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イヌブナ/いぬぶな/犬橅
Inu buna(Japanese beech)
【イヌブナとは】
・岩手県以南の本州、四国及び九州に自生するブナ科の落葉樹。ブナよりも海抜の低い太平洋岸の低山帯に多いがブナのように群生することは稀で、中部以北の日本海側にはほとんどない。葉や実の様子がブナに似るが、ブナとは異なる(イヌは否の意)あるいは材木としての質が劣ることからイヌブナと呼ばれる。
・葉は枝から互い違いに生じ、ブナよりも質が薄い。長さ5~10センチの卵形あるいは卵形に近い楕円形で先端は尖り、付け根は円形になる。裏面は脈に沿って伏した長い白毛が落葉期まで残り、10~14対ある葉脈が目立つ。
・イヌブナは雌雄同株で、一本の木に雄花と雌花が咲く。雄花はその年に伸びた枝の基部にある葉の脇に6~15個が密生。雌花は枝の上部にある葉の脇から2個ずつ生じ、雌しべ(柱頭)の先端は三つに裂ける。花期は4~5月。雄花は垂れ下がるため目に付きやすいが、雌花は新葉(総苞)に包まれて目立たない。
・雌花の後には長さ1~1.5センチほどの堅い果実ができ、10月頃に熟す。果実は三角に近い円錐形で、ソバの実に似るが長い柄がある。殻斗と呼ばれるドングリの帽子はブナよりも大きい。
・ブナといえば白っぽい幹の美しさが魅力の一つだが、イヌブナの樹皮は、「皮目」と呼ばれるイボ状の皺がたくさんあってザラつき、黒っぽく見える。樹高は25mほどになるが、ブナよりは低い個体が多い。また、ブナの幹は1本立ちが多いが、イヌブナは株元から複数が立ち上がる。
・イヌブナは材木として建材、船舶材、マッチの軸に使われたこともあるが、ブナに比べて材がもろく、質が劣るとされる。また、庭木としてもブナより出番が少なく、公園や庭園に使われることはあまりない。
【イヌブナの育て方のポイント】
・ブナよりも寒さに弱く、北海道では生育が難しい。(ブナは北海道でも育つ)
・湿気のある肥えた土地を好む。
・自然樹形を鑑賞するのが理想だが、先に述べたように材が比較的もろく、枝自体の重さで折れることがある。そうならないためには適宜、枝を更新する必要がある。 剪定にはよく耐え、盆栽として使われることもある。
【イヌブナに似ている木】
・ブナ
【イヌブナとブナの違い】
・ブナの樹皮は白くて滑らか。イヌブナは黒くてザラザラ。
・イヌブナの葉はブナよりも大きく、葉の裏に毛が生える。また、イヌブナは新葉が毛で覆われるがブナには毛がない。毛があるのでイヌブナになったという説もある(シデの仲間においてもイヌシデは若い枝葉に毛があり、アカシデにはない。)。
・イヌブナの果実には長めの柄があり、垂れ下がる。
・イヌブナはヒコバエ(=株元から生じる細い枝葉)を生じて株立ちになりやすいが、ブナにはヒコバエがほとんどない。
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イヌブナの基本データ
落葉広葉 高木
【漢字】犬橅/犬椈
【別名】クロブナ
【学名】Fagus japonica
【英名】Inu buna(Japanese beech)
【成長】遅い
【移植】難しい
【高さ】15~25m
【用途】雑木/盆栽
【値段】5000円~