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タイサンボク/たいさんぼく/泰山木
Southern magnolia/Bull Bay
【タイサンボクとは】
・アメリカ南部(ノースカロライナ州~テキサス州)を原産とするモクレン科の常緑高木。雄大な樹形と堂々たる純白の花を観賞するため、各地の公園や庭園、街路に植栽される。
・タイサンボクが日本に渡来したのは明治時代初期で、新宿御苑に植えられたのが始まりとされる。日本の気候風土に適応し、丈夫に育つため急速に普及したが、その多くはホソバタイサンボクという一品種。
・現代の漢字表記は大山木や泰山木であり、花や葉の大きさを中国山東省の名山である「泰山(タイサン)」にたとえて賞賛するものだが、名前の由来としては花を大きな盞(さかずき)に見立てて「大盞木(たいさんぼく)」とする牧野富太郎博士の説が有力。
・漢名は「荷花玉蘭」で、荷はハスの花を、玉蘭はハクモクレンを表し、いずれも花の様子が似ることによる。
・タイサンボクの葉は長さ10~25センチ、幅5~12センチの長楕円形で、枝から互い違いに生じる。肉厚で硬く、冬でも光沢のある葉は潮風や煙害に強くて耐火性もあり、都市部の公園にも適する。
・葉の裏面は褐色の毛があるため黄色っぽく見え、若い枝や冬芽を覆う芽鱗(がりん)には赤褐色の毛が密生する。
・タイサンボクの開花は5月から7月で、直径10~25センチの花が細い枝の先で上向きに咲く。花の少ない梅雨の晴れ間に咲くため、遠くから目立つが、たいていは高い場所にあって観察しにくく、一輪あたりの寿命は1~2日と短い。
・花には万人受けするような芳香があり、咲き始めは特に香りが強い。原産地のルイジアナ州とミシシッピー州ではタイサンボクを州花としている。
・花弁は乳白色で肉厚。6枚が基本だが、稀に9~12枚になる。花弁の裏側にある3枚の萼片(がくへん)も同じ色、形、大きさになるため、あたかも花弁がより多くあるように見える。
・花の中央にある軸の上部には円錐状に集まった雌しべが、下部には多数の雄しべがあり、花糸と呼ばれる底部は紫色になる。
・花の後にできる果実は小さな袋の集合体。ホオノキに似るが長さ8~15センチほどで、より小さい。10~11月頃に熟すと皮が裂け、中から鮮やかなオレンジ色の種子が1~2個、白い糸をつたって垂れ落ちる。
・種子は長さ6ミリほどの扁平な楕円形で光沢があり、種子の中心をなす核は白色になる。他のモクレン科の種子の核は黒色であり、本種はこの点においても特異である。
・幹は直立し、その直径は最大で1.3mほどになる。樹皮は薄く、それほどの特徴はないが、樹齢を重ねると鱗状に剥離し、淡い褐色になる。
【タイサンボクの育て方のポイント】
・東北から九州までの広い範囲に植栽可能だが、寒さにやや弱く、東北地方の北部では生育が悪い。寒冷地ではヒメタイサンボク(下記)の方が無難である。
・公園や寺社などの広い場所に、シンボルツリーや記念樹として用いるような木であり、狭い庭には向かない。また、枝や樹形は大振りであり、他の樹木と近接させて使うのは難しい。
・ある程度の適応力はあるが、肥沃で湿気のある土地を好み、乾燥地や埋め立て地では花が咲かないこともある。土壌の悪い場所に植える場合は、植え穴に腐葉土や堆肥をすき込んだ方が良い。
・日なたを好むが性質は丈夫であり、日陰でも育つ。ただし、北風や西日は苦手とする。病害虫についてはカイガラムシが発生する程度であり、大きな被害はない。
・枝葉が密生するため鬱蒼としやすいが、剪定をあまり好まず、剪定すると樹形が乱れやすい。剪定せざるを得ない場合は10~11月か3月に不要な大枝を元から切除する。花が咲くのは短く充実した枝の先で、翌年に向けた花芽ができるのは8~9月。
・挿し木は難しく、繁殖は実生または接ぎ木(台木はホオノキかモクレン)で行う。また、根が太くて柔らかいため、根回しや幹巻なしの移植は難しい。
【タイサンボクの品種】
・ヒメタイサンボク
タイサンボクと同じ地域に自生する品種で1937年に渡来したとされる。花は名前のとおり小型で、その数も少ない。葉はタイサンボクよりも薄く、色は明るい。裏面に白い細毛が密生するためウラジロタイサンボクという別名もある。幹は株立ち状になり、北関東以北では冬季に落葉することが多い。
・リトルジェム
四季咲き(春から秋にかけて咲く)の品種で、成長が緩やかで背丈があまり大きくならない上に、若い木でも開花するとあって近年、街路樹等として積極的に植栽されている。葉はタイサンボクよりもツヤツヤでビニールっぽく、裏面に赤味があるのが特徴。
・斑入りタイサンボク
葉にクリーム色の模様が入る品種。通常のタイサンボクは薄暗くなりやすいが、これは葉の雰囲気が明るく、洋風の建物にも違和感がない。
・ホソバタイサンボク(細葉大泰木)
その名のとおり葉の幅が狭く、裏面の毛が少ない。また、通常のタイサンボクは葉の縁が波打っているが本種の葉は平らに近く、裏側に反り返っている。
庭木としては寒さに強いホソバの方が扱いやすいため、実際はホソバタイサンボクをタイサンボクとして扱っていることが多い。
上野公園にある有名なグラント玉蘭(将軍上がりでアメリカ大統領になったグラント氏の夫人が明治12年に植栽したもの)も、ホソバタイサンボクとされる。ただし、葉の幅に関しては個体差に過ぎず、品種や変種として扱わないのが普通だが、日本には細葉が多いため、葉の幅が広い本来のタイサンボクをあえて「アメリカタイサンボク」と呼ぶ場合もある。
・ウスバタイサンボク(薄葉大泰木)
通常のタイサンボクの葉は厚紙で作ったようにしっかりしているが、マテバシイ程度の葉の厚さのタイサンボクの個体があり、それをウスバタイサンボクと呼ぶ場合がある。ただしこれも上記のホソバと同様、分類学上は品種や変種にならない。
タイサンボクの基本データ
【分類】モクレン科/モクレン属
常緑広葉/高木
【漢字】泰山木/大山木/大盞木
【別名】ハクレンボク
ギョクラン(玉蘭)
トキワギョクラン
ダイサンボク
トキワハクレン/ジョウバ
【学名】Magnolia grandiflora
【英名】Southern magnolia
Bull Bay
【成長】やや早い
【移植】難しい
【高さ】10m~30m
【用途】シンボルツリー/公園/花材
【値段】1500円~