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マツムシソウ/まつむしそう/松虫草
Matsumushi-sou (pincushion flower)
【マツムシソウとは】
・北海道南部から九州まで日本全国の山地に自生するスカイズラ科の二年草。日本の固有種で、日当たりのよい高原の草地や開けた荒れ地に群生することが多い。一般的にはあまり知られていないが、秋の訪れを告げる代表的な秋草であり、淡い紫色の花は多くの句に詠まれる。
・松虫(=今でいう鈴虫)が鳴く晩夏から初秋にかけて開花すること、松虫が好みそうな草地に生えること、あるいは果実が風に揺れて生じる音が松虫鉦(まつむししょう)という小さな鐘の音に似ることからマツムシソウと名付けられた。
・別名はリンポウギク、シバギク、タズマなど。園芸種として販売されるのはセイヨウマツムシソウで、その流通名は学名どおりのスカビオサというが、これはラテン語で「疥癬(かいせん)」を意味する。疥癬とはヒゼンダニの寄生によって起きる皮膚病であり、かつてマツムシソウが皮膚病の治療に使われたことに由来する。
・開花は8~10月で、長く伸びた花柄の先端に直径4~5センチ大の半球形をした花が一輪ずつ咲く。花は小花の集まりで、中心部と周辺部では小花の形が異なる。中心部にある花は筒状で先端が4~5つに裂け、周辺部にある花はより大きな唇形で裂片が外側へ突き出す。花にはそれぞれ1本の雌しべと4本の雄しべがある。
・花の後にできる果実は、小さなコップ型の種子がイガグリ状の小さな球形に集まったようなもの。種子の先端には萼片から変化したトゲがあり、これを野生動物の体にひっかけることで拡散される。種子を蒔けば住宅地でも発芽するが花色は冴えない。
・マツムシソウの葉には、地際から生じる根生葉と茎から生じる茎葉があり、一年目は根生葉のみで過ごし、二年目に茎葉が生じる。両者とも羽根状に裂けるが、後者には短い柄がある。根と花を取り除いた若い株は、おひたしや和え物、油炒めなどにして食用でき、花弁もジャムにして楽しむことができる。
・地下にある太い根によって支えられた茎は直立し、全体に薄い毛がある。マツムシソウは二年草であり、春に芽生えたものが越冬し、翌年に開花、結実した後に枯れるというライフサイクルを持つ。
【マツムシソウの品種】
・タカネマツムシソウ
草丈が低く、大きくて鮮やかな花を咲かせる品種。マツムシソウよりも標高の高い本州及び四国の高山に分布する。
・エゾマツムシソウ(トウマツムシソウ)
北日本に分布する品種で切れ込んだ葉の先端が尖る。
・ソナレマツムシソウ
海辺に見られる変異種で、背丈が低くて葉が厚く、花色は白に近くなる。
マツムシソウの基本データ
【分 類】マツムシソウ科/マツムシソウ属
多年草(あるいは越年草)
【漢 字】松虫草(まつむしそう)
【別 名】リンポウギク(輪宝菊)
シバギク/タズマ
【学 名】Scabiosa japonica
【英 名】Scabiosa
【開花期】8~10月
【花の色】淡い青紫
【草 丈】~90cm