庭木図鑑 植木ペディア > イヌツゲ
イヌツゲ/いぬつげ/犬黄楊
Japanese Holly
【イヌツゲとは】
・本州、四国及び九州に分布するモチノキ科の常緑低木。自生は岩場や山地の尾根沿い、林縁などだが、光沢のある濃緑の葉が上品な雰囲気を持ち、芽を出す力も強いため、庭木、垣根、盆栽などに多用される。
・印鑑、櫛、彫刻、将棋の駒の材料となるツゲ科のツゲ(=ホンツゲ)と似ているため混同されがちだがツゲとは異なり、ニセツゲやヤマツゲという別名がある。「イヌ」はは材が役に立たない、あるいは「~とは異なる」という意味合いだが、庭木としての利用はイヌツゲの方が圧倒的に多い。
・イヌツゲの葉は楕円形~長楕円形で質はやや厚く、枝から互い違いに生じる。長さ1~3センチ、幅0.6~2センチで葉先はわずかに突出し、縁には細かなギザギザがある。表面は濃緑色で両面ともに無毛だが、裏面には腺点と呼ばれる小さなツブツブがある。
・イヌツゲの開花は5~7月。その年に伸びた枝葉の脇に淡いクリーム色をした直径3ミリほどの花を咲かせる。雌雄異株で花には雄雌あるが、雄花は2~6個がまとまって咲き、1個ずつしか咲かない雌花よりも目立つ。
・花は雌雄とも花弁、萼片、雄しべが各4個ずつあり、雄花の雄しべは花粉があるが、雌花の雄しべは退化して花粉が付かず、半球状の雌しべ(柱頭)が雄花よりも目立つ。
・雌花の後には直径6~7ミリほどの球形の果実ができ、10~11月になると黒紫色に熟す。赤い果実が多いモチノキ科の中では珍しいが、赤い果実がなるアカミイヌツゲや、黄色い実がなるキミノイヌツゲもある。
・果実は汁気が多く多少甘味があるが、食用にはならない。中には灰白あるいは淡い褐色の種子が2~4粒入っており、これを蒔けば比較的容易に増やすことができる。
・イヌツゲの果実は野鳥にあまり人気がないが、他に食べるものがなくなるとオナガ、ムクドリ、メジロ、ツグミの仲間などがやってきて、これを採食する。
・主になる幹は真っすぐに伸び、直径は最大で60センチ位になる。樹高は3~5m程度のものが多いが、稀に10mを超す大木もある。
・樹皮はやや紫を帯びた灰白色で滑らかだが、樹齢を重ねると皮目が明瞭になる。材木としての用途は稀で、鳥糯(とりもち)に使う程度。
【イヌツゲの育て方のポイント】
・耐寒性が高く、日本全国に植栽できる。また、大気汚染や潮風に強いため、多少環境の悪いところでも育てられる。
・本来は日当たりがよく、腐植質に富む火山灰土のある場所を好むが、適応力が高く、日陰や痩せ地でも育てることができる。ただし、日陰では枝か間延びしたり、下枝が枯れ上がることがあり、極度なやせ地では突然、葉を落とすことがある。また、乾燥や湿気には強いが、夏の厳しい西日には弱い。
・枝が柔軟であることや刈込に強いことから、垣根やトピアリーに適している。ただし、成長は遅いため、弱めの剪定を繰り返すのがよい。また、厳冬期と酷暑期に剪定すると樹勢が弱る。
・葉が小さいため刈り込み後の掃除は面倒であり、下に花壇などがある場合は相当に手間がかかる。
・病害虫に強いが、枝枯病あるいは乾燥によって枝が部分的に枯れ込むことや、ハマキムシの食害によって葉が見苦しくなることがある。
【ツゲとイヌツゲの違い】
