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アラカシ/あらかし/粗樫
Arakashi(Japanese Oak)
【アラカシとは】
・宮城県~石川県以西の本州、四国、九州及び沖縄に分布するブナ科の常緑樹。いわゆるドングリがなる木の代表的な樹種であり、カシの仲間では最も広い範囲に分布する。日本以外では韓国の済州島、中国及びヒマラヤ地方に自生が見られる。
・温暖な場所を好むため西日本により多い。関東地方でカシの木といえばシラカシを、関西地方ではアラカシを示すことが多く、平地から山地までごく普通に見られる。
・かつてアラカシはカイズカイブキ、ウバメガシと並んで、関西の三大生垣用樹とされ、ウバメガシに次いで数多く植栽された。現代、一般家庭で積極的に植栽されることは少ないが、庭の景色を作る脇役として活躍する。
・アラカシの「アラ」は、葉の縁にあるギザギザが粗いこと、枝の出方が粗いことなどにちなみ、材が堅いことなどから「粗い堅し」が転じて「アラカシ」となった。似たような名前のカシにアカガシ(赤樫)があるが本種とは別物。ちなみにカシにはシラカシ(白樫)やアオガシ(青樫)もある。
・葉は長さ5~13センチ、幅3~6センチの長楕円形で枝から互い違いに生じる。葉の先端は急に尖り、上半分には大きくて鋭いギザギザがある。
・表面は濃緑色で葉脈が目立ち、裏面は淡い褐色の絹毛があって粉を吹いたように白くなる。また、新葉には絹状の軟毛があるが、葉の展開に従って消失する。
・アラカシは雌雄同株で4~5月に開花する。雄花は長さ5~10センチの紐状で2~3本ずつ垂れ下がり、雌花は新しい枝の先端近くにある葉の付け根に1~3個が咲く。
・雌花の後にできるドングリは直径2cm弱で、開花した年の10~12月に熟す。ドングリの帽子(殻斗)には5~7重の横縞がありシラカシのドングリよりもやや大きい。
・樹皮は緑色を帯びた暗灰色。樹齢を重ねてもごく浅い割れ目が入る程度で、基本的には滑らか。
・樹皮の灰汁にアルミを加え、錫媒染すれば赤茶色系の染料となり、材は建材、器具材(特に柄)、車両、木炭に使うことができる。石油が主流になる前は各地にアラカシの薪炭林があり、人為的に管理して資源としていた。
【アラカシの育て方のポイント】
・比較的、安価に入手できるが、特徴がないのが特徴で、素人には葉っぱが覚えづらい樹種の一つ。植栽の適地はシラカシと同じだが、より暖地向き。
・病気や害虫に強いとされるが、温暖化が進む都市部では、うどんこ病にかかることもある。
・成長は早く、放置すれば大木になる上、下の方の枝がなくなりやすい。一般家庭で管理する場合、最低でも年に一回は頂部を刈り込んで上方への成長を抑える必要がある。
・剪定には強く、通常は画像のようにおもいっきり枝を抜いてスカスカにされる。株立ちにして、短めの枝葉を付けて仕立てたものは「棒ガシ(ボウガシ)」と呼ばれ、一定の人気がある。
【アラカシの品種】
・ヨコメガシ(シマガシ)
葉脈の間にクリーム色の雲紋が入る品種で、明るい雰囲気になる。
・ヒリュウガシ
葉の先が羽根状に裂ける品種。このほか、葉の幅が狭いホソバアラカシ、葉の幅が広いヒロハアラカシ、ナガバアラカシ ドングリがやや細長いホソミノアラカシなどがある。
・アマミアラカシ
アラカシの変種で沖縄、奄美大島及び与那国島に分布する。石灰岩質の土壌を好んで育ち、葉はアラカシよりも細長く、若い葉は縦に二つ折りになったように見える。沖縄を代表するドングリの木であり、自生地ではクガシ、カシギなどと呼ぶ。ドングリはアラカシよりも大きくて細長い。ムラサキシジミという蝶の食餌になる。
【アラカシとシラカシの見分け方】
シラカシと比べるとアラカシの葉は幅広で卵型に近く、緑色が濃い。また、シラカシは葉の縁すべてがギザギザ(鋸歯)であるのに対して、アラカシは葉の先端付近のみにギザギザがある。そしてアラカシの葉の裏には毛があるが、シラカシにはない。
アラカシの基本データ
【分類】ブナ科 コナラ属
常緑広葉 高木
【漢字】粗樫(あらかし)
【別名】アラガシ/クロカシ
オオガシ/オオバガシ
イヌガシ/ナラバガシ
【学名】Quercus glauca
【英名】Arakashi(Japanese Oak)
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】15m~20m
【用途】垣根/公園/街路樹
【値段】500円~