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シナノキ/しなのき/科の木
Japanese Linden
【シナノキとは】
・本州の南岸を除く日本各地に分布するアオイ科の落葉高木。「信濃」の語源になったともされるが、特に北海道に多い。漢字表記は「科」が普通だが、東北地方では「榀」の字を用いる。「級の木」と記す場合もある。
・丈夫かつ剥がしやすい樹皮には耐久性があり、かつては縄をなったり、糸にして衣服を作るのに用いられた。「シナ」はアイヌ語で「縛る」の意で、これがシナノキの語源となったとする説、単に樹皮のしなやかさに由来するという説がある。
・樹形は端正であり、ヨーロッパでは同類の樹種(リンデン)が街路樹などに好んで使われる。幹がかなり太くなるため、国土の狭い日本で人為的に植栽されることは少ないものの、ハート型の葉が注目され、シンボルツリーとして推奨されることもある。
・葉は直径5~8センチほどで先端が尖り、よく見ると左右非対称になっている。成葉の表面は濃緑色で、縁にはギザギザがあり、枝から互い違いに生じる。
・シナノキの開花は5~7月。花にはレモンやライムのような甘い香りがある。一足先に開花するトチノキとともにミツバチの大事な蜜源となり、良質のハチミツが採取できる。
・花は直径1センチ程度で、クリーム色をした細長い花弁があり、基部には新芽と同じようなプロペラ状の「総苞葉」を生じる。葉の脇から伸びた花序で10輪ほどがまとまって垂れ下がる。
・花が終わると直径7ミリほどの球形の果実ができ、10月頃には淡い褐色に熟し、表面はフェルト地のようになる。
・直径は最大で2mほどになる。材は緻密かつ軽量だが耐久性は乏しい。しかし、柔らかくて加工しやすいことから、割り箸、アイスクリームのヘラ、マッチ棒、合板、木彫、箱、楽器などに利用され、アイヌの熊堀りもこれで作られることが多かった。
・木材(特に合板)として流通する「シナ」には本種のほか近縁のオオバボダイジュが含まれ、その材の色合いからシナノキをアカシナ、オオバボダイジュをアオシナと呼ぶ。
【シナノキの育て方のポイント】
・日向であれば土質を選ばずに育ち、基本的にはほとんど手がかからない。
・樹齢が若くとも開花しやすい。花には甘い香りがあって初夏の演出にはもってこいだが、ハチなどの昆虫が無数に集まる。また、オトシブミの仲間であるドロハマキチョッキリという甲虫が寄生し、本種の葉を複数枚綴った袋状の巣(揺籃)で幼虫を育てることがある。
・耐寒性はあるものの暑さにはやや弱い。都市部では葉焼けを起こしやすい。
・芽を出す力は強く、剪定に耐えるが、雄大な自然樹形を楽しむのが理想。
【シナノキの品種】
【シナノキに似ている木】
葉はシナノキより大きく、裏面に白い毛(星状毛)が密生する。(シナノキは無毛)
・オヒョウ
北海道に多いニレ科の落葉樹で、アイヌではシナノキと同様に樹皮から作った繊維を衣料とした。
・ヘラノキ
シナノキの基本データ
【分類】アオイ科/シナノキ属
落葉広葉/高木
【漢字】科の木/級の木
【別名】シナ/ライムツリー
【学名】Tilia japonica
【英名】Japanese Linden
【成長】早い
【移植】普通
【高さ】8~25m
【用途】公園/街路樹
【値段】800円~