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ヤシャブシ/やしゃぶし/夜叉五倍子
Japanese green alder
【ヤシャブシとは】
・福島県以南の本州、四国及び九州(屋久島まで)に分布するカバノキ科の落葉小高木。太平洋側の低地または山地に多く、日本海側にはほとんど見られない。造園用に使うのは稀だが、崖地にしっかりと根を張る性質があるため、大規模工事後の緑化、土留め、海岸の砂防や風除として植栽されることがある。
・果実の表面が凸凹であるため鬼の一種である「夜叉(やしゃ)」、果実を五倍子(ヌルデの虫こぶ)の代用とするため「五倍子(ぶし)」でヤシャブシと命名された。
・多量のタンニンを含む果実は褐色の顔料とし、粉末にしたものが昭和の中頃まで「お歯黒」に使われた。「黒八丈」と呼ばれる絹布の染色もこれにより、布を濃く染めることを意味する「八汐(やしお)」が転じてヤシャになったという説もある。
・葉は幅の狭い卵形で、長さ4~10センチ、幅3~4センチほど。先端は尖り、縁には浅いギザギザがある。同属のハンノキよりも厚みあり、13~17対もある葉脈(側脈)がよく目立つ。葉は枝から互い違いに生じて密生しやすい。秋に多くの広葉樹が色付く中にあってヤシャブシの葉は黒変して落下する。冬芽や若葉にはニッキ(ニッケイ)のような芳香がある。
・雌雄同株で、新葉が展開する前の3~5月に雌雄それぞれの花を咲かせる。雄花は黄褐色をした長さ6センチほどの尾状。枝先付近から垂れ下がって花粉を飛ばす。雌花は紅色の楕円形で、雄花よりも下の枝に1~2個ずつ上向きに咲く。よく似たオオバヤシャブシは雌花の方が上にある。なお、これらの花粉は重篤な花粉アレルギーを引き起こすことが判っている。
・雌花の後にできる果実は長さ1.5~2センチの球形。10~11月になると褐色に熟し、翌年の秋まで枝に残る。中に含まれる堅い種子を蒔けば容易に増やすことができるが、マヒワ、ヒガラ、ベニヒワ、カシラダカなどの野鳥はこれをついばむ。
・幹は直立し、直径は最大で50センチほどになる。樹皮は灰褐色で厚みがあり、木が若いうちは滑らかだが、大木になると鱗状に剥離する。成長が早くて材は粗いため、材木として用いることは少ないが、稀に床柱として使われる。
【ヤシャブシの育て方のポイント】
・植栽の適地は自生地と同様であり、北海道や日本海側の寒冷地では生育が悪い。
・根に成長を促す根粒菌を共生させており、土壌を選ばず丈夫に育つ。
・がけ崩れや伐採の跡地など条件の悪い場所でも育つが、日照を好み、日当たりの悪い場所では生育が悪い。
・落葉性だが温暖な土地では落葉しないこともある。
【ヤシャブシの品種】
・ミヤマヤシャブシ
葉の裏面に毛が多い品種
関東地方南部から紀伊半島にかけた海辺に自生する種で、葉や果穂がヤシャブシよりも大きく、小枝に毛が少ない。
・ヒメヤシャブシ(ハゲシバリ)
九州を除く全国の山地に見られる低木。葉は長さ5~10センチの幅の狭い卵形で、20~26対もの側薬があり、果穂の数もヤシャブシより多い。自生は雪国の丘陵などで、急斜面に見られる。
【ヤシャブシに似た木】
・クマシデ
ヤシャブシの基本データ
【分類】カバノキ科/ハンノキ属
落葉広葉/小高木~高木
【漢字】夜叉五倍子(やしゃぶし)
【別名】ミネバリ/ガケバリ
ツチシバリ
【学名】Alnus firma
【英名】Japanese green alder
【成長】かなり早い
【移植】簡単
【高さ】5~20m
【用途】土留め/砂防/護岸工事
【値段】1000円~