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サルココッカ/さるここっか
Sarcococca tree
【サルココッカとは】
・ヒマラヤ地方(インド東北部、ネパールなど)、中国南部及び東南アジアの各地を原産とするツゲ科の常緑低木。一般的にはあまり馴染みのない木だが、日陰や害虫に強い性質を持ち、欧米ではシェードガーデン(日陰の庭)の低木として人気が高い。
・花の少ない2~3月に咲くこと、開花期間が長いこと、そしてキンモクセイ、ジンチョウゲ、クチナシなどと同じように花に強い香りがあることから、日本でも近年は都市部のビルや飲食店の植栽、洋風庭園の縁取りなどに使われる例が増えつつある。
・サルココッカという印象的な名前はギリシャ語で「果肉」を意味するsarkosと「液果」を意味するkokkosを合わせたもので「肉質の液果」を表す。サルスベリ、サルトリイバラ、サルナシなどとは違い、猿には関係がない。
・サルココッカの葉は長さ2~4センチ、幅0.8~1.5センチほどの長楕円形で先端が尖り、ツゲとは異なる。表面は濃緑色で光沢があって観葉植物のような雰囲気を持ち、日陰でも美しさを保つ。厚い皮質で水持ちがよいため、切花として使う例もある。花は他の香木より観賞価値が乏しいものの、葉の様子は他を凌ぐ。
・花は新しい枝の先端や葉の付け根で垂れ下がるように咲く。雌雄同株だが花には雌雄があり、同じ枝に雄花と雌花がそれぞれ咲く。花の香りは香水やハチミツに喩えられるが、人によっては臭いと感じる。
・トキワマンサクのように白いシベが目立つのが雄花。緑色の雌花はその下の方でひっそりと咲き、クリーム色の柱頭2~3本がわずかに顔を出す。
・雌花の後には緑色の果実ができ、翌年の10~11月になると赤から黒紫色に熟す。果実にも甘い香りがあり、ヒヨドリなどの野鳥は好んで食べるが、食用にはならない。
・サルココッカの果実は長さ8ミリほどで、柱頭の名残がツノのようになる。熟すのに時間がかかるため、花と果実を同時に見ることができるのも本種の長所。
【サルココッカの育て方のポイント】
・品種によるが-3℃までは耐寒性があり、品種によっては東北地方や北海道の南部でも地植えで越冬し得る。
・半日陰地を好み、一日中、日が当たらないような建物の北側にも植栽できる。華やかな花木を植えられないような場所の植え潰しに最適。土質は選ばないが、排水性と保水性が両立する適度な湿地かつ腐植質に富む場所を好む。
・病害虫の被害はほとんどなく、全般的には育てやすい木といえる。ただし、強い日差しや乾燥地は苦手であり、日照が強いと葉焼けを起こす。
・成長が遅い(1年に10センチほど伸びる)ため樹形が整いやすく、剪定等の手間はかからない。やや高めの地被(グランドカバー)として使うのが普通だが、樹高2m近くになる品種(コンフーサ)は垣根としても使える。
・成長が遅いものの、適地であればこぼれ落ちた種子から容易に発芽して増殖する。また、挿し木で意図的に増やすこともできる。
【サルココッカの品種】
・一般的に出回っているのはフミリスとコンフーサ(コンフサ、コンフューサとも)で、コンフーサは葉が細長く、フミリスよりも早い時季に咲く。ウィンタージェムは香りが控えめだがより背丈が低くて扱いやすい。また、葉に黄色い模様の入る斑入り種もある。
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サルココッカの基本データ
【分類】ツゲ科/サルココッカ属
常緑広葉/低木
【漢字】─(さるここっか)
【別名】ハナツゲ
ヤセンカ(野扇花)
【学名】Sarcococca
【英名】Sarcococca tree
【成長】遅い
【移植】簡単
【高さ】0.3~2m
【用途】日陰の庭/グランドカバー
【値段】800円~