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エゴノキ/えごのき/野茉莉・蘞の木
Japanese snowbell
【エゴノキとは】
・北海道南部から沖縄まで日本全国の雑木林に見られるエゴノキ科の落葉高木。若い実の果皮が石鹸の代用になるためセッケンノキとして古くから実用されていたが、花や樹姿の清涼な雰囲気が評価され、近年は雑木の庭や公園に好んで用いられるようになった。日本以外でも中国や朝鮮半島、フィリピンなどの山野で見られる。
・エゴノキの開花は5~6月。鈴のような花が俯いて枝先いっぱいに咲く。新緑と白花のコントラストは独特の美しさがあり、エゴノキは時に「森のシャンデリア」と称される。
・原種は白花だが「ピンクチャイム」などのピンク花も人気があり、いわゆるシンボルツリーとして使われることもある。白花もピンク花も花弁は5枚だが、いずれもその基部で一つになっている。花の直径は2~3センチ。10本ある雄しべは黄色から褐色に熟す。
・秋にできる薄緑色の果実は長さ2センチほどの卵型で、9~10月頃に熟し、中には種子が一粒含まれる。果実は食用にならず、噛むと「えごい(えぐい)」味がすることから「エゴノキ」と名付けられた。ヤマガラやキジバトといった野鳥はこれを採食する。
・未熟な果実の果皮には、喉を刺激するエゴサポニンという有毒物質が含まれており、誤食すると胃や喉の粘膜がやられて吐血するおそれがある。かつて、痰切りの目的でエゴの実を製薬化したことがあったものの、胃への副作用があり製造は中止となった。
・現在は禁止されているが、エゴノキの果実を川上で擂り潰して流すと、魚が麻痺して浮かぶためこれを捕獲するという魚捕りの方法があった。実は染料として染物に使われる。
・別名の「ロクロギ」はロクロ細工に使われる木という意味。材が入手しやすく、かつ緻密で割れにくいため、和傘の部材(傘ロクロや柄)、糸巻き、かんじき、杖などの日用品や、こけしなどの民芸品、独楽やけん玉などの玩具、床柱や天井などの建材に使わる。なお、ロクロ細工とは、ロクロ(轆轤)をまわしながら木を加工する伝統工芸のこと。
・もう一方の別名「チシャノキ」で、歌舞伎の「伽羅先代萩」に登場するチシャノキはエゴノキのことだが、本来のチシャノキはムラサキ科に属する別種「カキノキダマシ」であり、混同されている。なお、漢字の「野茉莉」は中国名に由来する。
・エゴノキの葉は長さ4~8センチ、幅2~4センチの卵形あるいは楕円形で、先端が細く尖る。縁にギザギザがある葉と、ギザギザのない葉があり、枝から互い違いに生じる。
・樹高は最大で12mほど、幹の直径は30センチ程度になる。樹皮は黒味を帯びた灰色で、樹齢を重ねると浅い裂け目ができる。東南アジアに分布するエゴノキの仲間は、樹脂から香料「安息香」を採取するが、エゴノキの樹脂もバニラのような香りがする。
【エゴノキの育て方のポイント】
・暑さ寒さに強く、北海道南部から沖縄までの広い地域で育てられる。日向を好むが、半日陰でも育てることができる。
・自生は沢沿いの林内に多く、乾燥を嫌うため、植える場所にはあらかじめ腐葉土を入れ、保湿性を高めるのがよい。
・自然樹形は株立ち状で枝葉を大きく広げるが、強い剪定は好まず、適当に剪定すると樹形が乱れる。このため狭い庭には不向き。剪定の際は枝を必ず根元で切るようにして、自然樹形を維持する。また、花はその年に伸びた枝に咲くため、晩春から初夏の剪定は避けたい。
・「エゴノネコアシアブラムシ」に寄生されると、冬芽が変形して画像のような「虫こぶ」ができる。また、果実にはエゴヒゲナガゾウムシの幼虫が寄生することがある。
【エゴノキの品種】
・ピンク色の花が咲く園芸品種「ピンクチャイム(アカバナエゴノキ)」やベニバナエゴノキは、シンボルツリーとしての人気が特に高い。
・シダレエゴノキ
文字どおり枝が垂れ下がる品種。稀に公園や庭園に植栽される。
・タイワンエゴノキ
日本では沖縄に自生が見られる品種。材が柔らかであること以外はエゴノキと同じような性質と姿形を持つ。
【エゴノキに似ている木】
・ハクウンボク、コハクウンボク、アメリカアサガラは同じような花を咲かせ、同じような実がなる。
・果実が石鹸として使われる木にはサイカチなどがある。
【エゴノキに名前が似ている木】
・エノキ
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エゴノキの基本データ
【分類】エゴノキ科/エゴノキ属
落葉広葉/小高木
【漢字】売子の木
【別名】チシャノキ/ロクロギ
ロクロノキ/セッケンノキ
【学名】Styrax japonicus
【英名】Japanese snowbell
【成長】やや遅い
(ピンクチャイムは成長が遅い)
【移植】簡単
【高さ】7~12m
【用途】シンボルツリー/雑木の庭
【値段】1000円~