花後の秋まで残る。
・花弁は光沢のある薄い膜質で形は不揃い。原種は一重の紫でいわゆるボタン色。原種の花弁は5~9枚で不定。園芸品種には八重咲きのほか、千重咲き、万重咲きとよばれるものまである。
・寒い時期(12~1月)に咲くカンボタンは、ボタンの品種名ではなく、コモ(農業用のワラ)で株を覆って温度を調整し、開花時期を人工的にずらしたものの総称。春の花よりも小ぶりだが、他に花がほとんどない時季に咲き、珍重される。
・花の後にできる果実は長さ3センチほどの袋状で、短毛を密生させる。9月頃に熟すと縦に裂け、多数の種子がこぼれ落ちる。種子は直径5ミリほどで黒光りし、一つの果実に10~20粒入る。繁殖はこの種子による実生や株分けが多いが、園芸品種はシャクヤクを台木とした接ぎ木による。
・葉は画像のような羽根状で全体の長さは20~50センチ。小葉は長さ4~10センチの卵形。先端は2~3つに裂けて尖るものが多いが、丸いものもある。表面は緑色だが裏面は淡い緑色。早いものでは2月に発芽し、9月頃に落葉する。枝は細くて出方は粗く、直立する幹も分岐が多い。幹の直径は最大でも15センチほど。
・ボタンの根の皮には芳香と薬効があり、漢方薬(牡丹皮)として止血、解熱、消炎、鎮痛等に、また、防虫効果があるため、かつてはタンスの防虫剤として使われた。種子も薬用になる。
・和名のボタンは中国名の「牡丹」を音読みしたもの。中国では根茎から繁殖が可能な植物を「牡」、紅い花を「丹」と表す。中国で花といえばボタンのことで「花王」あるいは「花神」として称賛される。ボタンは散り際も美しく、時代を問わず文学や芸術作品のモチーフにされるが、その最盛期は唐の時代。台湾ではボタンを国の花とし、わが国では島根県が県の花としている。なお、ボタン科ボタン属の植物は本種のみで近縁種はない。
【ボタンの育て方のポイント】
・寒さに強く、砂壌土を好む。
・日向に植え、肥料を十分に与えなければ開花しない。
・花は、その年に伸びた枝の先にできる。
・根元から細枝が発生しやすく、株立ち状に育つ。また、枝もよく分岐する。
・一般的な庭木に比べて発芽の時季が早く、落葉も早いのが普通。
・原種は細根が少なく移植しにくいが、市場に出回っているものはほとんどがシャクヤクを台木にしている。純粋なボタンに比べて短命だが、根が柔らかく、鉢植えなどでも扱いやすい。
【ボタンに似た植物】
【ボタンの品種の一例】
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ボタンの基本データ
【分類】ボタン科/ボタン属
落葉広葉/低木
【漢字】牡丹(ぼたん)
【別名】花王(かおう)/富貴花
ハツカグサ(二十日草)
百花王/フカミグサ
キシャクヤク(木芍薬)
ナトリグサ/コウキグサ
【学名】Paeonia suffruticosa
【英名】Peony/Tree peony
【成長】遅い
【移植】8月末~9月上旬なら可
【高さ】0.5m~3m
【用途】花木/公園/鉢植え/花材
【値段】1500円~