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リョウブ/りょうぶ/令法
Japanese clethra
【リョウブとは】
・北海道南部、本州、四国及び九州に分布するリョウブ科の落葉樹。丘陵や山の尾根に自生するが、若葉が食用となるため飢饉に備えて植栽、貯蔵、採取を「令法(りょうぼう)」によって命じたことから、リョウブと名付けられたとされる。
・別名の「ハタツモリ(畑積り)」もこれに関連し、事前に収穫量を見積もって畑に植えられたことに由来する。日本以外では韓国の済州島に自生。
・リョウブの葉は枝先に集まって互い違いに生じ、長さは5~15センチ、幅は4~10センチほどになる。楕円形で先端は短く尖り、縁には鋭く尖ったギザギザがある。裏面には細かな毛があり、白っぽく見える。秋には紅葉するが暖地では綺麗な赤にならない。
・食用となるのは芽吹いてすぐの若菜。「木の芽」と呼ばれるサンショウ同様にアクがなく、生のまま食べることもできるが、一般的には湯通し後に乾燥させたものを御飯や団子に混ぜて食べたり、天婦羅にして食べたりする。
・リョウブの開花は6~8月で、白い小花が長さ10~20センチの穂状になって咲く。一つ一つの花はよく見ればウメに似ており五弁花に見えるが、基部で合着した合弁花。開花期には夥しい数の蝶や蜂が蜜を求めて集まる。
・小花の直径は1~2センチほど。雌しべは1つで先端は三つに裂け、10本ある雄しべは花冠の外へ突き出す。花には同時期に咲くシナノキやボダイジュに通じる芳香があるが、一般的な良い香りではなく、いわゆる精臭が混じる。
・花の後には直径3~4ミリほどの果実ができ、10~11月になると褐色に熟す。果実は開花期と同じような穂状になっており、遠目からは花と実を見分けづらい。
・幹はふつう根元から分岐して株立ち状になる。樹皮はサルスベリやナツツバキのように剥離し、樹齢を重ねればカゴノキやプラタナスのような斑模様も見られる。特に老木の樹皮には独特の風情があり、冬枯れの庭にも映える。
・リョウブの材は緻密で美しく、その質感はヤブツバキに通じるものがある。しかし、大きな板は取れないため材木として流通することはほぼない。稀にろくろ細工や道具の柄、樹皮を生かした床柱や家具として好事家の間で使われる。
【リョウブの育て方のポイント】
・株立ちになること、枝葉を大きく広げることから、自然樹形を楽しむにはある程度のスペースが必要となる。
・芽を出す力が強く、剪定に耐える。
・日当たりを好むが、日照が強すぎる場所ではかえって育ちが悪い。
・土質は選ばない。
【リョウブの品種】
世界には60種以上のリョウブがあるが、日本のリョウブは本種のみであり、以下は外来のもの。
・ヒイラギバリョウブ
下の画像のようにヒイラギに似た葉になる品種
・アメリカリョウブ(ハミングバードなど)
北アメリカ東部原産の園芸品種で、日本のリョウブほど背丈が高くならないことから、一般家庭での植栽が増えている。花は淡い紅色。
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リョウブの基本データ
【分類】リョウブ科/リョウブ属
落葉広葉/低木~小高木
【漢字】令法(りょうぶ)
【別名】ハタツモリ
サルスベリ/サルナメリ
【学名】Clethra barbinervis
【英名】Japanese clethra
【成長】やや遅い
【移植】普通
【高さ】3~10m
【用途】和風庭園/公園
【値段】500円~