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アオキ/あおき/青木
Japanese Aucuba
【アオキとは】
・北海道南部から沖縄まで日本各地に広く分布するアオキ科アオキ属の常緑低木。自生は関東以西の海岸近くにある樹林に多いが、身近な雑木林にも見られる。
・最も日陰に強い植物として知られ、家の北側やビルの谷間など条件の悪い場所の植栽にも使われる。
・丈夫な性質を持ち、庭木としての使い勝手が良いため、現在では自然のものより人間に管理されているアオキの方が数が多いとか。日本以外でも東南アジアの各地に自生する。
・アオキという名の由来には、若い枝が緑色(昔でいう「青」)であるためとする説、緑色の葉を一年中つけているためとする説がある。
・古来、「アオキ」は本種に限らず常緑樹全般を意味し、地方によってはユズリハを特にアオキと呼んでいた。
・アオキの開花は3~5月。直径1センチ程度の花が円錐状に集まって枝先に咲く。アオキは雌雄異株で、雄花が咲く雄株と雌花が咲く雌株があるが、花弁は共に4枚で薄紫色。
・雄花の雌しべは退化していてほとんど見えず、雄しべは黄色い葯が目立つ。一方、雌花では雄しべが退化しており、中央部にある緑色の雌しべ(花柱)が目立つ。
・ふつう雄花の花序(花の集り)は雌花より大きく、雄花にはより多くの花が咲く。
・アオキは花の少ない初冬に実をつけるため、江戸の昔から盛んに栽培されてきた。でき始めの実は緑色だが、1月頃から色付き始めて鮮やかな赤になり、翌年の花が咲く頃まで赤い実が枝に残ることもある。実を蒔けば苗木になるが、繁殖は実生や挿し木によることが多い。
・既述のとおりアオキは雌雄異株であり、雄木には実がならないため、結実を重視する植木職人の間では雄木を「バカ」と呼ぶ。
・アオキは1783年、ツンベリーによって欧米に紹介され、艶やかな常緑の葉が人気を博したが、当初は雌株のみが移入されたため欧米では結実しなかったという。
・果実は直径2センチ程度。低木の果実としては大きめでありよく目立つが、ヒヨドリなどが好んで食べるため画像のようにたわわに実っているのは珍しい。
・赤い実がなるアオキが一般的だが、クリーム色の実がなる品種(シロミノアオキ)もあり、園芸用に流通している。シロミノアオキ単独では物足りないため、赤い実がなるアオキと一緒に植えて紅白の実を楽しむことが多い。
・葉は長楕円形で先端が尖り、半分から先の縁には粗いギザギザがある。長さ8~20センチ、幅2~10センチと大きく、別名の「オホキバ」は「大きい葉」に由来し、学名の「Aucuba」もこれに基づく。葉は枝から対になって生じる「対生」だが、枝の上部に集まりやすい。
・アオキの葉を乾燥させるとたちまち黒くなるが、これには抗菌作用があり、かつては薬用した。葉を炙って人工的に黒変させたものを火傷、しもやけ、凍傷、イボや魚の目の患部に当てれば、症状を鎮める効果があるという。また煎じたアオキの葉は下剤になるという。
・枝は上部で分岐し、若い枝では緑色だが成長するにつれてコルク状の褐色となる。古い枝は硬質であり、昔はアオキの枝を箸に使うこともあった。
・濃緑の葉が魅力的なアオキだが、原種は和風のイメージが強いためか洋風住宅にはイエローデライト、サルフレア(マルギナータ)、ダルマ、コロトニフロリアなど、葉に模様が入る「斑入り」の園芸品種が好まれる。
【アオキの育て方のポイント】
・アオキは日陰のみならず、病害虫、潮風、大気汚染にも強く、総じて丈夫な性質を持つ。しかし、他の庭木同様、風通しが悪い場合はカイガラムシやアブラムシが発生するため、できるだけ風通しの良い場所に植えたい。また、稀にアオキミタマバエが実に寄生し、実の形がいびつになることがある。
・日差しが強すぎると生育が悪く、葉の色が冴えず、焼けたように黒変するため、直射日光や西日が強く当たる場所は避けたい。乾燥にも弱いため植穴には事前に腐葉土を施すなどして保水力のある土壌にするのがよい。
・成長が早いものの枝葉が鬱蒼とすることはなく、手入れの手間はあまりかからない。しかし、放置し続ければ意外に大きく育ち、葉の色が濃いだけに圧迫感が出てくるため、定期的に枝抜きをするのが無難。
・アオキは枝の分かれ方が単純であり、植木職人でも練習用に使うほど簡単に剪定できる。不要な枝を枝分かれしている付け根で切除するのが基本だが、株が大きくなり過ぎた場合は、長い幹を根元から取り除き、背丈の低い幹を残して株を更新するという方法もある。
・植木全般にいえることだが、枝を間延びさせず、小枝を密生させた方が見栄えがいいため、施肥はほとんど必要ない。ただし枝葉が密生するかどうかは個体差による部分もあり、枝打ちが粗く樹高が高くなりやすい個体は剪定して密生しにくい。