葉の色で見れば、一般にイヌツゲは濃緑、ツゲは黄緑色と言ってもよさそうだが、葉の色合いは個体差があるため、あまり参考にならない。それよりも葉の出方が確実に異なる。イヌツゲ(左)は葉が互い違いに生える「互生」で、ツゲ(右)は葉が同じところから対になって生える「対生」となっている。また、イヌツゲは葉の縁に細かなギザギザがまばらにあるが、ツゲにはそれがなく葉先が少しくぼむ。
【イヌツゲの品種】
葉が大きいオオバイヌツゲ、葉が小さいコバノイヌツゲ、葉が丸くて反り返るマメツゲ、新芽の黄色が際立つキンメツゲ、葉に模様が入る斑入りイヌツゲ、枝が箒状に伸びるホウキイヌツゲ(スカイペンシル)、背が高くならず枝が横へ伸びるハイイヌツゲ等が古くから知られる。
最近では葉の緑色が濃いヒレリーという品種や、年間を通じて黄色い葉を持つゴールデンジェム、枝にうねりがある雲竜ツゲ(スパイラルドラゴン)といった品種に人気がある。
特にゴールデンジェムは背丈も大きくならないため一般家庭での利用に適する。その他、ナガバイヌツゲ、ツクシイヌツゲ、シマイヌツゲ、キッコウツゲなど約25にも及ぶ品種がある。
【キンメツゲとイヌツゲの見分け方】
キンメツゲはイヌツゲよりも葉が細かく、小枝が多いため、密度の高い垣根を作ることができる。また名前のとおり新芽の黄色がイヌツゲよりも際立っている。(イヌツゲも新芽は黄色い)
【イヌツゲに似た植物】
・ツルツゲ
中部地方以北の本州に分布する常緑低木。亜高山帯の針葉樹林内で地を這うようにして育つ。葉はツルから互い違いに生じる互生で形もイヌツゲに似るが赤い実がなる。
イヌツゲの基本データ
【分類】モチノキ科/モチノキ属
常緑広葉/小高木
【漢字】犬黄楊(いぬつげ)
【別名】ニセツゲ/ヤマツゲ
コバモ/ヤドメ
【学名】Ilex crenata
【英名】Japanese Holly
【成長】遅い
【移植】簡単
【高さ】2m~15m
【用途】垣根/公園/トピアリー
【値段】800円~
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j-m (日曜日, 21 1月 2018 19:09)
我が家には貴婦人というイヌツゲがあります。とても優雅な名前で黄色の斑入りが気に入っています。貴婦人の最終樹高はどれくらいになりますか?
短く刈り込んでも良いでしょうか?
uekipedia管理人 (日曜日, 21 1月 2018 19:36)
苗木を購入して植えたのでしたら、背丈を超すまでに二十年くらいはかかると思います(環境や管理によりますが)。それよりも、今、この寒い時期に短く切るべきではありません。もう少し暖かくなるまで待ちましょう。真夏を除く温暖期でしたら好きなように切り詰めても大丈夫です。どうしても今、刈り込みたいのでしたら、気になる部分だけ、2,3センチくらいのカットに留めた方がよいと思います。
j-m (日曜日, 21 1月 2018 20:12)
背丈を超すまでに20年もかかるとは、イヌツゲは成長の遅い木なんですね。好きな高さで刈り込んで良いとの事ですので安心しました。有り難うございました。
イヌツゲ? (土曜日, 02 2月 2019 17:55)
今の時期濃い緑色なので、イヌツゲかなと思います。
垣根にしていますが、所々葉が生えなくて穴が開いた状況になっております。開きを無くすのにはどうすればよろしいですか?
