庭木図鑑 植木ペディア > ユズ
ユズ/ゆず/柚子
Yuzu Orange(Japanese citron)
【ユズとは】
・中国の揚子江流域(雲南、チベットなど)を原産とするミカン科ミカン属の常緑樹。香りを楽しむ「香りミカン」の代表であり、庭木としては関東以西の暖地で栽培される。冬至に本種の果実を湯船に浮かべ、「ユズ湯」とすることで知られる。
・時期は不詳だが6世紀~14世紀に朝鮮半島を経由して日本へ渡来した。日本に元来の自生はないが、山口県、高知県及び熊本県では野生化したユズの木が見られる。
・ミカンの仲間としてはカラタチと共に寒さに強く、冬至の行事や料理の香り付けに使う備えとして、家庭や畑の隅に植えられることが多い。果実を実用するユズとは別に、花の観賞を目的とするハナユ(花柚)もある。
・ユズという名は中国語で酸っぱい蜜柑を意味する「柚」に由来し、かつては単に「ユ」あるいは「ユウ」と呼ばれたが、江戸時代にブンタンなどと区別するため「ユズ」になった。
・現代の日本では「柚子」と表記されることが多いが、意味合いとしては「柚酸」が近い。なお、本家の中国で「柚子」はザボンやブンタンなどを表し、ユズは「香橙」あるいは「蟹橙」と表記される。
・ユズの葉は長さ6~10センチの長楕円形で枝から互い違いに生じる。柄には画像のように幅の広い翼が見られ、葉本体(葉身)と翼の間にわずかな隙間がある。葉の先端は尖り、縁には緩やかなギザギザがある。
・ユズの開花は春~初夏(4~6月)で、直径2~3センチほどの白い5弁花が枝先近くの葉の脇に咲く。
・花弁は肉厚で香りが強く、お吸い物などの料理に使われる。ミカン類の中では大きめの花だが、花弁は風で落下しやすく、完全な形の花を観賞するのは難しい。
・果実は重さ120g前後の扁平した球形で表面はデコボコし、10月から1月にかけて熟すと鮮やかな黄色になる。冬至のユズ湯の起源は不詳だが、太陽の光が最も弱まった日に、ユズの黄色で力を補うとする説が一般的である。果汁に含まれるリモネンが皮膚を過度に刺激するため、皮のまま湯に入れる。
・果皮と果汁には香りがあり、ビタミンCを豊富に含むが、酸味が強過ぎるため、生食よりも香味料や薬味として使われることが多い。果皮が簡単に剥けて扱いやすく、柚餅子(ゆべし)、柚味噌(ゆみそ)、柚醤油(ゆびそ/ゆびしお)などの家庭料理やジャムに使われてきた。
・果実の中にある7~8個の種子は民間療法に使われ、種子を砕いたものを煎じて飲めば、下腹部の痛み、喉に刺さったトゲに効果があり、種子を黒く焼いて御飯粒と練り合わせたものは、魚の目やマメに効果があるとされた。現代では化粧水の材料に使われる。
・幹は単独で直立するが上部は枝分かれが多く、枝葉を鬱蒼と茂らせて円筒形の樹形となる。他のミカン類と同様、葉の付け根の枝や幹には、長く鋭い棘があって扱いにくい。
【ユズの育て方のポイント】
・日当たりと水はけの良い肥えた土地を好む。ただし、西日を嫌うため植え場所には留意する必要がある。
・果実には殺菌や防虫作用があり、病害虫の被害は少ない。柚子湯は、皮膚のヒビやアカギレなどに効果があるとされる。
・一般的な植栽の適地は関東地方以西だが、柑橘類の中では最も寒さに強く、東北地方でも海沿いであれば育てることができる。
・「モモ、クリ3年、カキ8年」の続きは「ウメはすいすい13年、ユズの大馬鹿18年」であり、種子から育てると、成長の勢いが強すぎるため、実がなるまでに15~18年ほどかかるとされる。早期に収穫したい場合、接木の苗を育てるのがよい。
・ユズは根が深く張り、成長力も旺盛であるため、ウンシュウミカンなど他のミカンの台木(接ぎ木の基礎となる木)として使われる。移植には労力が必要だが、不可能ではない。
【ユズの品種】
・多田錦
小粒だが種が少なくて果汁の絞りやすい品種。家庭の園芸用として広く流通している。
果実の直径が2~3センチにとどまる品種。果皮をおろしたり、そのままで蕎麦、汁、椀物の香り付けに使う。花にも香りがあるのが特徴。
・シシユズ(獅子柚子)
直径20センチ以上にもなる大きなユズという感じだが、中国を原産とするブンタンの仲間。香りが乏しく食用にも向かないが、その圧倒的な大きさとゴツゴツと外皮は話題性が高く、観賞用として稀に庭木に使われる。別名はオニユズ。
ユズの基本データ
【分類】ミカン科/ミカン属
常緑広葉/小高木
【漢字】柚子(ゆず)
【別名】ユズノキ/ユ/ユウ
ホンユ(本柚)/ユノス
オニタチバナ
【学名】Citrus junos
【英名】Yuzu Orange
(Japanese citron)
【成長】早い
【移植】普通
【高さ】3~8m
【用途】果樹
【値段】1500円~