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ジンチョウゲ/じんちょうげ/沈丁花
Winter daphne
【ジンチョウゲとは】
・中国南部及び台湾中北部を原産とするジンチョウゲ科の常緑低木。早春に咲く花の姿は地味だが、上品な甘い香りを放って春の訪れを告げる。クチナシ、キンモクセイと共に「三大香木」あるいは「三大芳香花」とされ、庭木、公園樹及び鉢植えとして親しまれる。
・ジンチョウゲが日本へ渡来したのは室町時代のことで、当初は薬用植物とされた。現在は北海道南部以南の日本各地で育てられるが、本州西南部での栽培が特に多い。「ちんちょうげ」と呼ばれることもあるが、これは昭和時代の新聞連載小説によって広まった誤用。
・名の由来には、熱帯アジアに産する香木である「沈香(じんこう)」とフトモモ科の植物でスパイスに使われる「丁字(ちょうじ)=クローブ」を兼ねるほど高い香りがあるため両者の名を合わせて「沈丁花」となったという説、単に沈香が転訛したとする説などがある。
・ジンチョウゲの漢名は「瑞香」で「めでたい香り」の意味だが他にも「紫丁香」「蓬莱紫」などの表記もある。学名にある「odora」は芳香があることを意味し、花の香が千里先まで届くことを意味する「千里花」や「千里香」という別名もある。
・茶道の心得を説く「利休百首」では、匂いがきついため茶花としてのジンチョウゲを禁じている。花の香りは暖かな日ほど強い。
・ジンチョウゲの開花は1月下旬~4月。前年に伸びた枝の先に6~20個の小花が半球状に群れて咲くのが普通だが、稀に葉の付け根にも開花する。花には花弁がなく、花弁のように見えるのは先端が四つに裂けた筒状の萼。その内側は白色だが外側は紅紫になり、花に彩を添える。
・雌雄異株だが、日本に渡来したのは雄株のみとされる。雄しべは8個あって萼の上下に4つずつ見え、中心部には退化した雌しべがある。古い民間療法では、すり潰した花でうがい薬を作り、咽頭炎の治療に用いたという。
・果実がなる雌株は稀だが、雌しべの機能が復活した両性花を持つミナリジンチョウゲがあり、日本で結実することも。果実は直径1センチほどの楕円形で枝に4~6個ずつでき、7月頃に赤く熟すが毒性があって食用にはならない。
・ジンチョウゲの種子は淡い褐色をした直径5ミリほどの球形で、かじると強い辛味がある。ちなみにジンチョウゲの仲間には同様に辛い種子のできるコショウノキがあり、関東南部以西に分布する。
・葉は厚い皮質の長楕円形で長さ4~10センチ、幅2~3センチほど。縁にギザギザはなく、枝から互い違いに生じ、葉柄は短い。表面は光沢があり、成葉では四季を通じて濃緑色になるが、裏面は淡い緑色。両面とも毛はなく、葉脈は不明瞭。
・ジンチョウゲの学名にある「Daphne」はゲッケイジュのギリシャ名に由来し、葉の形が似ることによるという説があるが、実際のところ両者はあまり似ていない。
・ジンチョウゲの葉を突き砕いた煎汁を「おでき」の吸出しに使うという民間療法があるが、茎葉の汁液には有毒なダフネチンを含んでおり、触れれば皮膚炎を、誤食すれば口内炎や胃炎を引き起こす。
・ジンチョウゲには主だった幹がなく、多数の枝が三又に分岐しながら育つ。刈り込みをしないで育てても球状の樹形となりやすく、剪定の手間はあまりかからない。
・樹高は1~2mほど、幹の直径は最大でも10センチほど。長くて強靭な繊維に富む樹皮は切れにくく、和紙の原料になる。
【ジンチョウゲの育て方のポイント】
・寒さにやや弱く、温暖な地ほど生育がよい。冬季に土の表面が凍結する地方では鉢植えで管理するか、根元にマルチングを施すのが無難。関東地方でも防寒対策が不十分であれば、短命に終わることが多い。
・生育環境にナーバスな扱いにくい植木の代表であり、軽くて腐植質に富み、適度に湿った弱酸性土、強い風や西日の当たらない暖かな半日陰地を好む。粘土質土壌、アルカリ土壌、痩せ地、過湿地、乾燥地、日差しの強い場所は嫌い、突然枯れることがある。
・幼樹は移植できるが成木の根は太くて柔らかく、切り口がふさがりにくいため移植が難しい。植栽場所は慎重に選ぶ必要がある。
・環境が合えば丈夫に育ち、若い木でも開花する。剪定に適した時期は花後1か月以内。剪定に耐えるが、一度に強く刈り込むのは避けた方がよい。
・大気汚染や病害虫に比較的強いが、風通しが悪いとアブラムシやカイガラムシ等の被害に遭う。また、一般にジンチョウゲは寿命が短く、10年ほどで枯れる上、実がならないため、挿し木で繁殖させるのがお勧め。
【ジンチョウゲの品種】
・フクリンジンチョウゲ
葉の縁が不規則にクリーム色に縁取られている品種で、原種よりも全体に明るい雰囲気となる。洋種の「ダフネメゼリウム」という品種もある。
・シロバナジンチョウゲ
花の内部も白い品種で、その清楚な雰囲気から人気が高い。コショウノキに似るが、花弁のような萼筒部分に細毛がない。
・ウスイロジンチョウゲ
花の外側が淡い紅色になる品種。
【ジンチョウゲに似ている木】
・ジンチョウゲの仲間は世界に広く分布し、約450種類もあるという。
強靭な樹皮を紙の原料とするものが多く、日本ではミツマタ、ガンピ、ゴモジュ、オニシバリ(ナツボウズ)、ナニワズ、カラスシキミ、コショウノキなどが知られる。
オニシバリはキバナジンチョウゲ(黄花沈丁花)と名乗って販売されることもあるが、これらの花には香りがない。
・ハマジンチョウ(モクベンケイ)
九州、沖縄、三重県の島嶼部に見られるゴマノハグサ科のの常緑低木。浜辺に自生し、花や葉の様子がジンチョウゲに似るため浜沈丁と名付けられた。岩場に自生し、果実を海面に浮遊させて増えるが、開発によって個体数が減っており、絶滅が危惧されている。
【ジンチョウゲに名前が似ている木】
ハクチョウゲの仲間で紫がかった花を咲かせる。名前が似ているだけでジンチョウゲとは関係ない。
ジンチョウゲの基本データ
【分類】ジンチョウゲ科
ジンチョウゲ属
常緑広葉/小低木
【成長】遅い
【漢字】沈丁花(じんちょうげ)
【別名】ジンチョウ/チョウジ
チョウジグサ/リンチョウ
チンチョウゲ/センリバナ
センリコウ/ズイコウ(瑞香)
【学名】Daphne odora
【英名】Winter daphne
【移植】難しい
【高さ】1m~2m
【用途】庭木/公園/街路樹
鉢植え/生け花
【値段】600円~