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ロウバイ/ろうばい/蝋梅
Winter Sweet
【ロウバイとは】
・中国中部を原産とするロウバイ科の落葉低木。江戸時代初期、後水尾天皇の時代(1611~1629年)に朝鮮半島を経由して日本へ渡来し、観賞用として庭園や公園に植栽される。黄色いウメと勘違いされやすいがウメの仲間(バラ科)ではない。
・日本に入った当初、ロウバイはカラウメ(唐梅)あるいはナンキンウメ(南京梅)と呼ばれていたが、後に中国名「蝋梅(蠟梅)」を音読みしてロウバイと呼ばれるようになった。
・ロウバイの開花は11~1月。厳冬期の庭を彩る貴重な花木であり、文人画の世界ではウメ、サザンカ(ツバキ)、スイセンと共に「雪中四友(雪中四花)」に数えられる。蝋細工のような黄色い花は人工的な質感で好みは分かれるものの、大変に香りが強く、年末年始を彩る切花としても人気がある。
・「蝋梅」という名前の由来には、①蝋細工のような花にウメに似た香りがあることから、②開花期が旧暦12月の「蝋月」にあたることから、③花の色が蜜蝋(ミツバチの巣を作る蝋)に似ていることから、という説がある。
・花の直径は約2センチで、やや下向きに咲く。多数の花被片が螺旋状につき、外側は透明感のある黄色に、最も内側にある小さな花被片は暗い紫色になる。花弁と萼片の区別はなく、数も決まっていない。花の中心部には分かりにくいが、5~6本の雄しべと、多数の雌しべがある。
・ロウバイの花が香るのは当然だが人間へのサービスではなく、受粉を手伝ってくれる昆虫を集めるため。ロウバイの開花期は昆虫が少ないため強い香りを放ち、昆虫に識別されやすい黄色い花となる。香りの成分はリモネン、リナロールなど。
・街中で見掛けるロウバイの多くは、全ての花被片が黄色いソシンロウバイやその園芸品種であることが多く、本来のロウバイは少ない。ロウバイの花はソシンロウバイに比べると小さくて地味であり、香りも弱い。
・果実(偽果)は長さは2センチほどの不均整な楕円形。先端に萎れた雄しべが残り、中には十数個の痩せた本当の果実が、種子はさらにその中にある。偽果に派手さはないが落葉後も枝に残るため見付けやすい。乾燥させたロウバイの偽果は生薬「蝋梅花」となり、めまいや喉の炎症などに用いる。
・葉は長さ5~15センチほどの長楕円形で先端が尖り、縁にギザギザはない。表面は光沢があるが手触りはザラザラで、ムクノキと同様、木材や爪の研磨に使うことができる。葉の大きさは多様であり、日陰など条件の悪い場所では極端に大きな葉になるものもある。
・幹は主幹が分かりにくく、複数が株立ち状に立ち上がって分岐する。樹皮は灰褐色で、樹齢を重ねると縦方向に入る皮目が目立つようになる。
【ロウバイの育て方のポイント】
・半日陰でも木自体は育つが、花を楽しむには日照が欠かせない。
・低木として扱うこともあるが成長は早く、放置すれば3~4m近くに育つ。樹形は乱れがちで整えにくく、大きな葉が鬱蒼とするばかりであり、花のない時季は魅力に乏しい。
・狭い庭で管理するには花の直後に強く剪定するか、鉢植えで管理するのがよい。
・大事にし過ぎるよりも強めに剪定して短い枝を多くした方が花数が増える。肥料などの手当てをしなくても花を咲かせることが多い。
【ロウバイの品種】
中央部も含めて花全体が黄色い品種。ロウバイに比べて花は大きめで香りが強く、庭木としての利用はより多い。
・マンゲツロウバイ(満月蝋梅)
ソシンロウバイから選別された早咲き品種で、花の黄色がより鮮やかになる。花びらが丸みを帯びていることからマンゲツロウバイと名付けた。
・ニオイロウバイ
クロバナロウバイの近縁種で花に香りがある。
ロウバイの基本データ
【分類】ロウバイ科/ロウバイ属
落葉広葉/低木~小高木
【漢字】蝋梅/朧梅(ろうばい)
【別名】カラウメ/ナンキンウメ
【学名】Chimonanthus praecox
【英名】Winter Sweet
【成長】早い
【移植】普通
【高さ】2~5m
【用途】花木/公園/切花
【値段】800円~