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スギ/すぎ/杉
Japanese cedar
【スギとは】
・青森県及び秋田県の県境から屋久島まで、北海道を除いた各地に広く分布するヒノキ科(旧スギ科)スギ属の常緑樹。ヒノキと共に重要な建築材とされ、日本の樹木の中では最も広い面積に植林され、庭木用に樹形を整えられたものもある。
・スギの植林は万葉集以前の時代に始まり今に至る。スギが建築材として有用視されたのは、その成長の早さや材の軽さに加え、木目の美しさや加工のしやすさによる。しかし、太平洋戦後に大量に植栽されたものは外材の輸入による市場の変化によって放置されたまま一斉に開花期を迎え、一般には花粉症をもたらす木として嫌われる傾向にある。
・山を見渡せばスギの木だらけだが、天然のスギは稀。主に太平洋岸の山地の沢沿いに生えるが、これをオモテスギと呼び、日本海側に生じるウラスギと区別する。後者は積雪によって枝葉が垂れ下がり、着地した枝から根を生じるという特徴を持つ。
・天然林として名が知られるのは秋田県米代川流域、富山県立山、高知県魚梁瀬、屋久島などで、いずれも降水量(積雪量)が多い。秋田のスギは木曽のヒノキ、青森のヒバ(ヒノキアスナロ)と並ぶ日本三大美林と称される。
・植物学的には日本のスギは上記の二種類だが、環境によって材質や枝葉の形は変化に富み、主に林業上の都合から各地の地名を冠したいろいろな種類のスギがあるとする。都道府県の木として指定されているものだけでも秋田杉(秋田)、北山杉(京都)、立山杉(富山)、神宮杉(三重)、吉野杉(奈良)、魚梁瀬杉(高知)があり、これ以外にも天竜杉(静岡)、尾鷲杉(三重)、飫肥杉(宮崎)、屋久杉(鹿児島)、智頭杉(鳥取)などが知られる。
・花粉症のイメージが強いため庭木としての需要は低いものの、石組があるような和風庭園においては生垣や点景として使われる。庭木としては、枝葉が密生しやすく、下枝が枯れにくいウラスギが好まれる。ウラスギは別名を京都の地名(芦生)にちなんで、アシウスギあるいはアショウスギ(アシュウスギ)という。京都の北山杉を仕立てた北山台杉はこの系統であり、中でも「白杉」は耐陰性が高く、優良とされる。
・スギは日本で最も寿命の長い木であり、屋久島の縄文杉は樹齢数千年とされる。また、スギは日本で最も高くなる木であり、2017年時点で日本一背が高い木とされる京都の「花脊の三本杉」は、3本中の2本が樹高60mを超える。(ちなみに直径が最大になるのはクスノキ)。戦前には秋田などに樹高50mを超す巨木林があったが、復興用材などとして伐採された。
・スギという名の由来には諸説あるが、幹がまっすぐに伸びることから「直木(スクキ)」と呼ばれ、これがスギに変わったという説、同様に上へ伸び進むことから「進む木」、これが転じてスギになったという説が根強い。漢字では「杉」「須疑」「須岐之木」などと書くが中国での「杉」はコウヨウザンを指し、スギは「倭木」あるいは「日本柳杉」と表す。
・スギが神社仏閣に多いのは、天に向かって真っすぐに伸びる姿を神の依り代としたため。日本書紀によれば「須佐之男命(スサノオノミコト)=神」が髭を蒔いてスギを、胸毛を蒔いてヒノキを、尻毛を蒔いてマキを、眉毛を蒔いてクスノキを創ったという。
・現在では日本の固有種となっているスギだが、6,500万年~180万年前までは北極圏まで広く分布しており、現代でも中国中部には変種のカワイスギが自生する。
・スギは長さ1~2センチほどの小さな葉が螺旋状に集まるが、小葉は真っすぐなものと鎌型に捻じれるものが混じる。冬季には赤褐色なって枯れたように見えるが、春には緑色に戻り、枯れた葉は枝ごと落ちる。枝葉はよく燃え、燃料や線香に使うほか、新酒ができた合図として造り酒屋の軒先に吊るす「杉玉」などの装飾にも使われる。
・雌雄同株で、早春(1~4月)には雌雄それぞれの花が咲く。雄花はクリーム色をした直径5~8ミリの俵型で、枝先にびっしりと咲く。雌花は緑色の球状で直径2センチほど。枝先に一輪ずつ咲く。
・スギの花が地味なのは、昆虫を惹きつけて受粉を媒介させる必要がない「風媒花」であるため。これが花粉症の要因であり、晴れた日に風が吹くと雄花から大量の黄色い花粉が放出される。「杉の花」は春の季語。
・受粉した雌花は小さなマツボックリのような球果になる。直径2~3センチほどでトゲに包まれ、翌年の10~11月頃に茶色に熟すと自然に裂ける。中にはコメ粒ほどの小さな種子が20~30個ほど入り、マヒワやヒガラなどの野鳥がこれを啄むが、空になった球果はその後もしばらく枝に残る。
・幹の直径は最大で5mにもなる。樹皮は赤褐色または褐色で縦に裂けて薄く剥がれ、造園用の資材や屋根を葺くのに使われる。材は縄文時代から丸木舟、道具などを作るのに使われ、現代でも土木、建築、家具、器具、船舶、箸等に用いる。酒、味噌、醤油などの樽もスギの木で作られるが、これはスギに含まれるアルコール分が風味を高めるため。
【スギの育て方のポイント】
・日向を好む陽樹だが、苗木は日陰に耐える。
・湿気が多く、かつ水はけの良い場所を好む。
・自生のものは肥沃な土地に育つが、植栽する場合は普通の土で問題ない。病害虫にも強い。
・木が若いうちは円錐形になるが、樹齢を重ねると木の頂部付近は丸くなるのが普通。枝葉は分岐して密生し、大木となるため、一般家庭で庭木として維持するには、幹を途中で止め、刈り込みを定期的に行う必要がある。
・雄花も雌花も前年に伸びた枝の先に咲くため、秋ごろに剪定すれば花は咲かない。
・刈り込みに強いが、排気ガスなどの煙害には弱く、都市部では生育不良となりやすい。
【スギに似ている木】
・ヒノキ
木は全く似ていないが一般的なイメージが似ている。成長はスギの方が早い。
公園や植物園で稀に見られる。
中国西南部に自生する落葉針葉樹で分類上はスギに近い。
公園や校庭などに多い木でスギと間違われやすいがマツの仲間。
【スギの品種】
・既述のとおり地方名が多く、正式ではないものを含めてかなりの品種がある。
台杉 苗 花粉症でも安心、場所をとらないので憧れる木北山台杉 (キタヤマダイスギ) 根巻き苗 ... |
スギの基本データ
【分類】ヒノキ科(旧スギ科)/スギ属
常緑針葉/高木
【漢字】杉(すぎ)
【別名】スギノキ/オモテスギ
【学名】Cryptomeria japonica
【英名】Japanese cedar
【成長】早い
【移植】やや難しい
【高さ】30~65m
【用途】主木、垣根
【値段】1000円~