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ザクロ/ざくろ/柘榴
Pomegranate tree
【ザクロとは】
・イランのザクロス山脈を原産地とするザクロ科の落葉樹。日本には鬼子母神の神話とともに平安時代に渡来した。当初は薬用として、現代では花や果実を鑑賞するため庭に植えられる。
・ザクロという名前は原産地名(ザクロスあるいはザグロス山脈)に由来するという説と、漢字表記の石榴(セキリュウ)の音が転訛したものとする説がある。
・ザクロは実ザクロと花ザクロに大別される。前者はより一般的な品種で一重の花が咲き、果実は食用になる。後者は庭園や社寺に見られる品種で、八重の花を咲かせるが果実は食用に向かない。
・開花期は6~7月頃で、直径5センチほどの花が枝先で次々に咲く。6枚ある朱色の花弁は薄く、シワシワになるのが特徴。花には雌雄があり、雌花は「萼筒(萼片)」と呼ばれる花の基部がやや膨らんでおり、果実の先端にこれが残る。
・果実も直径5センチほどで、9月~10月にできる。熟すと自然に裂け、中から赤い種子が顔を出す。種子の外皮(=外種皮)はクエン酸やリンゴ酸を多量に含み、食べれば甘酸っぱい。
・ザクロの外種皮は果実酒や黄色の染料に、煎じた皮はうがい薬に使われる。また、江戸時代には干したザクロの皮で鏡を磨いて回る「鏡とぎ」という職業があったという。
・葉は長さ5センチほどの長楕円形で縁は波打ち、枝から対になって生じる。あまり話題にならないが秋の黄葉は美しく、果実とのコントラストには観賞価値がある。
・ザクロの樹皮はサルスベリのように剥がれ落ち、古木になれば味わいのあるコブもできる。このため装飾用の柱に使われる。
・ザクロの断面は黄色いが、これはペレチリンというアルカロイド物質の影響によるもの。樹皮や根の皮はかつて、サナダムシの駆除に使われたが、副作用が強いため現在は使われていない。ザクロの実を食べると、人間の悪行を閻魔大王に言いつける「三尸の虫」を酔わせるという俗説はこの除虫効果に由来か。
・ザクロの実は人肉の味がするという俗信は、鬼子母神の説話によるもの。乳幼児をさらって食べる鬼子母を釈迦が諭し、人間の代わりにザクロを与えたことによる。ザクロは種子が多いため子孫繁栄などのの象徴とされることが多く、メソポタミアでも豊穣と権威のシンボルとされた。
【ザクロの育て方のポイント】
・日向を好み、日陰では花や実ができにくい。
・砂質壌土のような水はけのよい土を好むが、適応力があり、余り土質を選ばない。
・放任すると根元から「ひこばえ」が密生し、どれが主幹が分からないほどになる。適宜整理し、主幹に十分な養分がまわるようにする必要があるものの、枝には鋭い棘があり、剪定には苦労が多い。
・チャミノガ(蛾)の幼虫によって新葉を食害されることがある。いわゆる蓑虫(ミノムシ)であり、葉のない冬季に見付けて除去したい。
【ザクロの園芸品種】
・ヒメザクロ(一才ザクロ)
いわゆる矮性種で鉢植えにされることが多い。背丈があまり大きくならず、花も実も通常のものより小さい。また、通常のザクロよりも開花の時期がやや早い。
・アメリカザクロ
食べる部分がより多く、かつ甘味がある。食用としてアメリカで作出されたもの。
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ザクロの基本データ
【分類】ミソハギ科/ザクロ属
落葉広葉樹/小高木
【漢字】柘榴/石榴(ざくろ)
【別名】セキリョウ(石榴)
ジャクロ/ジャクル
【学名】Punica granatum
【英名】Pomegranate tree
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】5~10m
【用途】公園/果樹/盆栽/花材
【値段】500円~