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シキミ/しきみ/樒
Japanese star anise
【シキミとは】
・宮城県~新潟県以西の本州、四国、九州及び沖縄の山林内に自生するシキミ科(あるいはマツブサ科)の常緑樹。光沢のある葉が美しく、サカキやヒサカキと同様、神仏事に使う木として、江戸時代から寺社や墓地等に植栽される。
・シキミは別名をハカバナ(墓花)という。これは、木全体に強い香りと毒性があり、乾燥させた葉や樹皮を線香(抹香)の原料にしたことや、土葬の時代、動物に掘り起こされないよう、シキミの枝葉を共に埋葬したという風習によるもの。
・地方によっては縁起の悪い木として庭に植えるのをタブー視する。秋の彼岸に咲くヒガンバナにもハカバナという別名があり、同じように扱われる。
・葉は楕円形で枝から互い違いに生じるが、密生して鬱蒼とすることから、漢字表記は「櫁」となった。葉の縁にギザギザはなく、葉脈もはっきりしない。
・シキミの枝葉には精油を含み、切ると芳香を放つ。これに不浄を清める作用があるとし、地方によっては正月にマツの代わりに、あるいは節分にヒイラギの代わりに使う。
・シキミの開花は春(3~4月)で、葉の脇にクリーム色の小さな花を咲かせる。花弁と萼片が見分けにくく、花弁が少し捻じれるのが特徴。花の直径は2~3センチほど。花の多い年と少ない年の差が激しい。
・咲き始めの花は雌花の性質を持ち、その後、同じ花のシベが変化して雄花に変わる「雌性先熟」という性質を持つ。
・地方によっては本種をハナノキと呼ぶが、カエデの仲間であるハナノキとは関係がなく、仏花代わりに墓前へ供えることに由来する。
・シキミは葉や樹皮など全草に有毒成分(アニサチン、イリシン、ハナノミン)を含み、秋にできる果実も有毒であるため「悪しき実」とされ、これが転訛しシキミと呼ばれるようになった。(このあたりはアセビ(馬酔木)と同様だが、「臭き実」(クサキミ)がシキミに転じたという説もある。)
・果実は袋状の8つの果実が集合した星型で、9月頃に熟すとそれぞれから一粒ずつ薄茶色の種子が弾け飛ぶ。中華料理などに用いるスパイス、八角(大茴香)は同じシキミ属のトウシキミの果実で独特の芳香を放つが、シキミの果実には芳香がない。
・有毒植物は日本に数多いが、なぜか本種のみが、いわゆる毒劇法(毒物及び劇物取締法)において劇物に指定されている。シキミの実を誤って食べると中枢神経が麻痺し、嘔吐、下痢、痙攣、呼吸困難、意識障害が起き、最悪の場合は死に至る。有毒成分は種子よりも果皮に多く、血液の凝固を促進する働きも持つ。
【シキミの育て方のポイント】
・寒さにやや弱く、植栽の適地は宮城、石川以西となる。湿気のある肥沃地を好むが、あまり土質を選ばずに育ち、病害虫にも強い。
・成長が遅めで、剪定の手間があまりかからない。剪定には強く、好きなように刈り込むことができるが、樹液にも有毒成分があるため注意する必要がある。
・日向を好むが、日陰にも強い。(ただし枝葉が間延びする)
・果実に毒があるが、興味深い形をしている。子供が手を出しかねないため小さな子供やペットがいる家庭では植えないほうが無難。ただし、頻繁に剪定していれば花や実はならない。
【シキミの品種】
・ベニバナシキミ
学名はイリキウムランセオラツムで、濃いピンクの花を咲かせる。庭木としては通常のシキミよりも使いやすい。他にも中国や台湾を産地とするピンク系のシキミや赤い花を咲かせるセイヨウシキミなどがある。
・フイリシキミ(斑入り櫁)
葉に白い模様が入る品種で、模様の入り方によってさらに品種を分類することがある。
【シキミに似ている木】
ミカン科の常緑樹で葉がシキミに似るとされるが、葉はシキミより大きく、質感は全く異なる。花や実もシキミとは大きく異なり、筆者には名前以外に共通点が見付けられない。
・サカキ
同じように神事に使われるため混同されることがあるものの、葉、花、実それぞれに共通するものは何もないため、慣れれば容易に見分けられる。
シキミの基本データ
【分類】シキミ科(マツブサ科)
シキミ属
常緑広葉/小高木
【漢字】樒/櫁/梻(しきみ)
【別名】コウノキ/コウノハナ
コウシバ/ハカバナ
ハナノキ/シキビ
ハナサカキ/ハナシバ
莽草(しきそう)
【学名】Illicium anisatum
【英名】Japanese star anise
【成長】やや遅い
【移植】やや難しい
【高さ】2~6m
【用途】垣根/公園/墓苑/仏花
【値段】800円~