庭木図鑑 植木ペディア > アカエゾマツ
アカエゾマツ/あかえぞまつ/赤蝦夷松
Sakhalin spruce
【アカエゾマツとは】
・北海道及び本州の一部(岩手の早池峰山など)に分布するマツ科の常緑針葉樹。自生は山地だが、共に北海道を代表するエゾマツよりも性質が強く、樹高も高くならないため、盆栽、生垣、一般家庭のクリスマスツリーとして使われる。日本以外では東部シベリア、中国東北部及び朝鮮半島に見られる。
・マツ科ではあるがトウヒ属であり、クロマツやアカマツよりもトウヒに近い。葉のある若い枝に赤褐色の毛を密生して全体に赤く見えることや、樹皮が剥離した後の木肌が赤くなることから、アカエゾマツと名付けられた。ちなみに本種に対してエゾマツをクロエゾと呼ぶことがある。ただし、木肌の赤さがはっきりしないこともある。
・葉は長さ0.6~1センチ前後でエゾマツより明らかに短くて小さいため、盆栽にも好まれる。葉は全体に湾曲するが先端は尖っておらず、触れてもチクチクしない。断面は菱形になり、四面に気孔線があるるのが特徴。葉から採取された精油は、エッセンシャルオイルやアロマミストとして販売されている。
・雌雄異株で6~7月になると雄の木には雄花が、雌の木には雌花が咲く。雌花の後にできる球果(マツボックリ)は長さ5~10センチでエゾマツよりも細身。球果が熟すのは9~10月で、暗い紫色~褐色になる。
・樹形は壮大で美しく、アイヌではアカエゾマツを「女神の木」あるいは「森の女神」と呼んだという。湿原に生えるアカエゾマツは特に美しく、「ヤチシンコ」と称して珍重する(「シンコ」はアイヌ語で蝦夷を表す「スンク」が転訛したもの)。ただし、一般的には風雪にさらされる場所に育つため、自生品は片面の枝がないような変形したものが多い。
・条件が良ければ樹高30m以上、幹の直径は1~2mに達する。樹皮は樹齢を重ねると鱗状に裂けて剥がれ落ちる。成長の遅さは日本一といって過言ではないが、その分、材は緻密かつ変形しにくい。音の響きが良い優良材としてドイツトウヒと同様、ピアノやバイオリンの響板、ボートなどに使われる。材の見た目はクリーム色っぽく、エゾマツによく似る。
【アカエゾマツの育て方のポイント】
・自生地は湿原に近い場所や砂地や岩場など他の樹木が育ちにくい痩せ地であり、相当に丈夫な性質を持つが、暑さには弱く、環境が悪いと葉が黄変する。
・成長が遅いため新たに植栽したものを庭のシンボルツリーとするには時間を要する。住宅地でも歳月を経れば樹高15mほどになる。
・剪定には非常に強い。
【アカエゾマツに似ている木】
・エゾマツ
・トウヒ
|
アカエゾマツの基本データ
【分類】マツ科/トウヒ属
常緑針葉/高木
【漢字】赤蝦夷松(あかえぞまつ)
【別名】テシオマツ/シコタンマツ
シンコマツ/ヤチシンコ
【学名】Picea glehnii
【英名】Sakhalin spruce
【成長】かなり遅い
【移植】普通
【高さ】5~40m
【用途】主木(シンボルツリー)/盆栽
【値段】─(庭木としての流通は少ない)