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サンザシ/さんざし/山査子
Japanese hawthorn/Mayflower
【サンザシとは】
・中国南部を原産とするバラ科サンザシ属の落葉低木。秋に熟す果実を薬用するため、享保19年(1734年)に朝鮮半島を経由して日本へ渡来。麻布御薬園(小石川植物園の前身)で栽培されていたものが各地に広まり、庭木や盆栽として栽培される。
・サンザシの開花は4~5月で、ウメやナシに似た花が枝先に2~5輪ずつ咲く。花は直径2センチ程度で5枚ある花弁は白あるいは紅色。雌雄同株で雄しべは20本あり、5~6本ある花柱(雌しべ)の基部には白い毛がある。
・花の後にできる果実(正確には偽果=見かけ上の実で正確には萼筒、花托、子房が癒着したもの)は、直径1~2センチの歪んだ球形で、9~10月に赤く(品種によっては黄色や黒)熟す。種子は黒褐色の扁平した半月型で、一つの果実に4~6粒ずつ入る。
・サンザシの果実は生食できなくもないが、特有の香りと強い酸味があるため、ジャム、ゼリー、ジュースなどに加工するのが一般的。薬用する場合は、天日で乾燥させたものを砕き、煎じて使えば消化不良、健胃、二日酔いなどに効果があるという。
・乾燥させたサンザシの粉末を肉料理や小魚の佃煮などに入れると、具材が柔らかくなるという。果実の利用が主の場合、中国北部原産のオオミサンザシ使うごとが多い。
・葉は長さ2~7センチの卵形で大きく3~5つに裂け、先端付近の縁にはギザギザがある。表面は濃緑色で無毛だが、裏面は毛があるため淡い緑色になる。
・材は硬いがよくしなること、果実が長い間枝に残ることから、生け花の花材として使われることが多い。また枝にあるトゲを加工すれば、針として使うことができる。
・漢名は「山櫨子」あるいは「山査子」で、生薬としてのサンザシの果実を意味する。日本名のサンザシはこれを音読みしたもの。古くから中国では果実を天日干しにして生薬を作った。
・サンザシ属の花木は北米を中心に1000種以上分布するが、アメリカの国花の一つであるセイヨウサンザシは特に名高い。別名のメイフラワーはよく知られるが、これは1620年にイギリスで迫害を受けた新教徒がアメリカへ渡り、マサチューセッツ州のプリマウスに辿り着いた際に、この花が咲き誇っていたことによる。
・キリストが処刑された際、セイヨウサンザシの木で作った冠が血に染まったという伝説があり、西洋のキリスト圏ではサンザシの仲間を神聖な木としている。
【サンザシの育て方のポイント】
・日当たりがよく、栄養のある土地を好む。日陰では花が咲かないことが多い。環境が合えばよく開花、結実する。
・幹は複数が株立ち状に伸びる。枝は分岐が多くてよく繁茂する。葉の脇には小枝から変化した1センチ弱のトゲがあって扱いづらいが、放置すると大型になるため定期的に剪定した方がよい。剪定には強く、好きな形に刈り込むことができる。
・基本的には丈夫な性質を持つが、風通しの悪い場所では、アブラムシやカイガラムシの被害に遭いやすい。
・実生、挿し木、取り木で増やすことができる。
【サンザシに似ている木】
サンザシは葉の裏や花柄に毛が多いが、セイヨウサンザシにはサンザシに見られるような毛がない。
サンザシほど大きくならない低木。果実や花の美しさはサンザシに劣るとされる。
いわゆるピラカンサで、秋にできる赤い果実が印象的だが、サンザシに似た花が密生し、常緑性(常葉)であるためトキワサンザシと名付けられた。
【サンザシの品種】
・花が赤いアカバナサンザシ(実際はピンク色)や、その八重咲き品種であるアカバナヤエサンザシ(=ベニサンザシ=メイフラワー)、中国を原産とし、シベのピンク色が可愛らしいルビーサンザシ、大きめの実ができ、枝に棘がないオオミサンザシ、葉が深く裂け、裏面と花序に毛が密生するアラゲアカサンザシ(オオバサンザシ)、黒い果実がなるクロミサンザシ、樺太や北海道に分布するエゾサンザシなど多数。
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サンザシの基本データ
【分類】バラ科 サンザシ属
落葉広葉 小高木
【漢字】山査子/山楂子/山櫨子
【別名】メイフラワー
【学名】Crataegus cuneata
Sieb. et Zucc
【英名】Mayflower
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】1~3m
【用途】公園/庭木/盆栽
鉢植え/生け花
【値段】800円~