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ヤマザクラ/やまざくら/山桜
Wild cherry tree
【ヤマザクラとは】
・宮城県及び新潟県より西の本州、四国、九州に分布するバラ科の落葉樹。日本に自生するサクラの代表であり、本種を親とする園芸品種も多い。京都の嵐山や奈良の吉野山など各地に名所が見られ、古くから和歌に詠まれるなど日本人との付き合いは古く、法的な根拠はないがキクと共に日本の国花と見なされている。
・古来から山に咲くサクラであるため、ヤマザクラと命名された。これに対してヤエザクラなど人工的に生み出され、人里に咲くサクラはサトザクラやイエザクラと呼ばれる。なお、狭義のヤマザクラは本種のみを示すが、広義ではオオヤマザクラやカスミザクラなど山に生えるサクラ全般をいう。
・ヤマザクラの開花は3~4月。ソメイヨシノより遅くサトザクラよりも遅い。開花とともに若葉を展開させるのが本種の特徴。若葉の色は赤が基本だが、緑や黄褐色になるものなど変異が多く、葉の光沢も個体によって程度が異なる。秋の紅葉はソメイヨシノなどの園芸品種よりも総じて美しい。
・花は直径3センチほどで、色は白が基本だが、ほんのりとピンク色を帯びるものもあり、実生によって自然に変異したバリエーションがある。現代人にとっては地味に見える花だが、ソメイヨシノが普及する明治時代以前には広く国民に好まれていた。
・花は前年に伸びた枝葉の脇に2~5輪ずつ咲く。雄しべは35~40本、雌しべは1本で花の基部にあたる萼筒は長めの鐘型だが、エドヒガンなどのように膨らむことはない。また、花柱、萼、子房に毛がないのも本種の特徴。
・花の後には、直径1センチ前後のサクランボができ、5~7月になると黒紫色に熟す。一見すると美味しそうに見え、ムクドリやヒヨドリなどはこれを採食するが、苦味があって食用にはならない。
・ヤマザクラの葉は長さ8~12センチ、幅4センチほどの卵形あるいは楕円形で枝から互い違いに生じる。葉の縁には細かなギザギザがあり、葉先は尾状に細く尖る。葉の裏面に毛はないが、ソメイヨシノに比べると白っぽく見える。
・樹皮は紫褐色で横縞(皮目)が目立ち、若い木では光沢があるが成木では暗い感じになる。樹齢を重ねたヤマザクラの幹は直径1mを超えるが、その材には程良い硬さがあって加工しやすく、色合いの美しい仕上がりになるため、ザクラ材の代表とされ、家具、細工物、建築、建具、器具、燻製用のチップなどに使われる。また、耐久性があり細かな加工に向くため、浮世絵や経文の版木、和菓子の型などにも利用される。
【ヤマザクラの育て方のポイント】
・自生地は上記のとおりだが、寒さに強く、北海道南部までなら植栽できる。
・典型的な「陽樹」であり、植栽は日向に限る。日陰では綺麗に開花な開花や紅葉は期待できない。
・乾燥に強いが、肥沃な土地を好み、痩せ地では育ちが悪く、開花も望めない。
・東京の中心部にも街路樹として使われている例があるが、大気汚染や煙害に弱く、都市部にはあまり向かない。
・枝は横に張り出さず上方へ伸びるため、ソメイヨシノほど横枝が邪魔になることは少ない。しかし他のサクラ類同様、剪定に弱い上に移植も難しいため、雄大な樹形を楽しめる場所に植えるのが理想。
【ヤマザクラの品種】
・数多くの変種、園芸品種がある。野生種では北海道に多いオオヤマザクラ(エゾヤマザクラ)、西九州から南九州に分布する大輪のツクシヤマザクラなど。園芸品種ではウスゲヤマザクラ(薄毛山桜)、木の葉桜、紅南殿、兼六園熊谷が特に知られる。
【ヤマザクラに似たサクラ】
・ミヤマザクラ
北海道~九州の亜高山帯に分布するサクラ。名前は似るが花の様子は全く異なり、4~10輪がまとまって房状に咲き、花弁の先端は丸みを帯びる。別名シロザクラ。
ヤマザクラの基本データ
【分類】バラ科/サクラ属
落葉広葉/高木
【漢字】山桜(やまざくら)
【別名】シロヤマザクラ(白山桜)
【学名】Cerasus jamasakura
var.jamasakura
【英名】Wild cherry tree
【成長】早い
【移植】難しい
【高さ】10~25m
【用途】花木/公園
【値段】3000円~