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ツゲ/つげ/黄楊
Japanese box tree
【ツゲとは】
・本州中南部(山形県/宮城県以南)、伊豆諸島、四国及び九州の石灰岩地に自生するツゲ科の常緑低木。日本で最も緻密かつ重厚な材となり、櫛、根付、印鑑、ソロバン、木箱、将棋の駒、琵琶のバチなどを作ることで知られる。
・ツゲという名前の語源には、細かな葉が次々に出て層を成すことから「継ぐ」あるいは「次」、木目が丈夫なため「強木目木(つよきめぎ)」、梅雨の時期に葉が黄色くなって入れ替わることから「梅雨黄(つゆき)」とされ、それらが転訛したとする説がある。
・ツゲの漢字表記は「黄楊」「柘植」「柘」だが、「柘」は中国語でハリグワを意味する。別名の「ホンツゲ」はよく似たイヌツゲに対するもの、「アサマツゲ」は自生地の一つである三重県の朝熊山にちなむ。
・東日本で一般的にツゲとして庭木に使われるのはモチノキ科のイヌツゲである。本種とは異なるが、葉の大きさや形が似ているため、しばしば混同される。本種も稀に庭木として使われ、垣根や玉散らしなどに仕立てられる。
・ツゲは雌雄同株で3~4月ころ、枝先や葉の付け根にクリーム色の小花を咲かせる。花には柄がなく、一つの雌花を複数の雄花が囲むように密集して開花するが、人間にとっては観賞価値に乏しい。昆虫には人気であり、ミツバチが集まる蜜源となる。
・ツゲの葉は長さ1~3センチ、幅0.6~1.5センチほどの革質で光沢があり、枝から対になって生じる。イヌツゲの葉とは異なり、先端が少しくぼみ、縁にギザギザはない。枝は角ばり、横に広がりやすい。
・秋(10月頃)に熟す果実は先端に3本の花柱(雌しべ)が残り、中には直径1センチ弱の黒い種子が3粒含まれる。熟した果実に手を触れると種子は遠くまで飛んでいく。
・幹は最大で50センチほどになり、樹齢を重ねると樹皮は不規則に割れて鱗状の模様ができる。成長はかなり遅く、幹の直径が10センチになるのに80年近くかかるとされる。このため材は緻密で木目が細かく、良質の材木となる。
・ツゲ材の主要な産地は、鹿児島県指宿市周辺と伊豆の御蔵島であり、前者「薩摩ツゲ」から作った櫛と、後者「御蔵ツゲ」から作った将棋駒は特に品質が良いとされる。
【ツゲの育て方のポイント】
・石灰岩質の土地に自生する木であり、本来はアルカリ性の土壌を好むものの、腐葉土などが入った一般的な家庭の庭土でも問題なく育つ。
・半日陰を好むが、日向でも育つ。ただし、日向では葉の緑色が綺麗にでないことが多い。また、冬季の寒さが厳しい場所では葉の色が優れない。
・成長が遅く、生育には手間がかからないが、芽を出す力は強いため剪定もできる。
・根は真下に伸びる「直根性」であり、ある程度育った木の移植は難しい。実生、挿し木、取り木で増やすのが一般的。
【ツゲの品種/変種】
・ヒメツゲ(クサツゲ)
ツゲの矮性種で、あまり背丈が大きくならず、枝葉が密生するため、庭木としては原種よりも使い勝手がよい。葉はツゲよりも幅が細くて小さい。
・ヒメオオツゲ
葉が大きめのヒメツゲであり、訳の分からないネーミングだが、とにかくヒメツゲよりは葉が大きく、ツゲよりは葉が小さい。稀に公園などの刈込に使われる。
・チョウセンヒメツゲ
広島県や対馬列島の一部及び朝鮮半島南部を原産とするツゲの一種で葉の縁が裏面に少しだけ反り返るのが特徴。ツゲに比べて乾燥や低温に強いことから条件の悪い場所の植栽に使われる。
・オキナワツゲ
琉球列島及び台湾に分布する葉の大きな品種。乱獲によって個体数は激減している。
【ツゲとイヌツゲの違い】
ツゲは葉が左右対称に生じる「対生」であり、イヌツゲは互い違いに生じる「互生」。
両者とも葉に光沢があるが、ツゲの葉は概して黄色がかっているものが多い。またツゲの葉は縁が丸いが、イヌツゲの葉は多少ギザギザしている。
ツゲの基本データ
【分類】ツゲ科/ツゲ属
常緑広葉/低木~小高木
【漢字】柘植/黄楊(つげ)
【別名】ホンツゲ/アサマツゲ
コツゲ
【学名】Buxus microphylla japonica
【英名】Japanese box tree
【成長】かなり遅い
【移植】難しい
【高さ】1m~10m
【用途】工芸用/生垣
【値段】1500円~