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アキニレ/あきにれ/秋楡
Chinese elm
【アキニレとは】
・東海地方以西の山野及び川原に自生するニレ科の落葉樹。黄葉の美しさや丈夫な性質を生かし、公園や街路樹として利用されるほか、種子によって拡散したものが自生地以外の荒れ地にも育つ。日本以外では中国南部、台湾及び朝鮮半島に見られる。
・葉は長さ3~5センチ、幅2センチほどで先端が尖り、縁にはギザギザ(鋸歯)がある。落葉樹としては肉厚かつ光沢があり、秋の紅葉あるいは黄葉が美しい。枝から互い違いに生じる互生。
・ニレという木はなく、日本ではハルニレ、アキニレ及びオヒョウの三種をまとめてニレの木と呼んでいるが、一般的にニレという場合はハルニレを示すことが多い。ハルニレは開花、結実が春だが、本種は秋(9月頃)に開花、結実するため、ハルニレとの対比でアキニレと呼ばれるようになった。
・「ニレ」の語源には、「濡れ」の方言に由来し、樹皮を剥ぐと粘液が生じて幹が濡れたように見えることによるという説、あるいは朝鮮語でニレの木を意味する「ヌルナム」に由来するという説がある。
・アキニレの花はクリーム色で、その年に伸びた枝に咲く。雌雄の別がない両性花。直径4ミリほどの釣鐘型で花の先端は四つに裂け、1本の雌しべと4本の雄しべがある。
・花の後には乾いた楕円形の果実ができ、11月頃には褐色に熟す。種子には膜質の翼があり、風に飛ばされることで繁殖するが、カワラヒワやマヒワなどの野鳥が採食することもある。
・幼木の樹皮は灰褐色だが、年を重ねるにつれて鱗状に剥がれ落ち、画像のような模様ができる。樹皮の様子は個体によって様々で味わい深い。樹高は概してハルニレよりも小さい。
・ハルニレは葉が大きくて毛深いが、アキニレは葉が小さくて毛がなく、盆栽として使われることもある。盆栽界ではアキニレを「ニレケヤキ」と呼び、これに対してケヤキを「本ケヤキ」と呼ぶ。
【アキニレの育て方のポイント】
・自然分布は湿地が多いものの、乾燥や西日にも耐える。潮風や病害虫にも強く、護岸用に使われることもある。ハルニレよりも暖地向きであり、関東でも植栽できる。
・ハルニレに比べ剪定に強いが、材質は硬い。葉が小さいため刈り込んで仕上げることもできる。
・この種の落葉樹としては成長が比較的遅い。
【アキニレの品種】
・ユウゼンニレケヤキ(友禅楡欅)
春の新葉が明るい黄色になる品種。遠くから見ると黄色い花が咲いているように見えるほど鮮やかだが、次第に緑色に変わる。小さく仕立てて盆栽にすることが多い。
アキニレの基本データ
【分類】ニレ科 ニレ属
落葉広葉 高木
【漢字】秋楡(あきにれ)
【別名】ヤマニレ/イシゲヤキ
カワラゲヤキ/ニレケヤキ
【学名】Ulmus parvifolia
【英名】Chinese elm
【成長】やや遅い
【移植】ふつう
【高さ】10~15m
【用途】雑木/街路樹/盆栽
シンボルツリー
【値段】300円~