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ウルシ/うるし/漆
Lacquer tree
【ウルシとは】
・ウルシ科ウルシ属の落葉樹。樹液を塗料や接着剤に使うため古くから全国で栽培される。原産地は中国やインドなどの中央アジアと考えられてるが、縄文時代前期(約6,000年前)の遺跡からもウルシの枝が発掘されており、詳細は分かっていない。
・岩手県二戸市浄法寺町は産業用漆の産地として古くから知られ、国内で採取される漆の7割が同地で生産される。
・幹を傷付けて採取した樹液を精製し、ベンガラ(酸化第二鉄)などの顔料を混ぜたものは優良な塗料となり、江戸時代には各藩がウルシの植栽を奨励したためさかんに栽培された。
・野生化したウルシが人里近くの野山に見られる場合もあるが、日本には別種のヤマウルシが自生する。ヤマウルシは漆塗りに用いることができない。
・ウルシという名の由来には、幹に傷をつけると汁(樹液)がしたたることを意味する「閏汁」、あるいは「塗る汁」によるとする説や、紅葉の美しさを意味する「麗しの木」によるとする説がある。
・幹や枝葉を切った際に出る樹液は乳白色だが、乾燥すると黒色に変わる。樹液にはウルシオールという成分が含まれ、これに触れるとアレルギー性皮膚炎を引き起こし、人によっては水ぶくれができる。樹液を採取する専門職は「漆掻き」と呼ばれ、高度な技術が求められる。
・樹液を採取するのは6〜10月。一本の木から採取できる樹液は一夏で200ccほどで、樹勢を維持するため、木を休ませながら少しずつ採取する。
・ウルシの葉は、小葉が3~7対ほど集まって羽根状になる。小葉は先端が少し尖った楕円形でヤマウルシよりも大きい。秋になるとヤマウルシは紅葉するが、本種は黄葉するという違いもある。
・開花は初夏(5~6月)で、葉の脇から伸びた円錐形の花序に黄緑色の小花が多数集まって咲く。雌雄異株で、雄株に咲く雄花の雄しべには花粉ができるが、雌株に咲く雌花の雄しべは退化している。花弁、萼、雄しべはそれぞれ5個ある。
・雌花の後には楕円形の果実が房になってできる。直径6~8ミリで表面はツルツルしており、ヤマウルシのそれとは区別できる。8~9月に熟すと褐色になり、蝋を採取するのに使われ、炒って粉にしたものはコーヒーの代用になるという。
・ウルシは真っすぐに伸び、大きな木では直径1m近くに達する。樹皮は暗い灰色で年齢を経るに従って縦に裂け目が入る。材はニガキやハゼノキのように黄色く、柔らかだが耐水性があり、寄木細工や象嵌などに使われる。
【ウルシの育て方のポイント】
・樹液を採取する(=漆掻き)ための特用樹であって、個人の庭に植えることはほとんどない。稀に紅葉(黄葉)を鑑賞するためにあえて植栽されることがあるものの、寒冷地でなければ半端な黄葉に終わる。また、会津塗りや津軽塗りが有名なように、漆塗り用としては寒い地方の方が品質が良い。
・樹勢は強く、日向であれば土質を選ばずに育つが、放任すると他の植物に負けやすいため、周囲の草刈りをするなど人為的な管理が必要となる。
・ウルシの仲間ではスモークツリー(黄櫨)が庭木として使われる。ただし、ウルシほどではないものの、スモークツリーにもウルシオールが含まれるため、肌が敏感な人は避けた方がよい。
【ウルシに似ている木】
日本に自生するウルシで、葉はウルシよりも幅が狭くて小さい。樹高も3m程度で、より小さい。
沖縄を除く全国の山野に分布する蔓性のウルシ。綺麗に紅葉するがウルシ同様に毒性がある。
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ウルシの基本データ
【分類】ウルシ科/ウルシ属
落葉広葉/高木
【漢字】漆(うるし)
【別名】─
【学名】Rhus verniciflua
【英名】Lacquer tree
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】7~10m
【用途】漆汁の採取
【値段】800円~