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ビョウヤナギ/びようやなぎ/美容柳
Chinese hypericum
【ビヨウヤナギとは】
・中国中南部を原産とするオトギリソウ科の低木。日本の花にはない華美な雰囲気が好まれ、庭木として庭園や公園に植栽され、切花としても広く使われる。同じように中国南部を原産とするキンシバイの仲間であり、混同されやすい。
・夏に咲く黄色い花が美しく、葉の形や垂れ下がる様子が「未央宮」のヤナギに似るとしてビヨウヤナギと名付けられた。未央宮とは唐の玄宗皇帝時代に楊貴妃が住んでいた場所であり、そのヤナギの葉は白居易が「長恨歌」で楊貴妃の眉に喩えている。
・中国名は「土糸桃」「金糸海棠」「土連翹」などだが、日本では「未央柳」「美容柳」あるいは「美女柳」と表記される。ビヨウヤナギが日本に渡来したのは、宝永5年(1708年)頃とされる。
・ビヨウヤナギの開花は6~7月。花は直径4~6センチで、枝先に7~10輪ずつ咲く。5枚ある花弁はクサビ形で平らに開くが、隙間が目立つ。花弁の外に長く飛び出すのは雄しべで、花糸も花粉も鮮やかな黄色になる。雄しべは30~40本が一束となり、五束に分かれる。1本だけある雌しべの先端(柱頭)も5つに裂ける。
・花の後には長さ7ミリほどの乾いた果実ができる。円錐形で先端には萼の跡が残り、8~9月に褐色に熟すと自然に裂け、多数の種子を拡散させる。
・ビヨウヤナギの葉は長さ4~8センチ、幅1~3センチの長楕円形。質はやや薄く先端は丸みを帯び、縁にギザギザはない。枝から対になって生じるが葉柄はなく、上から見ると十字になる。葉の中心を走る葉脈は白色で、葉全体に小さな「油点」と呼ばれる半透明の点があるのも本種の特徴。
・若い枝は赤みを帯びるが、古くなると褐色となる。枝分かれは多いが常緑樹のように枝葉が密になることはない。ここでは落葉樹に分類しているが、冬季に落葉するの葉の一部。温暖化が進む昨今はほぼ常緑となる地域も多い。
【ビヨウヤナギの育て方のポイント】
・温暖な地を好み、関東以南であれば地植えで越冬できる。
・基本的には丈夫な性質を持ち、生育は容易。適地であれば放任気味でも花は咲く。
・日向を好むが極度の乾燥には弱い。土質は選ばないが、粘質で肥沃、適度に湿った土であればベスト。
・根元からたくさんの新芽を伸ばし、株立ち状に育つが、剪定は好まず、刈り込むことで樹形を乱しやすい。本種の持ち味はシダレヤナギのように垂れ下がる枝ぶりであり、刈り込みばさみでザックリと切るのはお勧めできない。
・花はその年に伸びた枝の先に咲く。このため春~初夏に刈り込むと花数は少なくなる。
・春先に株分けや挿し木で増やすことができる。
【ビヨウヤナギに似た花木】
・ヒペリカム
大輪の花を咲かせる園芸品種で、ハイドコート、カリシナム、モゼリアナムトリカラーなど多くの品種がある。
【ビヨウヤナギとキンシバイの見分け方】
ビヨウヤナギの花はキンシバイより大きい。また、ビヨウヤナギは、花の中にある「雄芯」の数が圧倒的に多い上に、花びらの外に飛び出すのが特徴。ビヨウヤナギの花弁はクサビ形になるが、キンシバイ(金糸梅)はウメに似て丸みを帯び、全開しない。葉はビヨウヤナギの方が大きい。
ビヨウヤナギの基本データ
【分類】オトギリソウ科
オトギリソウ属
常緑広葉(半落葉)/低木
【漢字】美容柳
未央柳(びようやなぎ)
【別名】ビジョヤナギ(美女柳)
キンシトウ(金糸桃)
ヒペリカム
【学名】Hypericum chinense
【英名】Chinese hypericum
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】0.5~1m
【用途】切り花/洋風庭園/公園
【値段】800円~