管理人 (土曜日, 02 2月 2019 18:03)
新しい株(苗木)を買ってきて、既存の株の間に植え、かつ、周りの枝を「シュロ縄」や盆栽用の銅線で誘引するというのが一般的だと思いますが、いづれも穴が目立たなくなるには相当な時間がかかります(穴の大きさによりますが5年とか・・・)。私だったら、面倒ですが、古いのを数株掘り起こし、隙間がなくなるよう整列させなおし、四角く剪定してまとめます。
とらちち (火曜日, 12 3月 2019 18:12)
久ぶりに実家の家の草木をきれいにしようと庭を見渡していたら、今までは手入れしなくても元気だったツゲの木が、主枝の部分も穴が開き、中がぐずぐずになってしまっていました。それでもその先の葉はまだ青く茂っています。虫のせいでしょうか?剪定は1年前に行いましたが、その後放置していました。ご助言をお願いします。
管理人 (水曜日, 13 3月 2019 18:59)
キクイムシか枝枯れ病でしょう。従来は病害虫が少ないとされていましたが、温暖化の影響か、イヌツゲも被害が増えているようです。薬剤での対処療法はできますので、思い入れのある木なら、専門家に見せた方がよいかもしれません。上述のように成長が遅いので、鑑賞に耐えるような樹姿に戻すには時間がかかります。
ヘルプ (土曜日, 18 7月 2020 20:10)
はじめまして。
垣根として約10mのイヌツゲがあります。冬以外、何度もハマキムシの被害にあいます。症状が現れる度に、ベニカファインやオルトラン水和剤、カルホス乳剤で消毒していますが、一方に被害が減りません。
予防なども含め、何かできることはありますでしょうか?
アドバイスをお願い致します。
管理人 (日曜日, 19 7月 2020 11:22)
私も同様のことに悩まされることが多いですが、この時季になってしまうとイタチごっこするしかありません。
本来は冬季に対策をするのが一番だと思います。石灰硫黄合剤、マシン油乳化剤で調べてみてください。ただし、庭石や池、ブロック塀などが近くにある場合、それらを保護してから使わないと悲惨なことになります。
ヘルプ (日曜日, 19 7月 2020 13:03)
早速のご返答、アドバイスありがとうございます。
やはり石灰硫黄合剤やマシン油乳化剤は効き目があるのですね。調べている中ででてきましたが、扱いづらさや強い異臭とあり断念していました。その領域に踏み込むときがきたのかもしれません(笑)
ご親切なアドバイスをありがとうございました!
さかいゆかり (月曜日, 29 8月 2022 20:33)
家のベランダで育てている山椒の葉にカビがついています。どうしたらいいでしょうか。ご助言お願いします。
さかいゆかり (火曜日, 30 8月 2022 16:52)
家の庭のイヌツゲの葉っぱが黒くなっています。多分、すす病だと思います。どうしたらいいでしょうか。ご助言お願いします。
管理人 (火曜日, 30 8月 2022 18:55)
さかいさん、反応が遅くなってすいません。
サンショウもイヌツゲも対処法は同様で、今の時季であれば患部を切除し(葉なら取り除く、樹皮なら剥離する)、殺菌剤を散布しかないと思います。殺菌剤は市販のスプレータイプが扱いやすいので、店頭ですす病などに対応しているか確認してください。
根本的には、通風と日照の不足が原因と思われますので、枝の数を減らすよう剪定するのが不可欠だと思います。サンショウは間もなく落葉するでしょうから、落葉期に。イヌツゲは厳冬期を避け、葉が半分程度は残るように剪定すれば、いつでも大丈夫だと思います。特にイヌツゲは内部に枯れ枝や蜘蛛の巣などが溜まって病害虫の温床になりやすいので、不要な枝は元から切除した方がよろしいかと思います。
ks (火曜日, 23 5月 2023 09:32)
イヌツゲのことがわかりました。
ありがとうございました。
ナマケモノ (土曜日, 12 8月 2023 11:11)
狭い庭に勝手に生えてきた(小鳥が媒介?)イヌツゲが2株あります。
(1) 放置していたら人の背丈を越えました。今から枝先を丸く刈込もことができますか。
(2) 一部の葉が白っぽくなっています。ハダニでしょうか。殺虫剤で防除できますか。
管理人 (月曜日, 14 8月 2023 08:19)
レスポンスが遅れました。すいません。
イヌツゲは丈夫ですので、難しく考える必要はありません。真夏と真冬を除けば、どこをどう切っても枯れることはないと思いますし、玉のような刈込にするなら、むしろこれからです。病害虫は繰り返し発生しますが、その都度、罹患部を除去し、殺菌、殺虫をするしかないと思います。