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イボタノキ/いぼたのき/水蝋の木
Privet
【イボタノキとは】
・北海道から沖縄まで全国の野山に自生するモクセイ科イボタノキ属の半落葉樹。明るい林内や林縁で普通に見られるが庭木としての利用は稀。丈夫な性質を利用してライラックなどの接ぎ木の台木に使われる。
・イボタノキという名前は、この枝に寄生するイボタロウカイガラムシの雄が分泌する白蝋を、イボ取りに用いたことによる。白蝋は生薬名を虫白蝋(ちゅうはくろう)といい、止血にも用いた。この白蝋を戸に塗ると滑りが良くなることから、トスベリ、トバシリという別名もある。
・葉は細長い楕円形で縁にギザギザはなく、両端は丸みを帯びる。萌芽力が強く刈り込みに耐え、小枝が密生するため、垣根として利用されることがある。
・開花は5~7月で、その年に伸びた新枝の先に、長さ2~4センチの花序(花の集り)を出し、ネズミモチなどによく似た白い小花を10~20輪ずつ咲かせる。花は漏斗型と呼ばれるタイプの花で、その先端は四つに裂け、短い雌しべが1本、花冠から少しはみ出す程度の長さの雄しべが2本ある。
・花の後には直径5ミリほどの楕円形の果実ができる。でき始めは淡い緑色だが、11月ころになると黒紫色に熟す。果実には苦味があって食用にならず、野鳥の人気も低いため冬の間も枝に残ることが多い。年明けになるとキレンジャクなどがこれを啄む。
・イボタノキの漢字表記は「水蝋樹」だが、中国でいう水蝋樹は別種であり、誤用が定着したものとされる。
【イボタノキの育て方のポイント】
・土質を選ばず、痩せ地でも育つ。落葉樹だが暖地に植えると冬季も葉を落とさないことがある。
・半日陰でも耐えるが、日照不足の場合、葉がまばらになる。
・基本的には丈夫で病害虫に強いものの、時折ハマキムシの被害が見られる。
・剪定にはかなり耐える。
【イボタノキの品種等】
・フイリイボタ
「斑入り」であり、葉に白い模様が入る。明るい印象があるためか家庭の庭や商業施設に使われる。
・ミヤマイボタ(オクイボタ)
北海道~九州に分布する近縁種で名前のとおり標高の高い場所に見られる。イボタノキに比べると葉は幅が広くて先端が尖り、房状の果実ができる。
・オキナワイボタ
沖縄の海岸沿いに見られる常緑性のイボタノキ。イボタノキよりも葉は小さいものの樹高はより高くなる。コバノタマツバキ、コバノオキナワイボタ、アマミイボタといった別名もあるが、当地ではハグマと呼ぶ。
【イボタノキに似た木】
イボタノキの近縁種で近年、庭木としての人気が高い。イボタノキは半落葉性だが、プリペットは関東以西であれば冬でも葉を残す。
庭木として多用される常緑樹。葉の大きさは全く異なるが、花や実の様子、木の性質はイボタノキに似る。
・イボタヒョウタンボク
枝葉がイボタノキに似るスイカズラ科の落葉低木。山梨、静岡、長野の山地に自生し、ヒョウタン型の赤い実ができる。
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イボタノキの基本データ
【分類】モクセイ科/イボタノキ属
落葉広葉/低木
【別名】イボタ/イボタロウ
イボトリノキ/トバシリ
トスベリ
【学名】Ligustrum obtusifolium
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】2~5m
【用途】垣根/公園/台木
【値段】1000円~