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イヌビワ/いぬびわ/犬枇杷
Inu biwa tree (Japanese fig)
【イヌビワとは】
・関東地方以西の本州、四国、九州及び沖縄に分布するクワ科イチジク属の落葉低木。温暖な西日本の沿岸部にある丘陵や山地に多いが、種子によって容易に増え、公園の植え込みなどでも見られる。日本以外でも東南アジア(韓国、台湾)の山地に生じる。
・葉は卵形で長さ10~20センチと比較的大きく、黄葉期にはよく目立つ。葉柄も1~4センチほどあり、枝から互い違いに生じる。縁にギザギザはなく、先端が急に尖る。
・4~5月頃になるとイチジクのように外からは見えない花が球形の「花嚢(かのう」の中に咲き、花が終わって熟すと「果嚢(=果実)」になる。いずれも直径は2センチ弱。
・イヌビワは雌雄異株であり、雌株にできる実は微かに甘味があって生食できる。ただし、小さな種がたくさん入っているため、ジャムにして食べるのが普通。実の形がビワに似るがビワほど美味しくはないという意味でイヌビワと名付けられた。雄株にも赤い実がなるが硬い上に、共生する小蜂の巣になっており食用できない。果実が熟すのは11~12月頃。
・野生動物はイヌビワの実を好んで食べる。平成30年12月に当時の美智子皇后が御自身の誕生日に際し、「陛下が関心をお持ちの狸の好きなイヌビワの木でも御一緒に植えながら」赤坂の御所で余生を過ごしたい旨の文書を発表し、本種が多少注目された。
・味はイチジクに似ており、実の形状もビワというよりイチジクに近い。別名をコイチジクという。中国からイチジクが渡来する前は、イヌビワをイチジクと呼んでいたとされる。枝や葉柄を切断するとイチジク同様にベトベトした白い乳液が生じる。
・イヌビワは幹が白っぽく、古い枝の跡がブツブツになって残っていることから、落葉期でも比較的見分けやすい。
【イヌビワの育て方のポイント】
・日向を好むが、半日陰程度なら耐える。寒さにはやや弱い。
・枝葉の出方は平坦であり、樹姿を観賞するような木ではないが、剪定によって樹形を整えることはできる。
・イヌビワコバチと共生関係にあり、イヌビワコバチがいない環境では実がならない。
・イシガキチョウ(イシガケチョウ)の食樹であり、葉はその幼虫の食害に遭うことがある。
・挿し木で増やすことができる。
【イヌビワの品種】
・ホソバイヌビワ(細葉犬琵琶)
以下の画像のように、イヌビワよりも葉が細い品種で、庭木としてはイヌビワよりも好まれる。なお、ホソバイヌビワとイヌビワの雑種もあるため明確な区別は難しい。
・トキワイヌビワ(常葉犬琵琶)
常緑性のイヌビワで小笠原諸島に固有であるためオガサワライヌビワともいう。近縁のオオトキワイヌビワ(大常磐犬琵琶)は小笠原諸島の山地の岩場に自生し、より葉が大きい。
・ハマイヌビワ
奄美大島以南に分布する品種で、海岸に多い。葉脈の基部が左右非対称になっている。
・オオバイヌビワ
奄美大島以南の沖縄諸島に分布する常緑樹。東南アジアにも見られる葉の大きな品種で、イヌビワよりもゴムの木に近い印象を持つ。
・イワイヌビワ
台湾南部の沿海地に自生するイヌビワの仲間。葉は厚手で光沢があり、茎は蔓性になる。
【イヌビワに似ている木】
・ビワ
イヌビワはビワよりもはるかに樹皮が白く、葉に光沢がある。実の大きさも異なり、木を見てビワと混同することはない。
・アカメイヌビワ
沖縄、奄美諸島、台湾、フィリピンなど熱帯及び亜熱帯地方に分布する常緑樹で若い枝葉が赤みを帯びる。花は太い幹に直接咲く「幹生花」となる。
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イヌビワの基本データ
【分類】クワ科 イチジク属
落葉広葉 低木
【漢字】犬枇杷(いぬびわ)
【別名】イタビ/イタブ/コイチジク
ヤマビワ/カラビワ
【学名】Ficus erecta var. erecta
【英名】Inu biwa tree (Japanese fig)
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】2~5m
【用途】公園
【値段】800円~