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クロマツ/くろまつ/黒松
Japanese black pine
【クロマツとは】
・本州、四国、九州及び吐噶喇列島の海辺を中心に自生するマツ科の常緑高木。生命力が強いため、古くから長寿と繁栄を象徴する縁起の良い木として和風庭園の主役や慶事の装飾として使われるほか、砂防、造林などの実用を目的として海岸沿いに植栽されることも多い。日本以外では韓国に自生。
・単にマツあるいは松の木などという場合は、本種かアカマツを示すことが多い。両者の名前は樹皮の色合いに由来するが、樹齢を重ねると共に黒褐色になることや、両者の中間種もあって見分けの難しい場合もある。一般に西日本ではアカマツよりもクロマツが多い。
・海辺の景勝地にあるマツはこのクロマツであることが多く、名所としては天橋立(京都府宮津市)、三保の松原(静岡県静岡市)、気比の松原(福井県敦賀市)、虹の松原(佐賀県唐津市)などが知られる。なお、三保、気比、虹の松原を「日本三大松原」と呼ぶ。
・クロマツは神社仏閣に多いが、これは日本人がクロマツを神が降臨する依代(影向)として利用してきた歴史的な背景によるものであり、クロマツをこの世とあの世の境に植える境木とする考えもある。「マツ」の語源には、神を「待つ」、常緑で緑を「保つ」、葉が二「股」などが転訛したものとする説がある。
・葉は長さ10~15センチ、幅1~2ミリで2本一組になって生じる。別名の男松(雄松)は、アカマツ(女松/雌松という)に比べて葉が太くて長いことや、全体に力強さがあることに由来する。葉先は鋭く尖り、断面は半円形。
・雌雄同株で4~5月に画像のような楕円形の花が咲く。雄花は黄色で雌花は紫がかった茶色をしているので見分けやすいが、雄花の方が圧倒的に多く、雌花は見付けにくい。クロマツは風によって受粉が促される風媒花だが、自分以外の木の花粉を優先的に受粉する「他家受粉」の性質を持ち、なるべく自分の花粉を受粉しないよう雌花は雄花よりも遅く、なおかつ高い位置に咲く。
・雌花の後にできるマツボックリはアカマツよりも大きい。長さ5~7センチの卵形で先端が尖り、開花の翌年秋に熟す。食用にはならないが、イスカ、ホシガラス、ヒガラなどの野鳥は好んでこれを食べる。ちなみに未熟な緑色のマツボックリは、「新松子(しんちぢり)」「青松笠」と呼ぶ。
・樹皮はクロマツという名が示すとおり黒味を帯び、樹齢を重ねると亀甲状に剥離する。幹は曲がりやすいが、直径は最大で1.5mほどになる。材の質はアカマツと同程度で建築用材となる。一般に粘り強く、松ヤニの香りが強いが、クロマツのうちでも特に脂分が多く、色合いが美しいものは「肥松」として床柱や上がり框、民芸品などに珍重される。
・マツの仲間は世界に約200種(園芸品種を除く)。日本にはそのうちの22種が自生している。
【クロマツの育て方のポイント】
・庭木としての貫禄は抜群だが、年2回の「ミドリ摘み」「もみあげ」といった手入れが不可欠であり、手入れを怠ると庭木としての値打ちがなくなる。
・乾燥、湿気、潮風、砂地、排気ガスなどに強いため温暖な都市部や海辺の地域にはアカマツよりも向いている。ただし、典型的な陽樹(日当たりを好む)であり、日当たりの悪い場所では育てられない。また、水はけの悪い場所も苦手とする。
・近年ではマツクイムシの被害を受ける例が増えている。
・繁殖は実生により、安価なミニ盆栽も多数出回っている。
【クロマツの品種】
・葉に白い模様が入る「蛇の目松」、枝や幹が岩のようになるニシキマツ、葉の付け根が扇形になる「オウギマツ」、新しい葉の全体が黄色くなる「黄金クロマツ」、枝が垂れる「枝垂れ松」などがある。
【クロマツとアカマツの違い】
・大雑把にいうと海辺に生えているのがクロマツ、山地に生えているのがアカマツである。クロマツは幹が褐色で新芽が白いのに対して、アカマツは幹が赤茶色で新芽が茶色なので見分けが付く。なお、クロマツの葉は触れるとチクチクするが、アカマツは柔らかい。この辺りも女性的とされる。なお、両者の中間種であるアイグロマツもある。
クロマツの基本データ
【分類】マツ科/マツ属
常緑針葉/高木
【漢字】黒松(くろまつ)
【別名】オマツ(雄松)
オトコマツ(男松)/オンマツ
【学名】Pinus thunbergii
【英名】Japanese black pine
【成長】普通
【移植】簡単
【高さ】15m~40m
【用途】主木(シンボルツリー)/盆栽
【値段】300円~