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モッコク/もっこく/木斛
Mokkoku tree
【モッコクとは】
・関東地方南部以西の本州、四国、九州及び沖縄を原産とするサカキ科モッコク属の常緑樹で、主に太平洋岸の林内に自生する。日本庭園に植栽されることが多く和風のイメージが強い木だが、韓国や中国あるいは東南アジアにも分布。
・素人目には何の変哲もない木であり、観賞の対象にさえならないようだが、ある程度大きくなると剪定せずに放任しても樹形を整えやすいこと、樹齢を経るに従って樹姿に風格が出ることから、「庭木の王」と称される。「江戸五木」の一つにも数えられ、江戸時代の庭造りでは重要視された。(江戸五木はほかにマキ、アカマツ、カヤ、イトヒバ)
・モッコクはモチノキ、モクセイとともに「三大庭木」にも数え上げられ、これらを庭に採り入れると、景色にまとまりがでるという。モチノキと混同されやすく、江戸時代以前はモチノキの一種とされていた。
・花が咲き、実もなるが、モッコクの最大の魅力は独特のツヤツヤした葉であり、電灯のない時代は月夜に映えたことがうかがえる。葉は長さ4~7センチ、幅2センチ前後。厚めで、靴べらのような形状。
・葉は枝先に集まって生じ、付け根部分(葉柄)が赤いのが大きな特徴。また、春の新芽、刈り込み後の新芽は葉全体が赤くなることが多い。
・花の香りがラン科の石斛(セッコク)に似た木という意味で、江戸初期に木斛(モッコク)と命名された。6~7月に咲く小さな白い花は、近付いて嗅げば微かに甘い香りを感じる程度だが、ハチなどの昆虫はよく集まる。
・モッコクは雌雄異株で雄花だけが咲く株と、両性花だけが咲く株があるが、いずれも直径1センチほどの五弁花。雄花は雄しべが三重の輪になって並ぶが、両性花の雄しべは一周だけ。
・モッコクの花の後にはツバキの実を小さくしたような実ができる。10月~11月頃に赤く熟すと肉質の果皮が不規則に裂け、1~4粒の赤い種子がこぼれ落ちる。モッコクの実にはメジロ、ヒヨドリ、キビタキ、シジュウカラ、ツグミ、オオルリなどの野鳥が食べにやってくる。
・幹は最大で直径80センチほどになるが、その材は堅く緻密でシロアリにも強いとされ、床柱や木工(寄木細工、櫛、杵など)、船の櫓に利用される。
・沖縄の首里城はモッコクを建材としていたことで知られるが、材に狂いが生じやすいため一般的には建材にならない。材が赤いためアカギという別名があり、樹皮は染料として利用される。
【モッコクの育て方のポイント】
・枝葉が横に広がりやすいため、広い庭に単独で植えるのが望ましい。成長が遅いため、樹形が乱れにくく、成木では手入れをしなくても樹形が整う。しかし、一般家庭で樹高を2~3m程度に抑えながら管理するには剪定の技術やセンスが相当に必要であり、素人には手入れが難しい。
・自生は海辺に多く、大気汚染や潮風に強い。耐火性もあるため、防潮林や防風林に使うことができる。また、耐陰性が高く、日陰でも日向でも育つ。
・枝葉が密生するため目隠しになるが、画像のとおり、ハマキムシによる被害が多い。葉と葉が触れ合うような状態にあると、被害に遭いやすいため、通風の悪い場所では枝を透かすような手入れが必要となる。
・湿気のある肥沃な土地を好み、西日や冬の寒風に弱い。
・寒さに弱く、植栽の適地は東北南部以南となるが、関東北部より北では冬季の葉が見苦しくなりやすい。
・通常は雌雄同株だが稀に見られる雄木には実がならない。実の観賞や誘鳥を目的とする場合、実がなっている株を選んだ方がよい。
【モッコクに似ている木、園芸品種】
・葉に模様が入る「斑入りモッコク」や「姫モッコク」などが知られる。矮性の「ヒメモッコク」は葉にギザギザがあり、なおかつ葉柄が紫っぽい色をしている。
・モッコクとモチノキはまったくの別物だが、庭木としての位置付けが似ているためか、混同されることが多い。モッコクは葉の付け根が赤いが、モチノキは緑~黄緑色であることなどで区別できる。
モッコクの基本データ
【分類】サカキ科(モッコク科)
モッコク属
常緑広葉/高木
【漢字】木斛(もっこく)
【別名】ポップゥユス/厚皮香(中国名)
ブッポウノキ(仏法の木)
アカギ/アカモモ/アカミノキ
イク/イクキ/イイタ
【学名】Ternstroemia gymnanthera
【英名】Mokkoku tree
【成長】やや遅い
【移植】簡単(大木はやや困難)
【高さ】5m~15m
【用途】シンボルツリー/和風庭園
【値段】500円~