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ジャノヒゲ/じゃのひげ/蛇髭
Mondo grass/Dowarf lily-turf
【ジャノヒゲとは】
・本州北部以西、四国及び九州に自生するキジカクシ科の多年草で別名のリュウノヒゲもよく知られる。少し開けた林の木の根元や草原に自生しており、日陰に強いため庭園では下草やグランドカバーとして多用される。日本以外でも朝鮮半島や中国、ヒマラヤ付近に見られる。
・葉は落ち着いた濃緑色で、幅は2~3ミリほど。硬質で縁に細かなギザギザがあり、手で触れると多少ザラザラした感じがある。これを蛇や竜の髭に見立てて、ジャノヒゲあるいはリュウノヒゲと名付けられたとされることが多いが、本来は「尉の髭(じょうのひげ)」で、宮中の護衛官や判官である「尉(じょう)」がピンと伸ばしたヒゲに本種の細長い葉を見立てた。
・ジャノヒゲの葉は根元から束になって生じ、放任すると丸い塊のように育つが、時折、根とは別に「走出枝(横出枝)」を生じ、新たな株を作る。
・夏になると葉に埋もれるようにして小さな花を咲かせる。花色はくすんだ薄紫あるいはクリームで、よく見ると6枚の花弁を持つ綺麗な花だが、普通は花数が少なく、下向きに咲くため見付けにくい。花弁は長さ4ミリほどで全て同じ形になる。
・花の後には直径8ミリほどの丸い種子ができる。始めは緑色だが秋が深まるとサワフタギのように青く熟す。この神秘的な実にちなんで、ネコノメ、リュウノメ、竜の玉という別名もある。青い皮を剥くと弾力性のある白い種子が出てくるが、地方によってはこれを「はずみ玉」と呼び、子供の遊びに使った。なお、この「実」は剥き出しの種子であり、果実ではない。
・ジャノヒゲの根はまさにヒゲ状でところどろろに「塊根」と呼ばれる小さなイモのような塊がある。この塊根はサポニンやステロイド配糖体のオヒオポコニンという物質を含み、乾燥させたものは「麦門冬」という生薬になる。煎じたり、酒に漬け込んだりして飲めば、滋養強壮、咳止め、痰止め、解熱などに効果を発揮するという。漢名は「書帯草」という。
・ジャノヒゲには耐寒性、耐暑性があり、丈夫な性質を持つが、乾燥には弱い。
・日陰でも育つ植物として人気だが、日向では背丈が低く、葉色が薄くなる。
・手入れは簡単であり、年に一回(春先に)、根元からすべての葉を刈り払うと、その後は背丈の低い株が密生した状態になる。
【ジャノヒゲに似ている草】
・ヤブラン
同じような雰囲気を持ち、庭の下草としてジャノヒゲ同様に使われる。漢方ではこれも麦門冬と呼ぶ。
・ノシラン
西日本を中心に分布する多年草で、同じように青い実ができる。
【ジャノヒゲの品種】
本州、四国及び九州の山地に自生する品種で、葉の幅が4~6ミリ、高さが35センチほどとジャノヒゲよりも大きくなる。実は薄汚れた藍色になる。
・ナガバジャノヒゲ
ジャノヒゲの変種で、葉の幅が広くて大きいこと、地下茎を出さないことが大きく異なる。
・フイリジャノヒゲ
葉に白い模様が入る品種。明るい雰囲気を持つため、現代的な洋風住宅でも違和感なく使える。
・カブダチジャノヒゲ(株立蛇髭)
根が横に広がらず、株立ち状に育つ品種
繁殖はより遅く、背丈が大きくならない矮性品種。庭のグランドカバーなどとして多用され、ジャノヒゲよりも普及している。葉に模様が入る斑入りタマリュウ(縞玉竜)もある。
・コクリュウ(ムラサキリュウノヒゲ)
葉が黒紫色になる園芸品種。ジャノヒゲと混ぜて模様を形作るような使い方をするのが一般的。
ジャノヒゲの基本データ
【分 類】キジカクシ科/ジャノヒゲ属
多年草
【漢 字】蛇の髭(じゃのひげ)
【別 名】リュウノヒゲ(竜の髭)
ネコノメ/リュウノメ
ネコダマ(猫玉)
【学 名】Ophiopogon japonicus
【英 名】Mondo grass
Dowarf lily-turf
【開花期】6~7月
【花の色】白
【草 丈】~30cm