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ホオノキ/ほおのき/朴の木
Japanese white bark magnolia
【ホオノキとは】
・北海道~九州に分布するモクレン科の落葉樹。個体数はやや少ないが山間の肥沃地に生じ、日本の広葉樹では最も大きな葉と花をつける。日本特産とされることもあるが中国にも分布し、漢字表記は「朴」あるいは「厚朴」。
・花、葉、実のすべてが大型。自然界では幹の直径が1m近くに達するため元来は庭木としての利用は少なかったものの、端整な樹姿が好まれ、観賞用として公園や街路に植栽されることがある。
・ホオノキの開花は葉が展開し終えた5~6月。花は直径15~20センチの杯形で、9枚ある花弁はラーメンなどに使うレンゲ(蓮華)のような形。咲き始めは白く、日が経つとクリーム色になる。ハクモクレン、コブシ、タイサンボクの仲間であり、開花期にはそれらと同様の甘い香りがあるが、特に夜は香りが強い。
・花の寿命は3日間で、大きな花は散り際も見事。その様子を表す「朴散華」という言葉があるほど。ただし、同属のタイサンボクの花よりは小さいものが多く、花弁の幅も狭い。
・果実はたくさんの種子が詰まった長楕円形の袋状で、長さは10~15センチ程度。9~11月に熟すと紅色になって美しいが、自然に裂けて中から2粒の種が、白い糸を引いて飛び出す様はややグロテスクになる。食用にはならないが、アオゲラ、アカゲラ、コゲラなどのキツツキ類はこれを好んで食べ、ヒヨドリ、オオルリ、メジロ、シジュウカラ、ヤマガラもやって来る。
・ホオノキの葉は長さ20~50センチ、幅10~25センチほどと大きく、万葉集には葉を傘に見立てた歌など二首が詠まれる。枝先に集まって互い違いに生じ、裏面は白っぽい。
・葉は一見するとトチノキに似るが、縁にギザギザがない。両者の違いは落ち葉を見ればより明らかであり、ホオノキは葉が1枚1枚分かれるが、トチノキは掌状のまま落葉している。落ち葉は木の下を埋め尽くすほどになり、冬に地面を見れば近くにホオノキのあることが分かる。
・葉は「ホオバ」と呼ばれ、若葉はカシワのように食べ物を包むのに使われた。ホオノキという名前の由来には、この「包(ホオ)」によるとする説、「大葉」が「ほお」に転訛したとする説などがある。古名はホオカシワ(朴柏)で、これも盛り付けに使うことを意味する「炊葉(かしいば)」に由来する。
・大きな葉は丈夫で香りが良く、殺菌作用もあるため東北地方ではカノシタなどのキノコを保管するのに使われた。冷蔵庫が備わった現代でも朴葉味噌(ほおばみそ/飛騨高山)、朴葉寿司(恵那)、朴葉餅、朴葉巻、朴葉にぎりなど各地の名物としてその名残が残る。
・幹は灰白色で真っすぐに伸びることが多い。樹皮は樹齢を重ねると皮目(横線)が入るがほぼ滑らかで、山の中でも比較的見分けやすい。ホオノキの樹皮は、中国に自生するシナホオノキの樹皮(厚朴)の代用「和厚朴(わこうぼく)」として漢方薬となり、腹痛、去痰、下痢に効果があるという。
・ホオノキは成長が早いため材はやや柔らかめだが、質が均一で加工しやすく軽量であることから、建具、タンスの引き出し、まな板、額縁、版木、定規、製図板、鉛筆、ピアノの鍵盤、将棋の駒、寄木、彫刻、象嵌、太鼓のバチ、ラケット、下駄(朴歯)、マッチの軸、漆器の木地、日本刀の鞘(さや)などに幅広く用いられる。材は日本の木としては珍しく緑色を帯び、北海道産よりも本州産の方がよりその傾向が高いという。
【ホオノキの育て方のポイント】
・寒さに強い。
・自然に形が整いやすい。
・樹勢が強く、丈夫。病害虫も少ない。
・芽を出す力はあるものの、剪定によって形が乱れやすい。狭い庭には全く向かない。
【ホオノキの品種】
・ナガバホオノキ
九州を原産とする品種で、葉の幅が通常のホオノキより狭い(12センチ以下)。
・ヤハズホオノキ
中国南部を原産とする近縁種で、葉の先端が矢筈のように凹状にへこむ。別名はオウヨウコウボク(凹葉厚朴)。
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ホオノキの基本データ
【分類】モクレン科/モクレン属
落葉広葉/高木
【漢字】朴の木/厚朴(ほおのき)
【別名】ホオガシワ/ホオカシワ
ホホガシ/ホウ/ホウノキ
キツネノカラカサ
【学名】Magnolia obovata
【英名】Japanese white bark magnolia
【成長】早い
【移植】難しい
【高さ】10~30m
【用途】公園/工場の緑化
【値段】1000円~