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モモ/もも/桃
Peach tree
【モモとは】
・黄河上流の中国西北部を原産とするサクラ科の落葉樹。日本へ渡来した時期は不詳だが、長崎県の伊木力遺跡からモモ(毛桃)の核が出土しており、地層の分析結果から弥生時代以降には栽培が始まっていたと考えられている。
・夏に熟す果実が食用となるため果樹として商業栽培されるが、花を観賞するためのハナモモもあり、前者をミモモ(実桃)と呼んで区別する。両者とも庭木や切花用として数多くの品種が栽培、植栽されている。
・果樹用に出回っている品種は、明治時代以降に中国から入った「水蜜桃(すいみつとう)」を改良したものが多い。その元祖は岡山県の白桃で、岡山県ではモモを県の花に指定している。
・モモの開花は旧暦の3月3日頃で、新暦の3月下旬~4月上旬にあたる。花の直径は3~5センチでウメやサクラよりも大きい。5枚ある花弁は品種によって色形が異なり、白や黄色の花が咲くもの、八重きのものもある。
・花の後にできる果実は片側のみ縦に浅い溝が入り、果皮はビロード状の短毛に覆われるが、中にはネクタリンのような無毛の品種もある。果実が熟すのは6月下旬~9月だが、「冬桃がたり」という品種は11月~12月に出荷される。
・果皮の下にある果肉は白あるいは黄色で汁気が多く、熟すと甘味が出る。果肉の中心部には、不規則な皴がある薄茶色の殻に覆われた硬い核=種子が入る。
・中国ではモモを多産や生命力の象徴とし、モモの果実には霊力があるとされる。日本の雛祭りや桃太郎の鬼退治はその影響によるものだが、古事記にもイザナギノミコトが敵軍にモモの実を投げたという逸話がある。モモに邪気を祓う不思議な力があるとされるのは、ウメやサクラに比べて花が明るく、開花によって陰鬱な冬を追いやるという意味合いによる(諸説あり)。
・モモという名は、果実がたくさんできることを意味する「百(もも)」、あるいは果実が赤く熟すことを意味する「燃え実」が転訛したものとされる。学名にPersicaが含まれるのは、モモがヨーロッパに渡った際にペルシャ産と誤認されたことによる。
・葉は長さ7~16センチ、幅3センチ以下の細長い楕円形で先端が尖り、縁には細かなギザギザがある。表面は艶のある深緑だが、裏面は艶のない淡い緑色になる。葉は民間療法で浴剤とし、風呂に入れれば汗疹が治るとされた。枝は緑色か紫がかった褐色で無毛。皮目と呼ばれる白い点々が目立つ。
・樹皮は濃い灰色で、木が若いうちは滑らかだが、樹齢を重ねると不規則に剥離する。幹の直径は最大30センチほどで、柔らかな材は爪楊枝に適するとされる。また、陰干しした花は利尿に、核は「桃仁」として薬用する。
【モモの木の育て方のポイント】
・暖地を好むが寒さにも強い。ただし、開花期に寒さが厳しい地方や果実の成熟期に雨の多い地方は不向き。
・日当たりと水はけの良い場所を好み、排水性が悪いと開花や結実に影響する。土質はあまり選ばないが、砂利混じりの壌土であればなおよい。
・「桃クリ三年~」といわれるように成木になるのが早く、3~4年で収穫できるようになるが、木の寿命は20~25年と短い。
・芽を出す力が強く、剪定に耐えるが、花は前年に伸びた枝に咲くため剪定時期に注意する必要がある。
・モモは樹高が低めで枝が大きく開くため収穫しやすいが、一般的な家庭ではスペースの確保が難しい。庭木として花を観賞するには、源平桃や枝垂れ桃が望ましい。
【モモの品種】
・果実を食用する実モモの代表的な品種には、白桃、白鳳、清水白桃、大久保、倉方早生、布目早生、砂子早生、松森早生などがある。花を観賞するハナモモはこちら。
【モモに似た木】
・スモモ
・アンズ
・ウメ
・ヤマモモ
モモの基本データ
【分類】バラ科/モモ属
落葉広葉/小高木
【学名】Amygdalus persica
【別名】三千世草(みちよぐさ)
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】3~8m
【用途】果樹/切花
【値段】1000円~