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オオヤマレンゲ/おおやまれんげ/大山蓮華
Oyama Magnolia
【オオヤマレンゲとは】
・本州(新潟及び郡馬県以西)、四国、九州の山地に分布するモクレン科の落葉低木。別名をミヤマレンゲといい、深い山の広葉樹林地に自生する。
・初夏に咲く清楚な花を観賞するため、神社仏閣や庭園に類種が植栽され、茶の世界では古くからギョクセイと呼んで親しまれる。日本特産とされることもあるが、朝鮮半島や中国の東北部及び中南部にも分布する。
・「オオヤマ」は「近畿の屋根」と称される奈良県の大峰山系を意味し、同地に自生が多いこと(あるいは単に「山に生える大きな」の意)、花の形が蓮華(=ハス)に似ていることからオオヤマレンゲと命名された。命名の起源となる大峰山系の自生地は昭和3年、史跡名勝天然記念物に指定されている。
・オオヤマレンゲの開花は葉が展開した後の5~7月。枝先に長い柄を出し、直径8~10センチ弱の白い花が下向き又は横向きに咲く。花弁は9枚あるように見えるが外側にある大きな3枚は花弁ではなく「萼片」。
・花の内側には多数の雌しべと雄しべがあるが、葯(=雄しべの先端にある袋)の色や濃淡は品種や個体によって変異がある。日本に自生するのは葯が黄色いものだが、庭植えや茶華に使われるのは葯が紅いオオバオオヤマレンゲであることが多い。
・生け花の世界では春の花として扱い、促成品を用いるが、花が咲いているのは4~5日のみで、生け花として使う際はタイミングが難しい。また、花に甘い香りがあるため茶華としては好みが分かれる。
・花の後にできる果実は直径2.5~5センチの独特な袋型。9月頃に熟すと自然に裂け、オレンジ色の二つの種子が白い糸を引いて垂れ下がる。種を蒔けば増やすことができるが、寒い地方では結実しにくい。
・葉は長さ7~15センチ、幅5~10センチの丸みを帯びた卵形で枝から互い違いに生じる。縁にギザギザはなく、葉先は急激に尖り、裏面は白い毛が密生するため白っぽく見える。
・幹は白っぽい灰色で、直径は最大で10センチほど。枝はヒョロヒョロと斜めに伸び、山間では地を這うような雰囲気になることもある。
【オオヤマレンゲの育て方のポイント】
・幹や枝が細く、圧迫感がないためモクレン類の中では狭い庭に向く。ただし、樹形や枝ぶりは単調で、花のない時季は魅力に乏しい。
・湿気のある肥沃な場所を好み 乾燥地や痩せ地では開花しにくい。痩せ地に植える場合は、堆肥や腐葉土を十分に入れ、夏の暑さや乾燥を防ぐため根元を敷き藁で覆うのがベスト。また、根が粗くて定着しにくいため、植え付けの際は支柱を添えた方がよい。
・剪定に弱く、強い剪定を行うと樹形が乱れる。また、花はその年に伸びた枝に咲くため、春から初夏に剪定すると花数が減る。ただし、園芸用に出回る市販品はホオノキを台木として使っているため、幹の下の方に出る芽は樹勢を衰えさせないため、早期に掻き取るのがよい。
・病害虫の被害は比較的少ないが、梅雨明けの頃、テッポウムシが発生することがある。根元にオガクズ状のものがあった場合は園芸用の殺虫剤を使って対応する。
【オオヤマレンゲの品種】
・ミチコレンゲ
花弁が9枚以上のものを「八重咲き」とし、これを特にミチコレンゲとする場合がある。
・オオバナオヤマレンゲ
より大きな花が咲き、葯が赤紫色になる。園芸用として流通するのはたいていがコレ。
【オオヤマレンゲに似ている木】
本種とホオノキの雑種で玉水(ギョクスイ)とも。同じ頃に開花するが花が上向き(受け咲き)で、その直径は12~15センチと大きい。また、花弁はオオヤマレンゲよりもクリーム色を帯びる。
【オオヤマレンゲの仲間】
オオヤマレンゲの基本データ
【分類】モクレン科/モクレン属
落葉広葉/低木~小高木
【漢字】大山蓮華(おおやまれんげ)
【別名】ミヤマレンゲ/オオヤマレン
ギョクセイ/ビャクレンゲ
天女花
【学名】Magnolia sieboldii
ssp. japonica
【英名】Oyama Magnolia
【移植】やや難しい
【成長】早い
【高さ】1~5m
【用途】花木/公園/切花
【値段】1000円~