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イチジク/いちじく/無花果
Fig tree
【イチジクとは】
・アラビア南部を原産とするクワ科の落葉小高木。日本に渡来したのは江戸時代初期(寛永年間)で場所は長崎。それ以降多数の品種が輸入され、本州以南で育てられる。家庭用の果樹としてはもっとも扱いやすく、庭木として親しまれる。
・聖書の中でアダムとイブがこの葉を使っていることからも分かるように、果樹の中では最も歴史が古い部類に属し、西南アジアから地中海沿岸を中心に紀元前2000年頃から栽培されてきた。
・イチジクという名前は、イチジクを意味するペルシャ語を漢名に音訳した「映日果(インジーカ)」に由来するという説、一日に一つずつ実が熟すことを示す「一熟」が転化したとする説、一か月で実が熟すことによる「一熟」によるとする説がある。
・東日本では秋のイメージがあるイチジクだが、暖地では果実の熟す時期は年に二度ある。その年の9~10月に熟したものを秋果、未熟なまま越冬して翌年の7月頃に熟すものを夏果という。
・漢字では「無花果」と書くが、花がないわけではなく、実と呼んでいる花托という部分の内側にあって見えないに過ぎない。「実」として食べているのも、じつは花の一部分にあたる。なお、日本で普及するイチジクは雌株だが、雄株がなくても熟す品種であり、種子はできない。
・イチジクの甘い実は日持ちが悪いため、生食が中心となるが、煮てジャムにしたり、缶詰にしたりして食べられる。また、近年では乾燥させた「ドライいちじく」も流通している。イチジクの実はミネラル、カルシウム、カリウムが豊富に含まれ、便秘に効くとされるが、果汁は日光に当たると刺激性を発揮する成分を含み、肌の敏感な人はかぶれることがある。
・葉は大きな手のひら状で、3~5つに裂け、枝から互い違いに生じる。落葉樹としては厚手で、枝葉を折ると白い乳液が噴出し、手がベトベトになる。イチジクの葉は痔に効果があるとされ、古代には不老長寿の果物とされた。
【イチジクの育て方のポイント】
・湿気のある肥沃な土地を好み、挿し木で容易に増やすことができる。
・他の果樹のように袋かけをする必要がなく、結実期間も長い。元来、自然授粉にはイチジクコバチという蜂の媒介が必要だったが、巷に流通する栽培品種の多くは自家受粉する。
・寒さに弱く、福島県の県北あたりが北限とされる。
・果樹の中では丈夫な部類だが、強い剪定は好まない。
・イチジクはキボシカミキリ、クワカミキリなどカミキリムシ類の食餌であり、食害によって枯れることがある。枝に産み付けられた卵からかえった幼虫は材を食べながら幹の方へ降り、樹皮に穴を空けてオガ屑のような糞と木屑を出すため、早期に捕殺した方がよい。また、小枝にオオミノガ(ミノムシ)の蓑がぶら下がることがある。
【イチジクの品種】
俗に白いチジク、赤イチジクなどというように、いろいろな品種があり、実の形や色が微妙に異なる。
・マスイドーフィン
イチジクの代表的な品種で夏と秋の二度、収穫できる。
・ブラウンターキー
同様に夏と秋に収穫できる。実の甘みが強い。
・甘太郎
蜜のように甘い実ができる。
・蓬莱柿(ホウライシ)
イチジクの中では寒さに強い。ただし夏の実はできにくい。
【イチジクに似た木】
・イヌビワ
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イチジクの基本データ
【分類】クワ科 イチジク属
落葉広葉樹 小高木
【漢字】無花果(いちじく)
【別名】ナンバンガキ(南蛮柿)
トウガキ(唐柿)
ホロロイシ
【学名】Ficus carica
【英名】Fig tree
【成長】かなり早い
【移植】普通
【高さ】3~8m
【用途】果樹
【値段】1000円~