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アスナロ/あすなろ/翌檜
Japanese elk horn ceder
【アスナロとは】
・北海道の渡島半島から九州の大隅半島まで広い範囲に分布する日本固有の常緑針葉樹。湿気のある肥沃な深山を好んで自生するが、人工的に植栽された例も多い。青森県及び石川県のアスナロが特に知られ、前者では県の木に指定している。
・葉はヒノキに似ておりヒバ(桧葉)と呼ばれることもあるが、一片の長さは5~7ミリでヒノキより大きくて分厚く、葉の先端は尖らない。鱗型の葉としては最大であるが、1枚の葉の寿命は9年近くにもなる。
・葉の裏側にある白い模様(気孔帯)も特徴的であり、似たようなヒバ類と見分けやすい。たくさんの枝が分岐しながら水平に広がり、樹形全体としてはピラミッド型になる。
・名前が知られているわりには庭木として植栽される例は少なく、材木としての利用が多い。江戸時代にはヒノキ、サワラ、クロベ、コウヤマキと共に木曽五木として幕府によって厳重に保護された。一般にヒバ材という場合、本種及びその変種であるヒノキアスナロを示す。
・幹は真っすぐに伸び、その直径は最大で1mほどになる。樹皮はヒノキに似た赤茶色か灰褐色で、色はより薄い。樹齢を重ねると樹皮は縦に裂けて剥離するが、その幅はヒノキよりも狭い。樹皮は屋根葺きに使われる。
・材は良質で湿気に強く、白アリに対する耐久性もあることから、土台を始めとした建築用材、風呂桶、床柱や長押などの内装、仏像、家具、津軽塗りで知られる漆器などに使われる。ヒノキと同じ香りがあり、その分布が少ない東北地方ではヒノキと同じように扱われることもある。
・アスナロという名前には、葉の厚いヒノキ、気高いヒノキという意味がある。漢字表記は「明日檜」「翌檜」。一般的には「明日はヒノキになろう」説が好まれ、材木としてヒノキより安価なアスナロを人間に例え、今はダメな自分でもいつか成功してみせるといった人生訓に使われるが、アスナロが成長してヒノキになることはない。
・雌雄同株で、あまり目立たないが4~5月に花が咲く。雄花は細長い楕円形、雌花は厚い鱗片に覆われたマツボックリ状。自生地において花粉の交配は厳冬の吹雪の中で行われるという。
・球果は直径1~1.5センチの楕円形であり、ほぼ真ん丸になるヒノキとは異なる。球果にはツノがあり、10~11月ころに熟す。
【アスナロの育て方のポイント】
・日当たりの悪い北向きの斜面に純林を作るような木であり、日陰に相当強い。特に若木は暗い林の中で育つ。
・枝葉は密生するが、幼木時は成長が遅く、剪定の必要性が低い。なおかつ剪定に弱い。
・寒さに強いが乾燥には弱い。
・病害虫の被害はほぼないが、稀にテングス病に罹患して枝葉がヒジキのようになることがある。
【アスナロの品種】
・斑入りアスナロ
葉に白い模様が入る品種
アスナロより葉や実がやや小さい品種であり、アスナロの変種と考えられている。球果には角がなく、真ん丸であることが大きな違い。枝葉から抽出したオイルがエッセンシャルオイルとして流通している。北海道南部~本州中部に分布する。
・ヒメアスナロ
ヒノキアスナロを庭木用に改良さしたもので、株立ち状に育つ。日陰の生垣や玉造りとして使うことが多い。葉に模様が入った斑入りヒメアスナロもある。
【ヒノキとアスナロの見分け方】
既述のとおりアスナロは葉が厚く、手で触れても明らかに違いが分かる。正確を期すためには裏面を確認することで、両者の気孔帯(白いところ)の形状は全く違う。
アスナロの基本データ
【分類】ヒノキ科 アスナロ属
常緑針葉 高木
【漢字】翌檜/翌桧(あすなろ)
【別名】アテ/アスヒ/シラビ
ヒバ/マキ
【学名】Thujopsis dolabrata
【英名】Japanese elk horn ceder
【成長】かなり遅い
【移植】困難
【高さ】5m~30m
【用途】公園
【値段】5000円程度