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ニッケイ/にっけい/肉桂
Japanese cinnamon tree
【ニッケイの特徴】
・クスノキ科クスノキ属の常緑高木。ニッケイという名前は中国名「肉桂」の音読みで、かつては中国雲南地方、ベトナムやインドネシアの原産と考えられていたが、沖縄や徳之島(鹿児島)に野生種が見付かり、学名も変更された。
・ニッケイの木が日本へ渡来したのは江戸時代だが、枝葉、樹皮、根に特有の強い香りがあり、香辛料や薬用として奈良時代から使われていたことが、史料から明らかになっている。
・昭和時代に駄菓子屋で、赤紙に束ねて売られていたニッキやニッキ水は本種の細根を利用したもの。古くは商業的に栽培されていたが、現在はより香味の高い中国産(シナニッケイ)に取って代わられた。
・京菓子の「八ツ橋」の香づけにも乾燥させたニッケイの樹皮や枝葉が使われる。ニッケイは生薬名を「肉桂皮」あるいは「桂皮」といい、漢方薬では「葛根湯」などに含まれ、頭痛、解熱、発汗、健胃に効能があるとされる。
・正月に飲む御屠蘇(おとそ)も本来はニッケイ、サンショウ、キキョウ、オケラ、ミカンの皮、アズキなどを調合した屠蘇散(とそさん)を浸した酒で、邪気を払い延命を祈念するものであった。
・「ニッキ」の印象が強くハッカと混同されがちだが、ハッカはペパーミントなどシソ科ハッカ属の葉から抽出するものであり根本的に異なる。また、シナモンケーキやシナモンティー、スパイスでお馴染みのシナモンは本来、セイロンニッケイの枝皮を乾燥させたもの。セイロンニッケイは日本でも観葉植物として親しまれる。
・ニッケイの葉は革質で厚みのある楕円形。表面には光沢があり、先端は尖る。長さは10~15センチほどで、縁にギザギザはない。クスノキなどと同様に葉脈といわれる三本の線が目立ち、裏側は白味を帯びる。葉は枝から互い違いに生じる「互生」と、対になって生じる「対生」が入り混じる。
・ニッケイの開花は5~6月。あまり目立たないもののその年に伸びた枝葉の脇に、クリーム色の小花を咲かせる。
・雌雄同株で、雄花と雌花の機能を併せ持つ両性花が咲く(諸説あり)。花の後には水分を含んだ直径1センチほどの果実ができ、11~12月頃になると黒紫色に熟す。
・ニッケイの幹は直立し、樹高10m、直径1mほどになる。樹皮は茶褐色で油分が多く、噛むと辛味がある。
【ニッケイの育て方のポイント】
・寒さに弱く、植栽の適地は関東(茨城)以南となる。
・性質はクスノキとほぼ同様。大木となるが剪定には弱く、剪定によって樹形を乱しやすい。特に寒さに向かう時期に強めの剪定をすると、枝枯れを起こしやすい。
【ニッケイとヤブニッケイの見分け方】
・ニッケイの葉は先端が尖り気味で、ヤブニッケイは長楕円に近い。また、三本の葉脈はニッケイの方がはっきりしている。ニッケイの葉は噛むと甘いが、ヤブニッケイは甘味がない。
・ニッケイとヤブニッケイは一緒になって生えていることが多い。しかし、ニッケイは上述のとおり根を「ニッキ」として利用したことで個体数が激減したが、ヤブニッケイからは「ニッキ」が採れないため、現存する個体数は圧倒的にヤブニッケイが勝る。
【ニッケイの品種と近縁種】
ニッケイの基本データ
【分類】クスノキ科/クスノキ属
常緑広葉/高木
【漢字】肉桂(にっけい)
【別名】ニッキ/ニッキノキ
シナモン
【学名】Cinnamomum okinawaense
【英名】Japanese cinnamon tree
【成長】早い
【移植】難しい
【高さ】10~15m
【用途】公園
【値段】500円~