【アオキの品種】
北海道や日本海側の多雪地帯に自生する野生の変種。雪の中に耐えて育つアオキで、高さは1m程度にしかならない。限られた日差しに対応するため、葉や実もアオキより小さく、若い枝や葉柄、葉の裏面の葉脈上に毛を生じる。
・ナンゴクアオキ(南国青木)
九州や沖縄に自生する野生種で、耐寒性が低く、成長が遅い。
・アオキは変異が多く、これを生かした園芸品種として、葉に模様が入るもの(散り斑、覆輪、中斑など)や葉の形が異なるもの(ホソバ、亀甲葉など)、クリーム色の実がなるシロミノアオキやレモン色の実がなるキミノアオキなどがある。
・中国には十数種のアオキがあり、中には黄色い花が咲く品種(シナアオキ、ビワバアオキ、ガビアオキ)がある。
アオキの基本データ
【分類】ミズキ科/アオキ属
常緑広葉/低木
【漢字】青木(あおき)
【別名】アオキバ(青木葉)/ダルマ
オホキバ(おほき葉)
【学名】Aucuba japonica
var.japonica
【英名】Japanese Aucuba
【成長】やや早い
【移植】簡単
【高さ】1m~3m
【用途】下草/垣根
【値段】1000円~
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kami (水曜日, 08 11月 2017 10:35)
教えてください、実がなるのは雌木のようですが、雄木の挿し木から雌木は出来ますか?雌木からでないと駄目ですか?
管理人 (木曜日, 23 11月 2017 17:12)
「挿し木」はクローンみたいなものですから、雌雄に変化はありません。残念ながら雌木を挿さなければ実はなりません。
河本晴夫 (火曜日, 10 4月 2018 10:32)
葉に斑点があり、緑の実が赤くなって雪が降るとひよどりが食べにくる。木の名前が判明しました。
管理人 (火曜日, 10 4月 2018 19:46)
お役に立てて光栄です。今後もよろしくお願いします。
may (木曜日, 10 1月 2019 10:17)
雌木だけ植えて花が咲きますか?
管理人 (木曜日, 10 1月 2019 19:02)
mayさん、コメントありがとうございます。花は咲きますし、相当な確率で実もなるでしょう。お住いの地域にもよりますが、アオキは都会でも田舎でもそこらじゅうにありますし、多くの昆虫が花粉をつけて雌雄の株を行き来するはずです。
may (水曜日, 06 3月 2019 09:53)
お返事ありがとうございます。近所にアオキを見かけません。それでも大丈夫ですか?
管理人 (水曜日, 06 3月 2019 13:07)
自然相手のことなので、半径何メートル以内に・・・ということは断言できません。近くに林とか公園とかがなければ雄も植えたほうがいいかもしれませんね。そんなに高価ではありませんし。
may (土曜日, 16 3月 2019 11:58)
丁寧に説明して頂き、有難うございます。まずは購入してみます。
きよ (火曜日, 16 11月 2021 10:12)
最近、次々と庭木が黒煤病?や葉が茶色になり、枯れていきます。庭土全部変えないとダメでしょうか?寂しいです
mi (土曜日, 25 3月 2023 10:11)
葉が大きき存在感があるのですが花が咲かないイメージでした。それが今年は蕾と思っていたものに、小さい花が沢山咲いていることに気が付きました。雄花みたいです。かわいいです。
幕田 英明 (土曜日, 15 4月 2023 08:37)
この世、世界 宇宙にある全て自然界にある生きる全ては人類において体の成分全てに関連するように思います。天はこの世にある生きる植物土まぁ全てあるものが私達に関わっていると思います。
m.si (水曜日, 13 12月 2023 13:00)
コロナで 外へ行けない、施設の利用者の方達に、せめて外の空気を、、、と アオキの赤い実がついた枝を持っていきました。
昔、子供の頃、学校から帰ると、この木を(葉)牛に食べさせるから取ってくるように、親から言われたと、思い出話に花が咲きました。緑の艶のある葉に、真っ赤な実、この季節、目を惹きます。ここは、九州の山あいの町。この地方では、「イボシノミ」というそうです。
jun (日曜日, 04 8月 2024 19:13)
私の親父がアオキの葉の塩漬けを食べています。自生しているアオキでも食べれるのは50本に1本くらいの割合だそうです。なので食用に適したアオキを大事にしていますが、これに関して詳しい方がいましたら教えてください