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サンショウ/さんしょう/山椒
Japanese pepper tree
【サンショウとは】
・北海道中南部~九州に分布するミカン科サンショウ属の落葉低木。「椒」は小さくて辛い実を表し、「山にある小さな辛い実」としてサンショウと名付けられた。魏志倭人伝や古事記にもその名が登場するほど古くから日本人に親しまれるが、朝鮮半島南部及び中国にも自生する。
・「サンショウは小粒でピリリと辛い」と表現され、種子が香辛料に使われることで知られる。古名のハジカミは、果実が自然に裂け、ニラ(呼名をカミという)の味に似ることにちなむが、芳香のある若菜も「木の芽」として田楽、吸い物、和え物、味噌、佃煮などの和食に添え物として使われる。自生は低山の林内だが、実用目的で民家の庭に植栽される例も多い。
・葉は5~9対の小さな葉が集まって羽根状になる。1枚の葉の大きさは1~4センチほどで、よく見ると先端がくぼんでいる。葉の縁は波打ち、ギザギザになっており、個体によっては表面の中央に明るいまだら模様が入る。若い枝は赤褐色で艶があり、鋭い一対のトゲを生じるが、古い枝や幹ではトゲがイボに変わる。
・若葉は芳香が強く、触れるだけで香りが移る。このため、刺身の飾りにサンショウの葉を添える場合、手の甲に乗せ、もう一方の手で軽く叩くことで葉の形を損なわず、その香りを楽しむことができる。サンショウの葉を乗せた煎餅やクッキーもある。
・サンショウの開花は4~5月。枝先に伸びた花序に、淡い黄色の小花が複数集まって咲く。雌雄異株で雌株には雌花が、雄株には雄花が咲くが、花山椒として佃煮などに使うのは雄花のほう。
・雌花の後には直径5ミリほどの果実ができる。できはじめは緑色で、9~10月頃に果皮が赤く熟すと自然に二つに裂け、中から黒光りした種子が顔を出す。風味が良いのは果皮が赤くなる直前。メジロ、キジバト、オオルリなどの野鳥が採食する。
・成熟した果実と果皮を乾燥させたものは「干山椒(ヒザンショウ)」、それを砕いたものがウナギの蒲焼きや焼き鳥などに使われる「粉山椒」となる。果皮は生薬「椒目」として健胃、湿布、皮膚のかぶれ、水虫などに使われる。未熟な青い実も塩漬けなどにして食されるが、サンショウにはサンショオールという毒性が含まれており、食べ過ぎは危険である。
・幹は最大でも15センチほどにしかならない。樹皮は灰褐色だが内部の材は黄色を帯び、マユミに似る。緻密で程良い硬さがあるため、杖や高級な擂粉木(すりこぎ)、寄木細工などに使われる。材にサンショウ特有の香りのあるものと、ないものがある。
【サンショウの育て方のポイント】
・暑さ、寒さに強く、北海道から九州まで植栽できる。
・やや湿気のある林内や林縁に自生するが、土地を選ばず丈夫に育つ。それほど手間を掛けるような木ではないが、放任すれば3m程度の高さになる。
・樹形は整いにくい。春先に次々に展開する若菜を、こまめに手で摘み取ると成長を抑制できる。
・小枝や葉の付け根には対になった長さ1センチ程度の棘があるため、剪定の際は怪我や衣類の損傷に留意する必要がある。また、小さな子供がいる家庭にはお勧めできない。
・雌雄異株であり、花山椒(ハナザンショウ)と称して売っている雄株は、いくら頑張っても実がならない。
【サンショウの品種】
・アサクラザンショウ
ほとんど棘がないため扱いやすい。兵庫県養父市八鹿町の朝倉で見付かったものが接ぎ木として出回り、高級品として朝廷や幕府に献上されてきた。
・ブドウザンショウ
大きな果実が房状に稔る栽培品種。和歌山県を中心に生産される。
【サンショウに似ている木】
同じミカン科サンショウ属だが、香りが悪く食用にならない。葉のある時期であれば、葉を揉んで匂いを嗅げば区別がつく。また、イヌザンショウは棘が互い違いにできるが、サンショウは対になって生じるので、落葉期にも容易に見分けられる。
・イワザンショウ
小笠原、南大東島及び北大東島に分布するサンショウの仲間。岩場で匍匐するように枝葉を伸ばして育つ。このほかフユザンショウなどケイ種が知られる。
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サンショウの基本データ
【分類】ミカン科/サンショウ属
落葉広葉/低木
【漢字】山椒(さんしょう)
【別名】ハジカミ
【学名】Zanthoxylum piperitum
【英名】Japanese pepper tree
【成長】早い
【移植】普通
【高さ】1m~4m
【用途】食用/公園
【値段】800円~